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英雄は約束を守るようです  作者: ショボン玉
第一章 二人の騎士
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第四節 王城へ⑦

7/21 誤字と句読点修正

(病気……高位の治療の奇跡(キュア・ディジーズ)でも治せない病気? いや、あれは―――)


 暗い雰囲気のままの食事会が終わった後。


 難しい表情で集会所を出たリョウは、どうも国王療養の違和感がぬぐえずにぶつぶつと考え込んでいたのだが。

 自室への角を曲がるなり、笑顔のラピスに出迎えられた。


「リョウ様! お洗濯物はございませんか?」


 それで表情を戻した彼は、親衛騎士が鼻歌交じりに洗濯をしている場所を見られたら流石にまずいと思い、ありがたく彼女の申し出を受ける事にする。


「じゃあ頼めるかな」

「はいっ!」


「あ、でも下着ぐらいは自分で」

「お任せください」


「流石に悪いよ」

「お任せください」


「……じゃあ頼むよ。けど、最近怠けててずいぶんあるぞ」

「嬉しいです! お洗濯のしがいがあります!」


 アトゥムに来る前は折を見て洗っていたのだが、訓練だなんだでずいぶんとたまっていた洗濯物袋を魔法の道具入れホールディング・バッグから取り出すなり、少女の瞳がきらりと輝いた。


「乾き次第お持ちしますね!」

「あ、ちょっと待ってくれ」


 受け取った袋をまるで宝物のように抱いたラピスは、軽やかな足取りでその場を辞そうとしていたのだが。

 数歩行ったところで呼び止められたので、総毛立てて飛び上がってしまう。


「~♪……は、はいっ!? 何でしょうか!」

「風呂ってどこかにあるのかな?」


 ギルガメシュの話に騎士団向けの浴場を作ったとあったので、敷地内のどこかにあるのだろうとリョウが問うと。


 主人を見送らずに立ち去ろうとしたことへの叱責かと不安になっていたラピスは、内心安堵しながらはきはきと答えた。

 彼女は広い城内の施設と利用可能時間をすべて暗記しているため、この程度の案内は朝飯前なのだ。 


「はい、親衛騎士の方々がご利用になる浴場は一階にございます。西の階段から左手に曲がって、左の壁沿いにいけば係のメイドが立っているはずです。清掃、沸し直し時間は毎日正午から十六時となっておりまして、通常は十六時から二十三時までがご利用時間になりますが、言っていただければ時間外でも追い焚きが可能です」


「わかった、ありがとうラピス」

「いいえリョウ様。また何かございましたら、いつでもお呼びください」


 完璧な案内を書き留めたリョウは手帳を閉じると部屋に入っていき、今度こそ扉が閉まるまで頭を下げて見送ったラピスは、完全に浮かれていた自分に戸惑ってしまう。


(ううっ、どうしちゃったんだろう私……)


 名を呼ぶと胸が高鳴る。

 名を呼ばれると胸が切なくなる。


 それなりのメイドならともかく、同じ家名の者が複数いる事態でもないのに、淑女たるマダムの子が目上の親衛騎士を直接名でお呼びする事など本来あり得ない。

 先の呼び名を考える時だってご主人様、イグザート卿の次に来るべき候補はイグザート様だったはずだ。


 彼の持つ貴族的ではない雰囲気にほだされて、つい言ってしまった一段飛ばしての提案は、相手次第では不敬と受け止められかねないほどのものである。


 それをあっさりと受け入れてくれたばかりか、呼び捨てやさん付けまで候補に挙げた主人の考えは、ラピスにとってひどく新鮮であり、未知のものであり、距離感を揺さぶられるのに十分すぎる衝撃だったのだ。


(だって、かしこまったのがお嫌いみたいだし……)


 彼女は若くして有能であったが、少々生真面目すぎるきらいがあった。

 侍女見習いの時ならご主人様を名でお呼びするなど想像もできなかったはずである。


 けれど、頼みごとをするのが苦手だという彼が歩み寄ってくれたので、自分も歩み寄らねばと思ったのだ。


「でも、あまり他の人に見られないように注意しないと」


 あくまでも主人が望む距離感は、非公式の場だけのもの。

 そう自分に言い聞かせた彼女は洗濯物が入った袋を抱きかかえると、明らかに浮かれた足取りで階段を下っていった。


 どうやら彼女は順調に、マダムが期待したとおりの成長をはじめたようである。


        ◇   ◇   ◇


「ハアッ! ヤアッ!」

(あれ、先客だ)


 いったん自室に入ったものの、豪勢な部屋に落ち着かなかったリョウはふたたび剣を持って鍛錬の間へ向かったのだが。

 気配を感じてそっと扉を開けてみたら、中でアーレニウスが剣を振り回していた。


「だりゃああああっ!!!」


 軽い雰囲気の普段と違い、真剣そのものの彼は汗だくで魔剣を突き、払っている。


(邪魔したら悪いな)


 さっそく課題に取り組んでいるのだろう。

 足を止め、腰を落とし、重い一撃を意識した素振りをしばらく見ていたリョウは、音を立てないように扉を閉めると城の中を歩き回ってみることにした。


 西棟から渡り廊下を過ぎて、城内に戻ったところを左へ。

 北側に向かう通路を進み、西階段を通りすぎてしばらく行ったところになるほどメイドが立っている。


「こんばんは」

「こんばんは。ここはお風呂かな?」

 

 一角獣の記章と、背の高く黒髪黒目の容姿を確認したメイドにも新人の話が伝わっていたのだろう。

 深々と頭を下げた彼女はここが目的他であることを告げながらも、いま男性はご利用できませんと言った。


「はい。こちらは親衛騎士専用の浴場になります。ですが現在葛葉様がご利用中のため、もうしばらくお待ちいただきたく」


 たとえば高級な宿でも浴場を男女用それぞれに持っていることは少なく、時間帯で分けていることが多いことから、無用な混乱を避けるために立ち番が居るのはよく見かける光景である。


 また、浴場を男女ごとに持っていても、酔った者が間違えて突入し刃傷沙汰になったり、着替えをねらう不届き者が侵入しないように見張る必要もあるため、結局腕の立つお風呂番が入り口を守るのがほとんどなのだ。


(武闘家かな?)


 この場合城で物盗りがでるとは考えづらいが、特例である桜花の登場で必要になったとか、有事の際に一番無防備になりがちな浴場の防衛を兼ねているのではないだろうか。


 きっと先天性白化症(アルビノ)なのだろう。

 白髪と赤い瞳が特徴的な彼女が、始めて城に来たときに見かけた腕の立ちそうなメイドだとすぐに思い出したリョウは、ブライアンに機密と言われていた事もあって突っ込むつもりはないのだが。


 感じられる気配から騎士と親衛騎士の中間ぐらいには腕が立つのではないかと考えていたら、ガラリと重い引き戸が開いて、中から出てきた桜花と鉢合わせてしまった。


「リョウ君?」

「あ、桜花さんで……すか」


「駄目よ、覗いたら。打ち首にしちゃうんだから」


 湯上がりで肌を上気させた桜花は柳腰と平均を上回る胸、身体の線を強調するような普段着とあってかなり色っぽい。


「そそ、そんな事は!」

(あれれ? 意外とウブなんだ?)


 そう言う冗談には慣れていないリョウが珍しく赤くなって否定すると、先程までどっしり構えていた少年が慌てているので、試合で負けた事を気にしていた桜花の気が少し晴れた。


「アル君なんかたまに覗こうとしてモニクさん―――ああ、そこの彼女だけど。彼女にとっちめられてるわよ。今日は非番だしもしかして来たんじゃないかしら」


「いえ、アルなら鍛錬の間にいるはずですよ。今し方訓練しているのを見て来ました」

「まあ珍しい、君に負けたのがよほど悔しかったのかな」


 あのアル君がねと少し見直した桜花はそこで、リョウも剣を持っていることに気がついてまさかねと尋ねたのだが。


「って、剣を持って鍛錬の間ってことは、まさかまた訓練に行ったの?」

「はい。でも邪魔したら悪いと思ったので」


「……呆れたわ。君、暇さえあれば剣を振るってるんじゃない?」

「いえ、そうでもないですよ。剣術ばかりじゃなくて体術とかもやります、もちろん」


 そうじゃなくて、と言いかけた桜花はなんとなく垣間見えた彼の強さの理由と、アーレニウスすらも訓練をしていると言う事実に言葉を飲み込むしかなかった。

 夕食時のアントンの冗談ではないが、このままでは彼はもちろん他の親衛騎士からも離されかねないではないか。


「じゃあ、私はこれから立ち番だから」

「はい。お仕事頑張ってください」


 内心、気合いを入れ直した桜花はそれで去っていき、置物の甲冑のように立っているモニクに会釈したリョウもそこから離れることにする。


         ◇   ◇   ◇


「何処へ行ってたんだ? 風呂へ行こう」


 一通り城を見回ってから自室に戻ると、廊下でギルガメシュが待っていた。

 どうやら誘いに来たのに部屋にいないので、待っていてくれたらしい。


「城の中を見物してたんだ。風呂なら俺はすぐ行けるけど」


 部屋に戻るでもなく魔法の道具入れホールディング・バッグから着替えを取り出したリョウと、慌てて五号室から着替えを取ってきたギルガメシュは共に一階へと向かい、二人を見つけて頭を下げてくるモニクに今度は入りに来たよと声を掛ける。


「やあ、また来たよ」

「ごゆっくりどうぞ」


「なんだ、さっきも来たのか?」

「言ったろ、城の中を見物してたって」


「なるほど、って誰かが入ってるな」

「フォートはこれから桜花さんと交代のはずだから、アントンかアルかな?」


 誰かの服が籠に突っ込まれているのを見たギルガメシュが首を傾げたので、服を脱ぎながらリョウが予想すると。

 彼らが浴室の扉を開けるなり、大量の湯気と共に調子外れの歌声があふれ出してきた。


「朝日がァ昇るゥアトゥムの空にィィ掲げよー我らのー忠誠を~~♪」


「アルだったか」

「んー? リョウかー?」


「僕も居ますよ」

「よく来たな新人ども! 我らが親衛騎士団の風呂を堪能するがいい!」


 湯船の中で団歌を歌っていたアーレニウスはまるで自分の所有物のようにわっはっはと胸を張ったのだが、ふと真顔になると身体を洗い始めた二人に言った。


「けど湯に浸かるのは、俺が桜花汁を堪能してからなー?」

桜花汁(おうかじる)?」


 何ですかそれはと頭を洗うギルガメシュが問うと、顎まで浸かったアーレニウスはばしゃばしゃとお湯を顔にかけている。


「さっきまで桜花が入ってたんだよ。他の連中はいつも遅いし、いまこの中では俺と桜花が混じり合っているわけだ!」

「桜花さんの風呂を覗いたり、残り湯を堪能したり、どんな親衛騎士だよ」


「もしかして子供並の愛情表現? アルさんは桜花さんが好きなのですか?」

「ガキどもが知ったような口をきくんじゃねーや。ほっとけ」


 先ほどのやり取りを思い出したリョウが遠慮無く言うと、手を止めたギルガメシュが真実を言い当て、良くない自覚はあるのかうるせぇやと呟いたアーレニウスはそれで静かになってしまった。


 ごしごしと身体を擦る音や、湯が流れる音だけが続いたあと。

 泡を流したギルガメシュとリョウが湯船に入ると、大量のお湯があふれて排水溝に流れていく。


「こんなにふんだんにお湯が使えるなんて贅沢だな。サクタール河が近いだけあって水が豊富なのかな」


「王城は風車と水車を使って揚水した水を、最上階から流しているそうだよ。風呂を沸かしたり厨房で使うための薪は、訓練がてら第一騎士団の若い人達が毎日割ってるんだってさ」


「じゃあ、団長が抜擢してくれなかったら、俺達も薪割り係をやってたのかもしれないのか」


 リョウとギルガメシュがそんなことを話していたら、二人を見比べたアーレニウスがしみじみと言った。


「しっかし、お前ら若いよなー? 今までは俺の二十歳が入団最年少記録だったのによー」

「そうか、僕らが更新してしまったんだな。リョウ、誕生日は?」


「もうすぐだ、来月の十一日」

「じゃあ年明けが誕生日の僕が最年少記録になるのか」


 一瞬、おまけの僕なんかが良いのだろうかと思ってしまったが、今はそうでも立派な一人前になると決意したばかりである。

 最年少の栄誉にだって、いつか必ず見合うようになってやるとギルガメシュは一人決意を強めた。


「ところで、僕らはしばらく今日みたいな生活をしていればいいのですか?」

「明日からはみっちり仕込んでやっから覚悟しとけー? 国王が療養だからって、大臣が代理をすっから仕事はとまんねーぞ」


「ワール公爵ですね。先王の時代からって言うから結構長いですよね」

「まーなー? でも、俺ぁどうもいけ好かねーのよ。改革派っつーか、腹に一物抱えてそうでよー?」


「そうだ、王妃様は?」


 ギルガメシュとアーレニウスの会話を聞いていたリョウはあとでメモしておこうと思っていたのだが。

 これまで会話に登場していない人のことを尋ねると、ああ、それはとギルガメシュが教えてくれた。


「王妃様は王女様が一歳の時に亡くなられてしまったんだ。国王様は再婚なさらないから、王位継承権はシスティーナ様ただ一人しかもっていない」


 大昔からこの世界では国主が側室を迎えた事例はほとんどない。

 血脈信仰みたいなものが根強いため、そのようなことをしなければ絶えてしまうような血筋なら、人の上に立つべきではないと考えられているからだ。


 実際にそのせいで世継ぎが生まれなかったり、お家騒動で数少ない世継ぎが消されたりして、血筋が途絶えて国王家が入れかわる例も少なくない。


 離婚もほとんど例がなく、死別による再婚は無くはないものの、トリオーン様は本当に王妃を愛していたのでそのつもりはさっぱりないそうだ、とアーレニウスが補足する。


「けど、システィーナ様は器量よしだからな、数年もすりゃ良い縁組みをしてなんとかなんだろ。リョウはともかく、ギルは姫を見たことがあるよなー?」


「それがないのです。父上はほとんど城に連れてきてくれなかったもので」

「でもよー? 復活祭とか誕生祭でバルコニーから挨拶されることもあんだろ」


「妹連れで早くから列ぶのも難しくて、見える位置を確保できたことがないのですよ」

「あー、そっかー。姫様人気あっからなー」


 アーレニウスが納得したとおり一番目の月の一日の復活祭に行われる新年の挨拶と、春に行われる王女誕生祭は、なるべく前を確保しようと詰めかけた国民で城門前に長蛇の列ができるほどで、よほどの気合いがないと王族が見える位置を確保することは不可能に等しい。


 むしろ中庭に入れたら幸運で、大勢が壕の外で城を囲みながら騒ぐのが当たり前となっている。


「めっちゃかわいいぞー。春に十七になられたから、今はお前らと同い年だなー」

「システィーナ様、ねぇ」


 思うところはあるのだが、人となりがまだよく分からないリョウが考え込んでいると、急に真っ赤になったアーレニウスは冷水を頭からかぶって飛び出して行ってしまう。


「うぉ~、のぼせたわー! 先に上がる、じゃあなー!」


 ずいぶん長湯をしたようであるし、おそらく新人相手に交流を図ってくれたのだろう。


 言葉遣いと雰囲気は軽いものの、面倒見の良い人なんだなと彼に対する認識を深めたリョウは、気になることがあって手ぬぐいで顔を拭いているギルガメシュに聞いてみた。


「ところでギル、王女様のうわさ話なんて聞いたことあるか?」

「いつも誕生祭の警備で苦労されている父上曰く、『トリオーン様は王女をそれはそれは大切になさっていて、ややもすると箱入り娘になるかもしれなかった。が、実際は大層なお転婆姫だよ、はっはっは』……だそうだ」


「ははは、なるほど」


 苦笑したリョウは、シリルの夢を早々に壊してしまうのが忍びないと思ったので、やはり彼には黙っておくことにした。


 彼女に懸想している様子のギルガメシュが、積極的に情報を集めたりと行動的になるかは未知数ではあるが お互い城に住んでいる身であるし、勇気を出してメイドに特徴を告げれば判明する程度のことなのだ。


「そろそろ上がらないか? 僕ももうのぼせそうだ」


「先に上がってくれ、俺はもう少しつかっていくから」

「わかった」


 だいぶ赤くなったギルガメシュも勢いよく立ち上がってと脱衣場へ消えていき、見送ったリョウは目を閉じると今日あったことの思い返しや訓練の課題整理と対策検討、それを踏まえた修行の組み立てなどを終えてから上がることにする。


「やっぱり広い風呂は気持ちがいいなあ」


 結局、ギルガメシュに遅れること二十分、良い気分で風呂から上がり、脱衣場を出るなりのことだ。


「リョウ様、いまお手持ちの分もお洗濯しますね!」

「あっ、はい」


 待ち構えていたのだろうか、廊下に立っていたラピスに先程まで着ていた服を徴収されてしまい、本気のメイドさんは凄いんだなと圧倒される羽目になる。


         ◇   ◇   ◇


 手ぶらのリョウが自室に戻って窓を開けると、少し火照った顔に冷たい夜風が気持ちいい。


「アトゥム、か」


 秋の夜の外気に身を任せながら町を見下ろしてみると、魔法学院の見習いが灯して歩いた魔法の灯りが大通りを浮かび上がらせていた。


 家々から漏れる灯りもまだ多く、この時間、酒場などは活気にあふれて冒険者たちが情報をやり取りしていたりするに違いない。


 今までその光の中に居たはずの自分が、城の高い位置から見下ろしている現実が何となくおかしくなり、苦笑いとも言い切れぬ笑みを浮かべてしまった。


「親父が見たらなんて言うかな」


 何となく、好きにすればよかろうと言われそうな気がしたリョウは窓を閉めると、壁際の書斎机に向かって取り出した書物を積み上げる。


 寝るまでの時間を勉強にあてるのも、予定がないときの日常なのだ。

 ラピスが仕事中毒なら彼は修行中毒と呼ばれるべきだろう。


「えっと、これは……」


 何度かお茶を淹れに来たラピスに礼を言いつつペンを走らせ、最後に簡単な日記を付けたときにはもう、日が変わる寸前になっていた。


 そろそろ寝ようと思って寝室に行ってみると、やはり豪勢なベッドとしわ一つ無いシーツが彼を出迎えたのだが。


「……お前を使うのはもう少し慣れてからな」


 今日は使う気になれず、壁に寄りかかるように床に腰を下ろしたリョウは窓から差し込む蒼い月明かりに照らされながら、緩慢な睡魔に身を任せて眠りへと落ちていった。


 ―――こうして始まった城での生活は、残念ながらそう長くは続かなかった。


 王国の安寧を蝕もうとする悪意がすぐ近くまで迫っていたのである。

次回から第五節に入ります

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