第三節 避けられなかった戦いは⑥
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騎士募集試験が行われている、ギュメレリー王城の鍛錬の間。
「二人とも準備は良いか?」
「すまねぇ、ちょっと待ってくれや」
受験者二人を見比べた試験官は右手を上げたのだが、刀の柄に手をかけて後ろを向いたままの鬼丸がそれを止めた。
(くっそ、何だこりゃぁ―――)
試合場に上がる少し前から、カタカタという鍔鳴りが止まない。
もちろん目釘が緩んでいる訳ではない、相手のその力に比例して力を増幅させるという霊刀が警告を発しているのだ。
(四本爪の龍鞘―――霊獣の大刀か!)
一方、リョウは相手が握っている刀が尋常ではない素性の物と察して集中力を高めているのだが、またそれが鍔鳴りを激しくさせていた。
―――鋭い刃を持ち、反った形状の片手剣。
いわゆる刀という武器種が初めて現れたのは古代魔法文明の初期だったと言われている。
文明で作られた魔力を持った武器群の中に魔刀があることからも、少なくともこの頃にはもう存在していたのは確かだろう。
曲剣など似たような形状の武器から派生したのではなく、新しい武器種とされているのは玉鋼と呼ばれる鍛接性に優れた鋼材で打たれているからだ。
しかし刀を使って戦う技術職、つまり侍や忍者の名が登場するのは後世の、三神国建国時になる。
同時期に片刃でも反りのない直刀が現れており、そのうちのごく少数は魔刀とは別の格付けを持っていた。
霊獣と呼ばれる存在の加護を受けたもの、力の一部や本体を宿した武器群が対象になるのだが、必ず龍の彫り込まれた鞘と対になっていて、力の強さに応じて龍の爪が三本なら宝刀、四本なら霊刀、そして五本なら神刀と呼ばれているらしい。
その中でも三振りのみ、緋緋色金と呼ばれる、今の冶金術では再現できない魔法合金で打たれた大刀のみが神刀とされるものの、すべて三神国のとある場所にかたく封じられている。
だから世に出回る中では最上位に位置する刀の一振り、それが鬼丸の持つ霊刀『火之迦具土』なのだ。
だが、今。
その霊刀が怯えるようにカタカタと鍔鳴りを繰り返している。
(おいおい。俺よりも若そうなこいつが、そんなに強いってのかよ)
上位者殺しの霊刀が推し量るのは単純な剣術の腕のみではない。
あらゆる技術、身体能力、知識、装備などの総合力で判定するため、複数の武器の技術を修得していたり、魔法も使えたり、とんでもない装備をしているとその分も上積みされる。
単純な剣術のみで言えば自分より弱い可能性もあるが、仮にそうだとしても柄すら熱くなっている霊刀の反応は尋常ではなかった。
(おもしれぇ。幸い、暴走しようがこっちには火蜥蜴の衣がある。短期決戦なら―――)
暴走―――上位すぎる相手のために起こる過剰反応―――が起きたとしても、万が一の為に纏った火蜥蜴の衣は強い耐火の力を持つ。
ならば力の差は霊刀が埋めてくれると唇をなめ回した鬼丸は、やっと振り返り了解を告げた。
「すまねぇ。もういいぜ」
「それでは、第六試合―――始めッ!」
「行くぜオラァ!!」
合図と同時に踏み込めば、両手剣を構えた相手も間合いを詰めてくる。
良い度胸だと不敵に笑った鬼丸は、抜刀の構えから最大攻撃を行うべく霊刀を抜き放―――否、抜けなかった。
(ぬ…抜けねェェェェッ!?)
戦闘拒否、敵前逃亡、戦意喪失のどれか全てかそれ以上かは分からないが、霊刀は暴走するどころか抜かれる事すら嫌がって、一寸たりとも刃を見せなかったのである。
そんなのありかと思ったときにはリョウが眼前に迫っており、直後、ゴイーンと鈍い音が試合場にこだまする。
「あっ、ご、ごめん……」
申し訳なさそうな彼は悪くない、相手の武器に不具合が生じたと知って寸前で剣を止めた。
勢い余った鬼丸が自ら突っ込んで頭突きをしたのであり、もし寸前でリョウが刃を寝かせなかったら、腹ではなく刃に頭を突っ込ませて洒落にならない光景が繰り広げられただろう。
「ちょっと待ったァァァ! ふざけんな、火之迦具土! 何でテメェ抜けねぇんだオラァ!」
鬼丸は膨れあがったたんこぶも物ともせずに霊刀を怒鳴りつけるが、返ってくるのは相変わらずの鍔鳴りだけ。
「神刀相手じゃあるめぇし、上位殺しの霊刀がビビってんじゃねぇぞ!」
傍目には一人で刀に語りかける頭の残念な人に見えるが、世の中には上位精霊が宿った精霊剣など、知性ある武器の類が存在する。
火之迦具土に宿った上位霊獣は言葉こそ話さないものの知性はあるそうで、故に相手の力を見切ったり、上位殺しの力を与えるのだが。
「なんか楽しそうだな?」
審査員席では高い依頼料を払ったポールが頭を抱えているし、反対側で見ていたギルガメシュの集中力も途切れてしまうほど奇妙な光景だったことは否めない。
「ふむ。どうやら鬼丸君の刀はリョウ君と戦うのを嫌がっているようですね」
(なるほど。リョウの剣相手ならあり得る、か)
さすがギルモアと、リョウの武器を知っているブライアンは何が起こっているかを察したようだ。
「武器の不調なら交換するか? 一般の鍛冶物で良ければ刀もあるぞ」
「いや、その必要はない。リョウ、武器を訓練用に変えるのだ」
審判が救済措置についてふれると、それでは不足だとブライアンが言った。
一般の鍛冶物ですらない、刃を潰された訓練用と言われたリョウは眉を動かしたが、ブライアンとしてはこれでも大幅に譲歩しており、木剣や木の枝でも良いとすら思っていたりする。
(いい加減ポールを黙らせたいのかもしれないな)
奴の刺客と、ある意味フォレスト家の刺客と言えなくもない自分をうまく使うことで優位に立ちたいのかもしれないと考えたリョウは試合場を降りて右手の剣をギルガメシュに預けた。
鬼丸は安く見られたもんだと舌打ちしていたが、相手が棚から訓練用持ち出してきてやっと鍔鳴りが止んだのも確かである。
(ったく、あれがどれほどのモンだってんだ。……待てよ、すげぇ剣を持った黒髪―――?)
「それでは改めて……第六試合、始めッ!」
記憶に引っかかる何かを確かめる前に再開を告げられたので、とにかくと集中を高めなおした鬼丸は出方をうかがうように開始線で待ったのだが。
(なんだァ、こりゃ……)
まるで煙か霞と向かい合っているような違和感にゴクリ、と唾を飲み込んだ。
すとんとその場に置いただけのように構えている相手に隙が無い。
いやむしろ、そこに立っているのが何なのか全く掴めない。
弱くとも強くとも何かしらが感じられるはずの気配が全く発されていないのだ。
(こいつ、侍を知ってやがるってのか)
時に鎧を着ることもあるが、多くの場合において侍が軽装を選ぶのにはいくつか理由がある。
相手の発する気を全身の肌で感じやすくするのも、素早さを保つのも、いわゆる肉斬骨断をはじめとした一撃必殺のカウンターを狙いやすくするものであり、それは切断と速度に特化した刀という武器を有効に活かす戦術の一つなのだ。
背景の一つとして長期戦になると刀の切れ味が鈍ったり破損するリスクが、直剣など叩き切る武器に比べて高いことがあげられる。
硬質化の付与やより丈夫な魔法金属の刀があっても一つの戦い方として生き残っているのは、より増した殺傷力の他に、効果時間はそれほど長くないものの、各種防御力を上げる魔法の援護、強い防御力上昇の魔法が付加された道具といった、見かけだけ軽装と言うことも可能になったからではなかろうか。
(見え見えのカウンター狙いは通用しねぇか)
先ほどは開幕の大技を潰そうと突っ込んできたのに、作戦を変えたとたんに対応されては次の手が出しづらい。
出方をうかがっているうちに膠着状態に陥ってしまい、視線だけ、あるいは気をやるだけのフェイントの応酬といった高度で見えない戦いが始まってしまう。
そんな無言のやりとりを感じ取ったのは騎士団長達も同じだったらしく、すっかり注目は鬼丸からリョウへ移ってしまっていた。
「素人―――ではないな。その、逆だ」
「何者かね? 初回受験のようだが」
また、そんな団長らのざわめきに注意を払っていたブライアンは、自分が口を開くべきタイミングを見計らっている。
この後、もっと目に見えて分かるようなやり取りがあるはずなのだ、と。
「依頼人とこれ以上手を組むな。騎士の風上にも置けないような奴だ、お前だけでなく父親の名にも傷がつくぞ」
「へっ、随分お優しい事で。てめぇが勝ったら言うとおりにしてやらぁ」
膠着中の囁きで相手が事情を察していると知った鬼丸は、頭も回る奴だと感心しつつも戦いを楽しむ為に敢えて挑発し、リョウがそれに乗った。
「約束、するか?」
「あーあー、約束しますとも」
もとより勝っても負けてもこの一戦のみなのである。
それに早いところ家に帰らなければ、黙って霊刀を持ち出した事が父親にばれてしまう。
だから、ちんたらやってられねぇんだと鬼丸は再び先手を取った。
「睨めっこは終わりだ!」
今度は抜けた火之迦具土に気を流し込み、刃から迸る炎を目の前の敵に叩き付ける。
灼熱の火炎が試合場を嘗め、試験官が慌ててそこから飛び降りる中、リョウが気を流し込んだ剣を突き出せば、剣を媒体とした防御壁が展開されて迫る炎を受け流した。
指向性のある火炎だったので避けるかと思っていた鬼丸は意外な防御方法に武者震いすると、己を鼓舞するために声を張り上げる。
「良いねぇ良いねぇ! ゾクゾク来るねぇ!」
また、今の攻防を見て騎士団長達にも緊張が走っていた。
「ほとんどため無しで護剣技だと!?」
「鬼丸君の刀も半端じゃないぞ!」
どちらも自分達には真似が出来ない、あるいは所持していないレベルの話である。
期待以上の、戦慄すら覚える程の戦いに、団長である自分らよりも上位者である事を思い知らされて言葉が続かない。
一方で受け流された火炎はというと。
「うおおおっ!」
「どりゃあああっ!」
だいぶ威力や勢いが削がれたとはいえ、皆が巻き添えを食らわないようにと慌てて避ける中で、二名ほど自分から当たりにいった馬鹿がいた。
理由はもちろんエンサイド司祭に癒して貰いたいからである。
「しまったぁぁ! 火傷を負ってしまったぞー!」
「たいへんだぁ! これでは試合に出られないー! 癒してもらわねばーー!」
超棒読みで、そそくさと司祭の下に駆けつける二人を見て、その手があったかと羨望の眼差しを向ける受験者の多いこと多いこと。
「こらっ! どうして自分から当たりに行ったのですか!」
「ありがとうございます!」
「そこはごめんなさいでしょう?」
「ありがとうございます!!」
その様子を見ていたレオナは、待てをされた犬のように正座している同じ顔の二人を癒してやりつつも、自傷は命の女神の教えに反しますと怒ったのだが。
深々と頭を下げる二人にとっては叱責もご褒美らしく、盛んに振られる尻尾を幻視しそうなほど大喜びで平伏しているから始末に負えない。
「くそっ! あいつらうまくやりやがって!」
「俺もぱたぱたさんに癒されたい!」
次は俺が、いや俺がと流れ弾を待っている受験生達を見て呆れたブライアンは、壁際の一人に治療師を呼んでくるように告げた。
「マーカス、ベア師を呼んでくれたまえ」
「ハッ、ただちに!」
「受験生諸君。自分の試合ではなく巻き添えで怪我をしたものは治療師に診てもらうことにする。また、その際霊薬が用いられた場合は後日費用を請求するからそのつもりで」
「ひっ!?」
「宮廷治療師といったら、ベア師だろう!?」
「やだ! 絶対やだ!」
霊薬の代金も払いたくないが、お姉さま口調のくねくねした中年に体中まさぐられてはかなわない。
結局、顔を青くした少年たちは激しくなる攻防に巻き込まれないよう、全力で回避に専念するはめとなった。
―――ちなみにブライアンの呼んだ治療師とは、人体に詳しく応急手当や内科的な治療を施す技術職であり、処方箋を出して薬草師や薬師に混合薬草や霊薬を作ってもらうこともある。
怪我や病気の全てを魔法で癒していると、身体の回復力や抵抗力が低下することが分かっているため、至急性のあるときは魔法、ないときは治療師による治療と棲み分けが行われている、と言うのは余談である。
霊刀を握る手がぶすぶすと燻り始め、時間が無いと判断した鬼丸が誘導性のある攻撃ならどうだと最大の攻撃を放った。
「きやがれ! 火産霊獣!」
「ウオオオォォン!!」
剣匠である父ほどでは無いが、霊刀から放たれた火炎は四つ足の獣のような形を取ると、跳ねるように小刻みに動きながら天井付近を掠め、弧を描くように残像を残してリョウへ襲いかかる。
しかし。
意志のあるかのように迫る火柱を見やった彼は、慌てず騒がず全身の力を活性化させた。
「渦旋斬!!」
ギュラララララと物騒な音を立てて収れんしていった大気は剣の周りで渦を巻き、気合いと共に突き出された刃から螺旋の衝撃波が迸る。
炎獣と衝撃波は試合場中央でぶつかり合うとお互いを飲み込み、天井を思う存分焦がしてから火の粉が舞い散るように消えていった。
「打ち消しやがった……しかも、風属性でかよ。へへ、へへへ」
土、水、火、風に代表される精霊属性には相関関係があり、火は水に弱く風に強いはずなのに。
弱属性で相殺された衝撃と乱れた呼吸に揺らされて、冷や汗かも分からない汗が顎から滴る。
対して、大量の気を放出する剣技を二度使ったリョウは静かに立っているだけだ。
剣技だけなら父親と同等ぐらいか。
そう見て取った鬼丸は手加減の程が過ぎやしないかと言った。
「あんた、遊んでるだろ? なんで攻撃しないんだ」
相殺だけを目的とした、天秤で量ったかのような威力。
先手の自分に追いつけるだけの技術。
曲がりなりにも高位の霊刀と、ただの訓練用。
戦いにすらなっていないと鬼丸が歯ぎしりをするのも無理はなかったが。
「とんでもない。そっちが広範囲な攻撃ばかりするから周りに行かないようにしてるんだ」
試合場という限られた空間でかつ、周りには一瞬で自分を護れない者が大勢が居る。
単純に戦うだけではなく、それらの事も考えていたリョウはそうじゃない、と否定した。
その会話を聞いてどんな余裕だと呆れた受験者も少なくなく、前の試合の勝者、つまり二回戦でこの二人のどちらかと当たる羽目になる少年などはすでに荷物をまとめて逃げ出した後だ。
「何者ですかね、彼は。凄いですね、凄まじいですね」
「ただ者ではないだろう。何故この騎士募集に? なにか理由があるのではないか」
当然のように団長達にも広がっていた動揺を見て取り、動くのは今、とブライアンは口を開く。
「彼は冒険者で、いま我が家に客として来ています。天涯孤独の身だそうですが、剣は父親から習ったそうです」
「フォレスト卿。そう言われるのですから何かあるのですね? 誰だと言うのですか、その父親は」
その内容にいち早く食いついたのはギルモアで、他の騎士団長達も―――ポールまでも、次の言葉を待っている。
試合場のリョウにちらりと視線を向けたブライアンはそして、その名を口にした。
「ハスラム、と言ったそうです」
六つの沈黙が満ちてしばし。
十七年ほど前まで記憶を遡らせる必要があったギルモアは一瞬だけ大陸を席巻した名前と一致すると知り、珍しく驚愕の声を上げる。
「ハスラム!? 『剣神』と呼ばれたあのハスラムですか!?」
「ああ、なるほど。どうりで聞き覚えがあるわけですな」
剣聖との戦いに勝利した者に与えられる称号に、騎士団長達は剣匠の息子どころじゃないぞと興奮した。
しかし、それを予想していたブライアンは諫めるように続ける。
「分かりません。剣神ハスラムの家名は聞いた事がありません。リョウ自身も何も言っていませんでしたが……」
知ってて言わないのか、知らないのか。
あるいは別人なのか。
それすらも分かりません、と匂わせる事も忘れない。
剣匠の息子であれ、剣神の息子であれ。
本来その強さは個人の才能と努力、環境に大きく依存する。
だが人は、自分の理解を超える強さには理屈を求めたがるものだ。
多少屁理屈でもいいから自分が納得できるなにかがなければ、その強さも化け物扱いや恐怖の対象にしかならない。
(君が正しく評価される場を作る事、それが私に出来る恩返しだ)
彼自身は不用意に実力をひけらかすような真似をしていなかったが、装備が装備なので絶対に注目の的になる。
そして今日の試合が無かったとしても、彼の異様な実力はすぐに周囲の知るところとなっただろう。
そのとき悪意をもって良くない噂をばらまく者がいたり、ひょんなことで恐怖を覚えられてしまったとしたら傷つくのは彼なのだ。
ならばいっそのこと、予め大勢の居る前で納得できる理屈を知らしめてしまえばいい。
力なき者が力ある者に求めるのは才能や努力といった理由ではなく、自分を納得させられる、自分とは無関係な理屈なのだから。
才能は嫉妬の対象になる。
努力は比較されるのを恐れる。
しかし血脈や生まれは、血を尊ぶ人々がそれなら仕方がないと折り合えるだけの理屈になる。
この大陸の人達が長い事、そうやって王族などを尊んできたからこそ、ブライアンは彼にあの両手剣を使わせるのを止めてなるべく拮抗した状態に持ち込んだのだ。
彼の力を、周りに分かりやすくするために。
一方、鬼丸も向かい合う少年が自分同様に年齢不相応の規格外、いや、自分以上の怪物である事を受け入れていた。
見ているものが違う。
目の前の相手と限界ぎりぎりの霊刀を押さえつけるのに必死な自分と違い、リョウは周りを気にする余裕すらある。
(こっちは殺すつもりでやってんのに、周りを気遣う余裕があるってか)
ならば、完全に自分に注意を向けさせたらどうなるのか。
果たして剣匠である父より強いのか。
その興味に行き着いた鬼丸はふうっと息を吐き出し、さばさばとした調子で一つ、提案する。
「良いだろう、霊刀頼りは止めだ。だからあんた、ちょっと本気を出してみちゃくれないか?」
「本気?」
「別に殺してくれと言ってる訳じゃねぇよ。うちのうるせぇ奴らの他に強い奴を見た事がねぇんで興味があるだけだ」
「分かった。ただし俺は殺し合いが嫌いだ。あくまでも試合で良いな?」
相手の実力を測り、その一歩上の力しか出してはならない。
父親の教えには外れる事になるが、周りの受験者達に被害が及ばないのならとリョウが条件を出し、面白くなってきやがったと鬼丸がそれを承諾する。
「ああ、かまわねぇ! 楽しもうじゃねぇか!」
なら試合用の全力を出す、とリョウが雰囲気を変えた瞬間、再三の警告を無視する持ち手に、霊刀の堪忍袋の緒が切れた。
◇
突然ズドンッ!!と低い爆発音が王城を揺るがしたので、騎士やメイド達は思わず顔を見合わせた。
「何ごと!?」
「襲撃か!?」
「巡回中の衛兵! 何があったか知らせよ!」
「鍛錬の間で爆発騒ぎがあったそうです!」
ばたばたと大勢が廊下を行き交い、第一騎士団の副団長から非常事態が宣言されてからしばし。
「城内で爆発だと!? 怪物か!? 妖術師や魔族の襲撃か!?」
「いえ、それが―――」
状況確認から戻ってきた一人が、騎士募集試験の最中に受験者の持っていた武器が爆発しただけで、火傷を負ったものは多数いたが死者は出ておらず、幸いその場にはエンサイド司祭やベア師も居たため順次癒されて問題ないことを報告した。
「武器が爆発?」
「なんでも、火の霊獣が宿っていたとかで。持ち手の受験者は全身大やけどで、宮廷司祭の待機部屋に運ばれたそうです」
当然試合はそこで強制終了。
至近距離で爆発されたにもかかわらず、気の防御壁で無傷だったリョウの勝利となった。




