第三節 避けられなかった戦いは②
4/8 推敲
「次はこのぐらいのじゃないとな」
「ふぁっ!?」
店に入るなり真っ直ぐ売り場を歩いたリョウが指さした剣を見て、変な声を出したのはもちろん同行のギルガメシュ。
雑多に並んだ鋼鉄の量販品ではない。
壁に掛けられたそれは『材質:流白銀、付加:硬質化、価格:共通金貨一一〇〇〇枚』と説明の札がかけられた魔法金属の剣だったのである。
「ま、魔剣じゃないかっ! いくらなんでもこんな剣は買えないだろうっ!!?」
刃に魔法原語が刻み込まれているのは古代魔法文明期に作られたものによく見られる特徴で、鍔際に埋め込まれた紅玉が魔力光を放っているのは魔力持ちの証である。
つまりこれは、剣士なら誰でも憧れるレベルの品。
魔力を持たぬ者でも魔戦技が使えるようになり、普通の鋼鉄ではすり抜けてしまう魔法の弾を弾いたり、傷の付けられない怪物にも傷を付けられる魔法の剣でもあったのだ。
ほかにもいくつか魔法の武具は置いてあるのだが片手剣はこれだけであり、目玉商品の一つなのは間違いない。
と言うより、この店を御用達にしている第一騎士団所属のほとんどがいつかはあんな魔剣をと憧れているものであり、ダミアンがポールにおねだりしている物でもあった。
「いやぁ~、お兄さん若いのにお目が高い。こいつは名剣ですよ、これさえあれば強くなれる事間違いなし!」
開店直後で暇だったのだろう、勘定台から出てきた主人は上客が来たと思って手もみをしながら満面の笑みを浮かべている。
先日は別の店員で二人とは初対面であり、名のある貴族か戦士のお使いとでも思ったのだろう。
「少し負けてくれません?」
ギルガメシュが口をパクパクさせている間にリョウは交渉を始めてしまい、うーんと唸る主人にさぁと一歩詰め寄った。
「剣の予算には上限がありまして」
「仕方ないですね。じゃあ、一万五百でどうでしょう?」
仕入れ値を思い出した主人は、それでもそれなりの利益が出る値を提示する。
もちろん、言わないだけで頭には共通金貨の文字がつくはずだ。
「共通銀貨一万五百? もう少しお願いします」
百分の一にしてもこの間ギルガメシュが買った広刃剣が山のように買えてしまう。
すっとぼけたリョウがまだ予算に収まらないと言うと、さすがにこれはないと思った主人は真顔になってしっしっと手を振った。
「お客さん、寝言は寝て言ってくださいな。冷やかしはお断りです」
「ま、そうですよね」
「当たり前だろう……」
苦笑いの彼にギルガメシュが突っ込んで、どうするんだと売り場を見回すが。
べつにリョウにこの交渉を成立させるつもりはなく、単に自分たちがこれを欲していると主人が認識すれば良いだけだったのだ。
少年たちをじろりと睨んだ主人が、万引きでもされたら適わないとあからさまに嫌な視線で監視してくるので、肩をすくめた彼は鎧売り場ではなく店舗一番奥の、柵に囲まれた棚を指さした。
「じゃあ、先に鎧を見よう」
「鎧売り場はそっちじゃないぞ」
あちらではないのか、と防具売場を見るギルガメシュの腕を引っ張り、迷うことなく柵の前に向かった彼は前に目を付けておいた鎧を確認する。
魔法の板金鎧と上腕当て(材質:流白隕合金)
付加:硬質化、耐火、耐冷、耐雷、魔防上昇
注意:かなり大きい作りになっています
×金貨3,500,000枚(応相談!)
×金貨3,000,000枚(秋の特別価格!!)
×金貨2,500,000枚(持ってけ泥棒!)
金貨2,000,000枚(最終処分価格)
最優先である大きさは申し分ない。
華美な作りではないが、全体が蒼銀に艶めかしく輝きを放ち、右胸に意匠を凝らした竜の紋章が彫り込んである。
「な、な、な、なんだこれは!? 鎧一つが、十、百、千、万……二百万!? 鎧一つが金貨二百万枚!?」
「説明書きが本当なら、そのぐらいはするな」
ついている値段が未知の世界過ぎて悲鳴を上げた子爵の嫡男に、冒険者の少年はあっさりと言った。
魔法の武具の値段は素材や付加されている魔法効果や数により、加算ではなく乗算で値上がりするものと知っているからだ。
このあいだは見ている間に呼ばれてしまったので、改めて全体の作りが今の時代の物と根本的に異なっている事を見たリョウはふむ、と顎に手を当てる。
「材質は流白隕合金か。五重付加の為とはいえ珍しいな」
「ミステリオン?」
「流白銀に少量の隕鉄鋼を混ぜることで、弾性と魔法親和性を高めた魔法合金だ。古代魔法文明が神剛鋼を目指して生み出したなかの一つらしい」
「専門用語だらけで難しい」
僕は素人なんだからもう少しかみ砕いてくれないかと困り顔のギルガメシュに、すまないと笑った彼は多少分かりやすく言い直してみた。
「もともと銀とミスリルは金属を嫌う精霊との相性が良く、魔力を通じやすい特性を持つんだが、隕鉄鋼はさらに魔法親和性が高く、複数の魔法を付加しやすい。その二つを混ぜることで五つもの防御魔法を付加しているみたいだな」
「普通のミスリルの武具に付加できるのは一つか二つだと?」
「そういうことだ。おそらく作られたのは古代魔法文明末期、対竜族を想定したものだろう。下手をすれば一点物かも知れない」
珍しく上腕当てがついているので、元は全身鎧として作られた物の一部か作ってる途中だったのだろう。
竜の頭を意匠化した刻印と、古代魔法文明は神竜と竜族に滅ぼされたという歴史から推測した彼の言葉が、素性鑑定してくれた魔法学院の導師達とまったく同じだったので、目の肥えた子供だなと驚いた店主が言った。
「若いのにずいぶん詳しいね。でもそいつは兄さんの手が届くような品じゃないよ」
大きさは背の高いお客さんに合いそうですがね、と嫌みったらしい主人に顔を向けたリョウは平然と本番の交渉に取りかかる。
否、それは交渉と言うより、相手の口に金貨を詰め込んで要求を押し通すような物だった。
「それでご相談なのですが。この鎧を買うので、さっきの魔剣をおまけにつけてくれませんか」
「は?」
「値下げの回数と値札のくたびれ具合からして、何年もここに飾られているようですね。大きさが標準じゃない上に、あまりに高価すぎて買い手がなかなかつかないからだと見受けられます」
(仕入れ値が確か百九十万。あの剣を付けたぶん利率は下がるが、赤字になるわけじゃない―――)
収集家でもない以上、仕入れた商品は売り切るのが鉄則である。
目玉品として客引きの役目も確かにあったが、値段を付けている以上売れる機会を逃してはならないのだ。
ギュメレリーでいくつもの支店を抱えるこの武具屋にとっても、金貨百九十万枚と言ったら資産の何割かに当てはまる。
いつ来るかも分からず、二百万で売れる保証もない次の機会を待つより、最低限の利益が出るうちにさっさと売り払ってその金を製作や別の仕入れに運用したほうがよほど利益になるだろう。
「兄さん、本気かい?」
「もちろんです」
そこまで読んでの交渉か、と商売人の顔になった主人が目の前の少年をよくよく観察してみれば、背中の両手剣はこの鎧以上の超級品ではないか。
「ただ、原石払いになりますが良いですかね? 白金貨がいいなら両替しないとならないので後日改めてになりますが」
そう言いつつも、リョウの視線はカウンター奧にかけられている宝石鑑定士免状に向けられていた。
鑑定士はべつに公式な資格でもないが、大手商会が発行している免状はそれなりに信頼度が高い。
どちらかと言えば宝石払い可という目印のような物であり、このほかに手形取り扱いや、白金貨取り扱いといった免状がかかっている場合もある。
ただし研磨前の原石となると、本来は宝石職人が見てどうするかを検討しないと値段が付けづらいものだった。
同じ大きさの金剛石の原石でも、色むらや内包物によりその価値は千差万別、さらにはどう研磨して色を強調するかや、不純物を隠したりするかでできあがりが異なるからだ。
その為、原石払いは研磨済みの宝石払いよりも買い叩かれる傾向が強いのだが、この少年はそれを把握して言っているのだろうか。
「原石払いでも、今買うのであればあの魔剣はおまけしましょう。とりあえずは見せていただけますか」
「そうですね。……っと。二百分を一個か、百分を二個か、五十分を四個か、二十分を十個のどれがいいですか? あるいは、合計二百でも構いませんが」
「!?」
ちょっとまってくれ、と言う言葉を危うく主人は飲み込んでいた。
金貨二百万枚の価値がある原石をこの少年は持っていると言うのか。
そのぐらいの価値となると、大きな功績を認められて国主から直々に下賜されるとか、上級貴族が家宝にするレベルである。
ただ、それほどまでに価値が高くとも、この鎧のように死蔵になることはまず考えられない。
高価な宝石や貴金属はどこの店に入荷したとかどこの商会が握っているいう噂が貴族達の耳に入るなり、買い取りたいとの問い合わせがあるほどの人気商品なのだ。
―――金は貴族にとっての剣であり盾である。
金があるということはつまり、人を雇える、物を動かせると言うことに他ならず、貴族社会において資産とは、爵位と同じぐらい重要視されるものなのだ。
貴族の集まりなどで見せびらかせやすく、いざと言う時には褒賞やお礼として使う事もできる貴金属は小回りがきくため、力の象徴としての立ち位置を確固たるものにしているのも確かであり。
また、星辰玉のような明確な力を持つ魔法宝石でないにもかかわらず、やれ何色の金剛石は幸運の象徴だとか、どの宝石は成功を導くとか、それっぽい謂われが語られたりするのは、ほとんどが自分の持つ宝石の価値を高めたい貴族がうわさ話を広めたり、国王が下賜するときにそれっぽく語ったものが伝わっているだけだろう。
ただし、死を導く石榴石など、事件を起こすほどの力を持った石も存在するため、すべてが眉唾物なわけでもなかったりする、と言うのは余談である。
一つの価値が高ければ高いほど値段の上下幅が大きく、上手に売れるかどうかも重要になってくるだろう。
うまく立ち回ることができれば魔剣の分を取り戻してお釣りが来る、と考えた主人は足下を見られないよう、緊張を押し隠して―――はたから見ればばればれだが―――希望を告げる。
「に……ひゃくを一つ、でお願いします」
「分かりました。じゃあこれで」
物によっては金のある大貴族に直接持っていくか、別の国の競売にかける必要もある、と喉がからからの主人は一番高価なのをと言い、リョウは革袋から親指の先ほどの原石を取り出した。
カウンターにころりと置かれたそれを見た瞬間、あまりの動揺に鼻水が少し出てしまった主人の大声が店内に響き渡る。
「イ、イエローダイヤ!?」
「リョウ、宝石なんて持ってたんだな、あははははは」
それは色つき金剛石のなかでも一番数が少なく、貴族達が喜ぶ『成功者』を意味する石であり、そのぐらいは知っていたギルガメシュの思考が完全に飛んだのもこの瞬間である。
「正確には黄色と赤の二色ですね。無欠点なのでうまく削れば二百万はくだらないと思いますが」
「フ、フローレス!? この大きさで!?」
取引で騙されないためには当然と言えば当然なのだが詳しい様子の少年に、主人は今さらながらに彼自身も宝石鑑定の能力を有しているのだと気がつかされた。
『成功者の黄』と『勝利の赤』の二色でしかも、内包物のない完全結晶となると王冠の主石とされてもおかしくない。
慌てて引き出しから拡大鏡と燭台を取り出し、ろうそくに明かりを灯した主人は原石をくまなく調べるが。
十分ほども見つめたが塵ほどの不純物も見つけられず、血走った目をぐりぐりと指で押しながらがっくりと椅子に座り込んでしまう。
(……原石払いを言い出すだけの事はある。確かに無欠点なら、職人の腕が問われる部分が減るからな)
あとは大きく美しく削ればいいだけの無欠点の原石は、原石払いのなかでも値が付けやすいのは確かである。
ではこの原石は正しく金貨二百万枚の価値かというと、『二百万で売れば二百万』であるとしか言えなかった。
出所や産地を根掘り葉掘り聞かれる厄介ごとを抱え込むとは言え、売買が十分に成り立つ品なのは確信できたが、そんなことよりも主人を驚愕させたのは彼がこの原石を取り出した革袋だった。
一瞬、しかもちらっとだが、同じような大きさの原石がたくさん入っているのが見えてしまったのである。
(領地に良質な宝石鉱山を持つ貴族の子供、か。その上商売上手ときたもんだ)
そんな超絶金満貴族がこの国に居るなんて話は聞いたことがない。
おそらくは貴金属や魔法鉱石が掘れる鉱脈の多い、マース公国やマイヌ公国あたりの者ではなかろうか。
とんでもない金のにおいを感じた主人は、この情報の取り扱いにも注意しなければな、と一通り考えをまとめたところでやっと椅子から立ち上がった。
「いやぁ、最初からただ者じゃないと思っていたんですよ! さささ、その剣も鎧も、どうぞお持ち帰りくださいませっ!」
「あ、装備してみますので試着室を借りますね」
「………リョウー? リョウさーん? もしもーし」
完全に置いてけぼりのギルガメシュに頷いただけで、柵から取り出された鎧を受け取った彼は説明もしないまま試着室へ引っ込んでしまう。
試着室の中で。
最後の留め金を留めた後、身体を動かして具合を確かめたリョウは全く身体の動きを阻害しない柔軟さに驚いていた。
「良い掘り出しものだったな。運が良かった」
現在作られるような革の上に金属を貼り付けた鎧や、鎖帷子との複合式、またはリベット結合による作りでもない。
それだけでも高性能な防具になる、遺失技術の産物である強化炭素繊維と魔法的に強化された布等を組み合わせて作った下地との複合式。
「気持ち大きいけど、厚手の綿入れを買えば問題ないか。下地は遺失炭素繊維と魔布、かな」
もしも大きささえ標準的ならば、倍の値段でも超一流の冒険者が即決買いするような品であろうこれは、単純な防御力で言えば上位竜の鱗で作られた鱗片鎧にも引けを取らないに違いない。
しかし、身体の動きを全く阻害しないと言う優位性においては、他のどの金属鎧と比較しても負けはしないだろう。
複雑な身振り手振りで印を組む必要がある魔法使いでも、問題なく装備できる程の柔軟性が確保されているのは、さすが魔法使いたちの文明で作られただけのことはある。
「ギル、帰るぞー?」
「…………」
一通り確認して試着室から出てみれば、放置されていたギルガメシュは完全に頭が止まってしまっているらしく、魔剣を受け取った彼が引っ張って帰る羽目になった。
「では失礼します」
「毎度ありがとうございました! 今後ともごひいきに!」
◇ ◇ ◇
フォレスト家へ戻る途中。
「き、君は、一体……何者なんだっ!?」
街路のど真ん中で再起動したギルガメシュがいきなり叫び声を上げたので、ざわっとどよめいた人々が何事かと彼らを振り返った。
「町中で突然なんだ?」
「だって、そうだろう!?」
顔を紅潮させ、明らかに取り乱している様子の彼が先程の説明を求めているのは分かったが、リョウは眉を動かして微笑んだだけだ。
「俺には色々秘密が多いのさ。それよりこの剣、ただで貰えたからギルにやるよ」
「すまない、君がなにを言ってるのかわからない」
一瞬で顔色が赤から青になったギルガメシュは共通語でもう一度、と聞き直すが。
「俺が鎧を買ったら魔剣がおまけについてきた。俺は要らないからギルが使うといい」
「こんな高価な物、受け取れるわけがないだろう?」
「高価じゃないぞ? おまけだからタダだ」
どうやら聞き間違いでは無かったらしい。
大きな反応をするのも疲れたギルガメシュは淡々と言うが、リョウはリョウでしれっと繰り返すだけだ。
「じゃあ君が使えば良いじゃないか」
「俺にはこの剣があるから。それに、壊してしまった剣を弁償すると言っただろう」
確かに彼の両手剣はこの魔剣よりも数段上であり、格下の物を使う必要はないだろう。
そして壊してしまった剣を、それなりの値段の物で弁償するとも言っていた。
だからといって、そう言う問題ではないと思うのである。
(……ああ、なるほどな)
不思議な両手剣と凄い鎧を装備している彼を見て、ギルガメシュも今更ながらに武具屋の主人が急に態度を変えた理由が分かった。
惜しみなくミスリルが使われた鞘の表裏には翼を広げた神竜と咆哮する龍神が彫り込まれており、鎧の竜の紋章と一体感を醸し出している。
そして、冷静に見つめればそんな超級品にも見劣りしない存在感が彼にはあると分かるのだ。
「そう言うわけだ、遠慮せずに使ってくれ」
「しかし…いや…でも……」
「いいからいいから」
「そこまで、言うなら……」
あまりに言うので、本当に受け取っても良いものか五回考えた挙げ句、おまけだった事も手伝って厚意に甘える事にした。
もちろん帰ってすぐに父親に報告し、最終的な判断を仰ぐ前提である。
喉から手が出る程欲しいと思っていた魔剣がいきなり転がり込んできては、受け取った手が少し震えてしまったのも仕方がない事だろう。
◇ ◇ ◇
家に帰ったギルガメシュは、出発直前だった父の書斎に飛び込むなり店でのことをまくし立てた。
息子のあまりの勢いに目を丸くしていたブライアンは、突拍子もない話と渡された魔剣をしげしげと眺めて呟く。
「……………。彼はどこかの王侯貴族なのか?」
「分かりません。父上、冒険者とはそれほど儲かるものなのですか?」
「他国の王族でも救って莫大な謝礼をもらったか、あるいはどこかの遺跡で金銀財宝でも発見したか―――」
宝石鉱山を持つ貴族との関係もありえるか、と呟いた彼の推測はどれもあり得ない事ではない。
酒場の詩人などが歌う物語などでも分かるとおり、この世界にはそう言った機会がまだまだ残されているのだ。
だが今のブライアンは、リョウが途方もないお金持ちだと言う事もだが、息子にこの魔剣を勧めた事が気になった。
「彼が受け取れと言ったのか」
「はい」
「……もう一度礼を言って、ありがたく使わせてもらいなさい。私からも礼を言っておこう」
普段なら返しなさいと言っただろう。
ギルガメシュもある程度それを期待して父に報告した。
しかし、リョウの人となりと格段に成長した息子の事を考えて、ブライアンはそう言う判断を下したのである。
「は、はいっ!」
彼がこれを使えと渡したのなら、我が子はやがてこの魔剣にすら釣り合う剣士に成長するに違いない。
父を超える事を約束してくれたのだ、その姿を見られるのならば、この恩は自分が返してしかるべきだろうから。
浮かれた様子の息子が部屋を出て行った後。
リョウが途方もなく先を見通している事を知ったブライアンは腕を組む。
(そうか。そこまで見通せるのか)
もしかしたら見通しているのではなく、可能性を信じているだけかも知れない。
それでも自分の部下で役不足なのは明らかだ。
その確信を得た彼は、今日の募集試験でどうするかを決めた。




