はじまりのうた
7/23 誤字修正
※当作品はオリジナル小説をAAスレ向けに改編して「やらない夫板II」で「やらない夫は約束を守るようです」として投稿したものをもとに戻して加筆修正したものです。
(文字ををAA化してまた文字に戻るという妙な経緯を辿っています)
向こうは向こう、こちらはこちらでお楽しみいただければと思います。
そことは異なる時。
そことは異なる場所に、人が、大地の支配者ではない世界がありました。
ここでは人々は様々な脅威に曝されています。
様々な脅威。
それはときに厳しい災害であったり、人以外の種族との摩擦であったり、人同士の諍いであったりします。
比較的友好か中立を保つ亜人間のほかは敵対的とも言える怪物、妖魔、そして闇より生まれし者どもばかりのこの大地で、人は各種の『魔法』と呼ばれる超自然的な力や、才能ある者が鍛錬の末に習得できる『戦技』と呼ばれる技能を主な対抗手段としていました。
その様な力を身につけた者の中には厄介ごとを引き受けて報酬を受け取ることを生業する者がおりました。
彼らは冒険者と呼ばれ、町に根付いたり仕事を求めて各地を流れていたりします。
これからお聞かせするのは、そんな一人の冒険者の物語。
名は―――いえ、それはおいおい語られて行くでしょう。
ですが、この世界の主人公は決してその冒険者一人ではありません。
彼と出逢った者、共に歩んだ者も、それぞれの物語の主人公なのです。
ただ、私は彼を追い続けた者として彼のことを謳いたいと思います。
他の主人公たちの物語は別の謳い手がお伝えすることでしょう。
………私?
私はまだ、名乗るほどの者ではありません。
長い長い、彼の物語を最後まで謳うことができたなら、そのとき名乗りたいと思います。
また、始める前にひとつ誓います。
私はただ事実のみをなぞらえると。
決して誇張でも冗談でもない、本当にあったことだけをお伝えする、と。
歪めた表現も大げさな言葉もいりません。
それは彼らに失礼なことですし―――なにより、その必要がないのです。
―――さて、準備はよろしいでしょうか。
始めるとしましょう。
永遠に伝えられるべき、「彼」の物語を―――