発見
隊長蛙に案内され、雨蛙とヌシ様がその場に着いたのはもう昼過ぎだった。友人蛙の捜索に当たっていたスイレン会の蛙たちも、もう全員そこに集まっていた。皆一様に暗い顔をしていた。
奥には仮のテントが設けられており、隊長蛙によると友人蛙はその中に居るとのことだった。雨蛙はヌシ様を置いて駆け出すと、テントの中に飛び込んだ。
「ああ……!!」
そしてテント内の光景を見たとたん、雨蛙は悲痛な声をあげてその場にへたり込んだ。
友人蛙は仮設のベッドの上にうつ伏せで寝かされていた。その身体は赤くただれるほど、酷い火傷を負っていた。
「我々が発見したときにはもう……」
雨蛙の頭にはヌシ様の家で隊長蛙が告げた言葉がぐるぐると繰り返されていた。
ヌシ様もテントの中に入ってきた。雨蛙は友人蛙の寝かされているベッドの前で真っ青な顔をしながらへたり込んでいる。
ヌシ様は友人蛙の火傷の様子をみると、何かに気が付いたのか、ハッと息を呑んだ。そして、ショックのあまり動かなくなってしまった雨蛙に語るように話し出した。
「この酷い火傷の様子……ニンゲンの手によるものじゃな。奴らの手はわしらには熱すぎるからの……」
それを聞いた雨蛙は、ふらふらと立ち上がると友人蛙の亡骸にすがりついて泣き出した。
「そんな、君、嘘だ、嘘だ……。君も、ニンゲンも……こんな、こんなことって嘘に決まってる」
雨蛙はぼろぼろと大粒の涙を流しながら友人蛙の身体を揺さぶったり、頬を軽く叩いてみたり、話しかけたりを繰り返した。
「雨蛙よ。前にも言ったじゃろう。ニンゲンと我々はこういうことだ。こういうことなのじゃよ……」
そう言ってテントを立ち去るヌシ様は、いつもよりしぼんで見えた。
ここ数日で一番暑い日の午後のこと。
「あら、さなちゃん。何をしているの?」
「かえるさんをみつけたの! ほら!」
「かわいいわね。でも蛙さんには優しくね」
「うん! いっぱいなでなでしてあげたの」
「いい子ね、さなちゃん。さぁおいで。蛙さんにバイバイしてそろそろおうちに帰りましょうね」
「うん、ママ! かえるさん、ばいばい!」
終わり