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カエルの品評会  作者: 水玉カエル
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失踪

 朝日のまぶしさに目が覚めた雨蛙は、ベッドから起き上がった。昨晩友人蛙と酒宴の場で「次回の品評会は合作を作ろう」と約束したことを思い出した。お互いにかなり酔っていたため、その約束を友人蛙が覚えているのか心配になった雨蛙は、身支度を済ませると約束の確認のために友人蛙の家に向かった。



 今日はここ数日で一番暑い日のようで、歩き始めたばかりなのにもう汗がふき出してきた。早く着かないと誰かみたいに干からびかけるぞと思い、急ぎ足で友人蛙の元へ向かった。

 十五分ほど歩くと友人蛙の家が見えた。雨蛙は窓のカーテンが開いているのに気付き、友人蛙はもう起きているのだろうなと思って小走りでドアへ向かった。

「うわ、なんだ、君、もう起きたのかい。君が早起きだなんてずいぶん珍しいねえ」雨蛙は友人蛙にそう言われることを想像して、少しにやけながらドアを三回ノックした。



 しかし、部屋からは一切物音がしない。雨蛙は「二度寝でもしたかな?」と思い、強めにもう一度ドアを三回ノックした。

「おーい、起きているかい?」

 呼びかけてみても返事がない。不思議に思った雨蛙は、ドアノブを回してみた。鍵はかかっていないらしく、ギイという音を鳴らしてドアは開いた。

「おーい入るぞ。鍵を開けっ放しにするのは危ないよ」と言って中に入るが、家の中には誰も居なかった。

 近くに散歩にでも行っているんだろうな、と思った雨蛙は本棚の雑誌を拝借して椅子に座った。



 昨晩の疲れが少し残っていた雨蛙は椅子に座りながらそのうちにうとうとし始めた。

「こりゃあだめだな……ソファーを借りよう……」

 ついに睡魔に負けた雨蛙はソファーにべちゃりと倒れるとそのまま眠ってしまった。



 カア、カアというカラスの声を聞いて雨蛙は飛び起きた。しまった! 眠りすぎてしまった! そう思い焦りながらあたりを見回すが、友人蛙の姿は無い。しかし、窓の外はもう夕暮れに差し掛かっていた。

「いくらなんでも遅すぎじゃないか?」

 そう独り言を呟いて窓の外を見回した。



 何かあったのだろうか、それとも昨日の品評会のことを僕が思っているより気にしているのだろうか、雨蛙は眉間に皺を寄せながら考えるも、答えは出なかった。

 友人蛙が心配でたまらなくなった雨蛙は、一度家に帰り、鞄いっぱいに食料を持って戻った。そしてドアを見つめながらそれを食べ、友人蛙の帰りを待った。





 結局その日一日、友人蛙は帰ってこなかった。





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