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最後のワガママ『続、君に会いたい』(3) 全3話
変わらない彼女がいた。
「亮介……」
最初にかける言葉、言葉。
何もでてこない。
「マ……な……」立っていられない。その場で屈み込み泣いた。
彼女は屈む俺を包み込んだ。
「つらかったね亮介」
人の体温とはこれ程安らぎを与えてくれるのか。触れている頬が暖かい。『つらかったね』は俺がかけるべき言葉だ。男はいつも女に励まされる。弱いから。
「俺。俺、ずっと逃げてたぁ、ごめんね、敵討ちしてさ、それで、後は、どうでも良くて……ホントはずっと会いたかった……ただ。ただ会いたかった」
「……私も」
「ごめんね、すぐ来たかったけど、君に会いたかったけど。こんなに時間がかかったぁ……」
「……でも来てくれた」
お互いの涙が触れる。
「あ」「あ」「……」
「亮介言って」
「ありがとう本当に」
「?」
「マナ、愛していた。君がいなければここまで生きていなかった」
「……」
「さよなら」
「何で。せっかく会えたのに」
俺は立ち上がり階段を降りる。
「亮介!」
俺は背を向けたまま、右手を上げた。負けっ放しの俺の耳に、勝利者コールが聞こえた気がした。
【終わり】