第37話 次のお仕事は……
ミリアとの訓練のあと、驚いたセーラとフェラード氏が部屋に入ってきたのだが、特にお咎めはなかった。
どうやら彼らとしては屋敷の一つや二つ吹っ飛んでも修復は可能であるし、そもそも野宿する羽目になったとしてもあまり気にすることではないらしく、問題がないらしい。
ともかく怪我がなくてよかったと言われた。
ただ部屋の掃除はやれと言われてしまったので、ちょっとした罰ゲーム気分ではある。まぁ、自分でこんなにしたのだからそれは仕方のないことなのだけれども。
そんなわけでミリアと部屋の後片付けをしていると、ミリアが言った。
「まぁ……ハプニングはあったけれども、魔法の使い方はわかったのよ?」
「そうですね。とりあえず読めば発動してしまうんですね」
「だから一文を全部読むと危ないのよ……一文節だけ読むとか、そういう調整をするといいのよ。もっと高度になると込める魔力量の調整なんかもするといいけど、これはちょっと難しいのよ。人間はできないから」
「じゃあ、これからはそのあたりの特訓ですか?」
話の流れからきっとそうなるだろうと予測した私はミリアにそう尋ねた。
しかし帰ってきた台詞は意外なものだった。
「特訓はもう終わりなのよ。あとは実戦で慣れてもらうのよ」
ミリアの言い放った台詞に私は首を傾げた。
*
「つまりまたお仕事をしてもらうということだよ」
執務室の机に座ったフェラードは立っている私にそう言った。
私の横にはミリアがおり、その後ろにはセーラが控えている。
「お仕事ですか?」
「うん、そう。と言ってもガルタニアはもう落ち着いたから、今度は別の国だけどね」
「そう言われると不安ですが……」
「緊張しといた方がいいと思うよ。ガルタニアは魔国周辺国で最もましな人間国家だ。これからキリハに行ってもらう国々はそれとは比べものにならないくらい癖がある」
つまり他の国はどうしようもない国々と言うことだろうか。
ガルタニアはゲルハルト侯爵やピオニーロの科学的思考と言うか、魔族に近い合理思考を身に着けているのでそれほど違和感はなくすんなりと話は進んだ。
確かに不幸な行き違いはあったが、それもフェラード氏がいたから問題なく避けられたし、総じていい話し相手だったと言える。
けれど、他の国となるとどうなるかはわからない。
だからこそ私に今の段階で魔法を身につけさせて最低限自衛は出来るようにしたのかもしれない。
そう考えると本当に不安になってくる。
「あんまり安心できないことはわかりました……でも、そもそも何のために他の国に行くのですか? ガルタニアは精霊馬車の改造・効率化がメインでしたが……」
そう。他の国に行く理由が浮かばない。
まぁ、新たに私が外交担当になったから顔合わせをしておくということも考えられないではないが、そういう道ならし的思考が魔族にあるとは考えにくい。
彼らがどこかに行く、となればそれなりの目的があってのことであり、ただ顔を合わせておしまい、という話はおそらくありえないのである。
だから疑問だった。
フェラード氏はそんな私の疑問を正確に読み取り答える。
「それは、この大陸――フランドナル大陸全土でしっかりとした協力体制を構築するためだよ」
「協力体制?」
首を傾げる私に、フェラード氏はいまこの大陸で何が起こっているのか、説明を始めた。




