第1話 悠久
正直勢いで書くつもりなので矛盾点がいくつも出てくるかも・・・
今、自分は本当に幸せなのだろうか。
当たり前のように過ぎ去る日々、何もしなくても約束された平和、当然のようにあり続ける日常。
なんてことのないこの刹那が幸せであると、理解していても実感できない。
これは羽竜悠久が持つどうしようもない思いだ。
今まで理解してもらったこともないし、してもらおうとも思っていない。
個々人の思いは各々がしっかりと持っていればいいのだから。
「今日も昼間っから黄昏てるのね。それがかっこいいとかって思ってるの、羽竜くん?」
思いにふけっていたらふと声をかけられた。
振り返るとそこには一年くらい前から話すようになった先輩が屋上のベンチに座っていた。
氷室玲愛。この諏訪原市にある教会住まいの先輩だ。
ドイツ人とのクォーターで、日本人離れしたその顔はかなりの美人だ。
しかし、いつも無表情で少なくとも俺は一度も笑った顔を見たことがない。
そういうクールっぽいところも相まってこの月乃澤学園の裏ミスに認定されている。
しかし、裏ってなんだろうな?
「こんにちは玲愛先輩。別にカッコつけてたわけじゃないんで変なふうに吹聴しないでくださいよ」
一応挨拶すると同時に先ほどの返答もしておく。
「もう昼休みも終わりかけですけど、今からメシですか?」
「うん、なんか昼休みの前に進路がどうとかって話があってね。面倒だからほとんど聞いてなかったけど」
「それって大丈夫なんですか?」
「別にいいんじゃないかな、私の家教会だし」
「そうですか・・・」
それは全く関係なんじゃないかと思ったけどまぁいいか。
こんなふうに先輩と話したりしているのは楽しい。
こんなひと時が永遠に続けばいいと思うときもある。
しかし、楽しい楽しくないにかかわらず、物事には必ず終わりがやってくる。
一瞬の幸せのあとに重い虚無感が襲ってくるのが普通だ。
これを解消する方法はないことはないだろう。
出来る出来ないは別として、思いつくだけでも二つある。
それは時を止めるか終わらせるか。
時を止めることさえできれば今の幸せを永遠に味わうことができるだろう。
壊されることがなく、揺らぐことすらない。まさに至高の世界と言えるだろう。
また、至高の幸せの状態で全てを終わらせることができれば、真に幸せの絶頂であり続けることができるのではないのだろうか。
しかし、どちらにも欠点があるとすれば、その場で止まってしまうということだろう。
先に流ない永遠と先の無い終わり。まだ終わっていない停止の方が若干マシというところか。
(どっちにしろできなければ意味ないけどな)
出来もしないことを考えても無意味だ。
ならばもっと建設的な考えを持てばいいかもしれないが、性分だから無理だろう。
「はい、これ食べる?」
そんなことを考えていると、玲愛先輩がサンドウィッチを差し出してきた。
「なんでですか?」
「なんか難しい顔してたら、お腹すいてるのかなって思って」
どうやら先輩の中では空腹者はみんなしかめっ面をするらしい。
しかし、せっかくの好意なのでいただいておくとしよう。
実際昼飯は食べたが、少し足りない状態だったし。
「ちなみに中身はなんですか?」
「さぁ?適当に出したから、多分ツナホイップか納豆フルーツだと思うよ」
「・・・(ゲテモノつかまされたか・・・)」
月学の購買部はなんでこうも挑戦的なんだ?
いただいたものなのでしょうがないから食べることにした。
中身は普通にハムとレタスのものだった。冗談だったのか、たまたままともなのが混ざっていたのかはわからない。
「じゃあそろそろ教室に戻りますね。サンドウィッチ御馳走様でした」
「どういたしまして。食べたばかりだからって寝ないようにね」
「寝ませんよ。先輩こそ授業は聞いてくださいよ」
そんな冗談交じりの挨拶を交わして俺は教室に戻った。
結局この時も答えは見つからなかった。この平和な世界で幸福を実感できる時が本当に来るのだろうか。
幸福が永遠に続けば、この幸福のうちに終わることができれば。
その思いの行き着く先はどうあっても今の日常の終焉だろう。
この時の俺には、そこまで考えることができなかった。
平和な世の中だから幸せを感じられない。
つまり平和でない、闘争が支配する世界でなら感じられるかもしれない。
そう思っていても、簡単にはそんなことは起こらない。
しかしこの時、この刹那の終わりは確実に近づいてきていた。
オリジナル主人公です。学年は蓮や香純、司狼と同じ。ついでにクラスも同じにしようかな。一応オリキャラは後3人出す予定です。
ちゃんと書けるかやっぱり心配だなぁ。