はじまりは
綺麗な青空と白い雲。
私たちを囲む高い建物。
何一つ変わらない。
そこは、「日常」と何も変わることはない。
でも―――そこは、すべてが「非日常」だった。
* * *
「じゃーまた明日!」
「うん!ばいばーい!」
|大城桃李≪おおしろとうり≫は自宅からほど近い駅で友人・|三笠愛理≪みかさえり≫に手を振った。
ピンクのシャツに紺のベストと赤いリボン。赤地のチェック柄のスカートという制服。
桃李は黒のニーハイソックスを纏い、革製のスクールバックを持っている。
顔はというと、笑顔の似合う可愛い系の顔立ちで、小柄ではあるもののスタイルも良い。
ブラウンの長い髪は、毛先がクセでふんわりとしていて、桃李はその髪を二つ結びにしている。
楽しそうな桃李は、そのまま家へと急ぐ。
閑静な住宅街の一角に、洋風のデザインの綺麗な家が立ち並んでいる。
その中で、赤いレンガの壁が、大城家の目印だった。
「たっだいまー!」
合鍵を使って中に入った桃李は、元気な声でそう叫んだ。
「…」
薄暗く、ひんやりとした部屋。
誰もいないということが、その雰囲気からひしひしと伝わった。
「…やっぱり、ね。」
桃李の両親は、共に某貿易会社で働いており、1年のほとんどを海外で過ごしている。
そのせいで、桃李はほぼ1人暮らしの状態だった。
「今日、誕生日なのになぁ。」






