・Second・
―――――あたしが死ぬ?
このあたしが?
2年に一回くらいしか風邪をひかないこのあたしが?
「・・・・・嘘」
「嘘なワケないだろう」
ソイツは偉そうに言った。
「だって・・・。なんであたしが死ぬだなんて分かるのよ!?根拠は!?」
あたしがそう叫ぶと、ソイツは鼻で笑った。
やはり何故か一つ一つの動作が癇に障る。
「そう言えばまだ言ってなかったっけ」
ソイツはそれを言うと、右手を宙に掲げた。
「?」
あたしはその手に視線を合わす。
するとそこから黒い渦が生まれた。
「ぇ・・・っ」
あたしが眼を見開いている間にも、その渦は大きさを増す。
そしてその渦は、ソイツを取り巻き始めた。
その渦は真っ黒な衣装となる。
右手に残った渦の塊は次第に長細くなっていく。
それは大鎌となり、銀の光を纏う。
「・・・っ・・・」
あたしは、息を飲む事しか出来なかった。
でも一つ理解出来た。
人間じゃない。
ただ、それだけを。
「・・・っ、ぁ。・・・ぁ、あ」
もう、呻き声しか出なかった。
口を手で押さえ、目をいっぱいに見開いて、足が震えている。
きっとその姿は情けないだろう。
またソイツは薄く笑いを浮かべているのだろう。
でも、その『 驚愕 』と『 恐怖 』の感情は、抑えられなかった。
そして、渦が全て消えると、ソイツは頭を一つ振った。
「・・・なんだか分かる?」
「・・・・・・・・・死神」
小声をで、まるで呻いている様に言うと、ソイツは満足そうに笑い、
「正解」
と言った。
『 死神 』は大鎌を邪魔そうに肩に乗せながら口を開けた。
「・・・で?アンタが死ぬ根拠、分かってくれた?」
「・・・・・」
どう返事すればいいのか分からなくなり、口を噤む。
確かに、死神なんなら分かる―――――
けど・・・。けど・・・。
やっぱりどこか信じきれず一人勝手に唸り始める。
それを死神は嬉しそうに見る。
「ま、信じる信じないはアンタの勝手さ。村上 阿華音」
「・・・・・ねぇ」
「ん?質問か?」
「まぁ」
あたしは死神にもう震えていない足で一歩近付いた。
「・・・何時に、死ぬの?」
「うーんとなぁ・・・。あと23時間56分11秒だな」
空中のどこかを見つめながら死神は言った。
「じゃあ、あたしは何が起きて死ぬの?事故?」
「あぁ、心肺停止」
さらっと、何気なく言われた。
益々死ぬ実感が遠のいていく。
「・・・・・・・そっか」
「大丈夫だよ。苦しいのは3秒くらいだから。すぐに死ぬよ」
別にあたしはそーゆー事を心配してるワケじゃない。
あたしが少し呆れ顔で死神を見ていると、顔が急にすっと真顔に変わった。
「さぁ―――。
残りの時間、アンタはどう過ごす―――――?」
黒髪の悪魔は、運命を告げた。




