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あと5秒。  作者: 彪兎
2/2

・Second・





―――――あたしが死ぬ?


このあたしが?


2年に一回くらいしか風邪をひかないこのあたしが?



「・・・・・嘘」


「嘘なワケないだろう」


ソイツは偉そうに言った。


「だって・・・。なんであたしが死ぬだなんて分かるのよ!?根拠は!?」


あたしがそう叫ぶと、ソイツは鼻で笑った。

やはり何故か一つ一つの動作が癇に障る。


「そう言えばまだ言ってなかったっけ」


ソイツはそれを言うと、右手を宙に掲げた。


「?」


あたしはその手に視線を合わす。

するとそこから黒い渦が生まれた。


「ぇ・・・っ」


あたしが眼を見開いている間にも、その渦は大きさを増す。

そしてその渦は、ソイツを取り巻き始めた。

その渦は真っ黒な衣装となる。

右手に残った渦の塊は次第に長細くなっていく。

それは大鎌となり、銀の光を纏う。


「・・・っ・・・」


あたしは、息を飲む事しか出来なかった。

でも一つ理解出来た。


人間じゃない。


ただ、それだけを。


「・・・っ、ぁ。・・・ぁ、あ」


もう、呻き声しか出なかった。

口を手で押さえ、目をいっぱいに見開いて、足が震えている。

きっとその姿は情けないだろう。

またソイツは薄く笑いを浮かべているのだろう。

でも、その『 驚愕 』と『 恐怖 』の感情は、抑えられなかった。


そして、渦が全て消えると、ソイツは頭を一つ振った。


「・・・なんだか分かる?」



「・・・・・・・・・死神」



小声をで、まるで呻いている様に言うと、ソイツは満足そうに笑い、


「正解」


と言った。

『 死神 』は大鎌を邪魔そうに肩に乗せながら口を開けた。


「・・・で?アンタが死ぬ根拠、分かってくれた?」


「・・・・・」


どう返事すればいいのか分からなくなり、口を噤む。


確かに、死神なんなら分かる―――――

けど・・・。けど・・・。


やっぱりどこか信じきれず一人勝手に唸り始める。

それを死神は嬉しそうに見る。


「ま、信じる信じないはアンタの勝手さ。村上 阿華音」


「・・・・・ねぇ」


「ん?質問か?」


「まぁ」


あたしは死神にもう震えていない足で一歩近付いた。



「・・・何時に、死ぬの?」


「うーんとなぁ・・・。あと23時間56分11秒だな」


空中のどこかを見つめながら死神は言った。


「じゃあ、あたしは何が起きて死ぬの?事故?」


「あぁ、心肺停止」


さらっと、何気なく言われた。

益々死ぬ実感が遠のいていく。


「・・・・・・・そっか」


「大丈夫だよ。苦しいのは3秒くらいだから。すぐに死ぬよ」


別にあたしはそーゆー事を心配してるワケじゃない。

あたしが少し呆れ顔で死神を見ていると、顔が急にすっと真顔に変わった。






「さぁ―――。


     残りの時間、アンタはどう過ごす―――――?」






黒髪の悪魔は、運命を告げた。




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