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あと5秒。  作者: 彪兎
1/2

・First・



あたしは別に病弱な子なんかじゃなかった。

むしろ、いつもドタバタと遊びまわっていた。

男子と見分けが付かないくらいの元気娘。

それがあたし、村上むらかみ 阿華音あかねだった。


あたしはその日、なんだか外をブラブラしたい気分になったから、あてもなく出かけた。

天気はよく、降り注ぐ日差しが気持ちいい。


「たまにはこーやって散歩するのもいいなぁ〜」


ぐっと背伸びをしながら呟いた。

空には雲が浮かび、雀が飛んでいる。

『平和』という言葉がピッタリだった。



そのままあたしは街へ出てみた。

やはり休日は人が多い。

とちあえずコンビニに・・・とだけ思っていたのに、人ゴミに流されてしまいそうになる。


「やっぱ外なんか出るんじゃなかったかも・・・」


自分の行動に早くも後悔し始めていた。


―――――その時だった。


さっきまでうるさく騒いでいた人々の声が消え、静寂に包まれた。


え・・・?


あたしは不安になる。

何が起こっているのだろう?

全てが静かだった。

この世界にはあたしだけ、というような感覚に陥る。



「おい」



声がした。

数十秒だけのはずだったのに、聞こえてきた声がとても久しぶりに聞いたように感じる。

それは正面から聞こえて来ていた。

あたしは目を凝らす。

人ゴミで姿が見えない。

最初に見えたのは黒いキャップ帽。

それから黒い髪。


男だ。


そこまででやっと分かった。

女にしては背が高過ぎる。

男にしては少し長めの髪が風で揺れていた。

声の主の姿が見えてくる。

黒いTシャツにGパン。

あたしはソイツをじっと見る。

するとソイツが顔を上げて、あたしと目が合った。


ゴゥッ・・・


強い風が吹いた様な音がした。

次の瞬間には、聴覚が戻っていた。

また耳障りな大勢の騒ぎ声に包まれる。

突然の出来事に、あたしは混乱しきっていた。


「・・・!?え!?何なの・・・!?」


一人戸惑っていると、ソイツが近付いて来た。

あたしはハッと顔を上げる。

だがソイツは何も言わなかった。


「・・・・・」


半笑いを浮かべた顔で、あたしの横をすり抜けようとした―――


瞬間だった。


ソイツが、ボソリと言った。




「―――――アンタ、もうすぐ終わるよ」




―――――え?



何?何が終わるって?


「ちょ・・・ちょっと待ってよ!」


あたしは瞬間的に、ソイツの腕を掴んでいた。

いつの間にかあたしの顔には、冷や汗が浮かんでいた。

ソイツはやはり、笑っていた。


「クスクス・・・・・。知りてぇか?」


心底楽しそうに笑う。

あたしは唾を飲み込み、



「・・・・・知りたい」



嫌な予感がした事に、あたしは気付かないフリをした。




ソイツに連れられて来たのは、狭い路地裏だった。


でもそんなに人気の無い場所ではなく、大勢の騒ぎ声は聞こえたままだ。

あたしは仁王立ちしたまま、ソイツを睨む。


「―――で?何なの?一体・・・」


そう言うと、壁にもたれたソイツは、またクスクスと笑う。

何故かとても癇に障る。

あたしはイラつき気味に聞く。


「ねぇ!早く教えてよ!」


「―――後悔するかもしんねぇぜ?」


「後悔・・・?」


益々意味が分からない。

一体あたしが何をどう後悔するのだ。


「・・・・・後悔なんかしない」


「・・・フ。いい眼だ」


偉そうに腕組みをしながら、『 それ 』は告げられた。




「―――――アンタ、


        死 ぬ


んだよ」




頭が、真っ白になった。



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