殿上人の屋敷にて【200文字】
篝火の焚かれた舟から、池の水に手を浸す。
ほろ酔いの肌に、水の冷たさが心地良い。
気の早い秋の虫が鳴き出した頃、夏の終わりを惜しむ宴を聞きつけ、紛れた。
遠くで鳴る管弦と、傍らの水の音。
仰ぎ見れば綺羅の星に、儚げな三日の白い月。
乗り合わせの御仁が、酔いどれに今宵の月を詠み上げた。
出来は知らぬが風情はある。
喝采して御仁の杯を満たし、ではと我も、即興に歌を返して杯を受ける。
さてさて、風情に勝る肴はあるまい。
上流貴族の宴には、チャンスや褒美やご馳走を求め、
下級貴族も押し寄せるのです。
・・・でも、ただの酔っ払いの二人。