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4 初めてのSuica②

 興奮のあまり、年甲斐もなく勢いよく答えてしまい、少し恥ずかしくなってしまったが仕方がない。

 自分が分からないことを、一緒に考えてくれるという人ができたのだもの。

 これが嬉しくないわけがない。


「静江さんはSuicaを使えるようになりたいんですね。良かったら、どうしてそう思われたのか理由を伺っても?」

 そうライアンに促され、私は今朝のバスでの出来事や、これまで感じていたことを話した。


「ふぅん。そんなことがあったんですね。では、これまでの静江さんの話を整理してみましょうか。静江さんのおっしゃる『Suicaを使えるようになる』というのは、「日常生活の中で戸惑わずに利用できるレベルになること」だと感じましたが、合っていますか?」

「そうですね。若い人達と同じみたいに、サッと使えるようになりたいと思っています。」

 私は、朝の様子を思い浮かべながら、そう答えた。


「ちなみに…」ライアンは私にニッコリ笑って話を続ける。

「Suicaって、バス以外にも色々と利用できることがあるって、ご存じでした?」

(バス以外にも使える?そんなこと思いもしなかった。定期券がスマホになっただけだと思ってた。)

 私の表情から、何を言いたいか察したらしい。さすがAI教師。


「静江さんの様子から察するに、バス以外の利用法については、ご存じなかったようですね。」

「そうですね。今日初めて聞きました。でも、取りあえずバスで使えれば、それで今は十分です。」

「うん、そうなると、とりあえず今日の授業では『バスでSuicaを使う方法』を学べれば十分かな?Suicaを使う前に、静江さんが不安に感じていることを教えてもらえますか?授業の教材選びの参考にしたいんです。」

 片目でウィンクされながら、そう聞かれる。

 ときめきよりも、そんな格好の良い仕草を自然体で出来てしまうライアンを単純に尊敬してしまった。


 その後、私はライアンにSuicaを使うにあたって不安に思っている3つの事柄を伝えた。

 ①Suicaにお金を入れる方法が分からない。

 ②バスの中でスマホをかざす場所が分からない。

 ③試しに使ってみたいが、うまく出来なかった時に他の人に迷惑をかけたくない。


 私の話を聞いたライアンは、今度はiPadで色々と調べ始めた。

「静江さん、良い教材がありましたよ。このYouTube一緒に見て勉強しましょう。」

(ユーチューブ?それって、リモコンでは選べないチャンネルの番組のことよね?)

 ライアンは説明を続ける。


「静江さん、ユーチューブをご覧になるのは初めてですか?今日はSuicaの勉強が優先なので、YouTubeの詳しい説明などは日を改めて。今日は、この動画を私と一緒に見て、Suicaの利用を疑似体験してみましょう。」

 そういうと、ライアンは大きなスクリーンに動画を投影したのだった。


(・・・はぁ。動画で学ぶって、こんなにわかりやすいものだとは思わなかったわ。)

 ライアンと共に20分程度の動画を見た後、私は感動のあまり、呆けてしまっていた。

 Suicaにお金を入れることをチャージということ、その方法から始まり、バスの中でのスマホのかざし方まで丁寧に解説してある動画だった。

 特にバスの中での映像は、手にスマホを持った状態のみが画面に映っており、まるで自分が実際に使っているかのようだ。


「Mr.ライアン。ユーチューブってすごいんですね。私、これを見るまで、乗客の少ない時間帯にバスに乗って実際にSuicaを使ってみないとって思っていたんです。今日の授業のおかげで、その必要もなくなりましたけど。」

 私の発言を聞いて、ライアンはフフッと笑う。

「それは良かった。私の授業では映像教材を良く使うんですが、静江さんが気に入ってくださったようで何よりです。さて、今日の授業はこれで終わりにしたいと思いますが、どうでしょう?。Suicaは使えそうですか?」

「ええ。今日で予習も出来ましたし、明日、またバスを利用するので早速使ってみたいです。」

「それでは、次回の授業でまたお会いしましょう。さようなら。」


 …気がつくと、自宅の居間でスマホを握りしめていた。

 時計を確認すると、時間が経過した形跡はなく、一瞬の出来事になっていた。

(はぁ…不思議な体験だったけれど、『次の授業で』って言っていたわね。また会えるかしら?)


 Suicaのアプリを立ち上げてみると、そこには5000円がしっかり表示されていた。

 どうやら、あの教室での学びは夢ではなかったらしい。

(もうこれで、わざわざ小銭の準備もしなくて良いのね。フフッ、明日が今から楽しみだわ。)


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