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鬼姫様は籠の中。  作者: 夕藤さわな


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第六話

 下級貴族や武士が暮らす外周の夜道も暗いが月明りすら届かない鬱そうとした森の中はさらに暗い。ろくに足元も見えない中、鬼童丸は危なげなく獣道を駆けて行く。

 兄二人から聞き出した話はこうだ。


 半年程前のこと――。

 名門貴族・桂家の次期当主の長男とどこぞの上級貴族の姫との婚礼の儀が行われた。ところが花嫁や嫁入り道具を乗せた牛車の列が盗賊に襲われたのだ。

 盗賊たちの目的は高価な花籠や花嫁衣裳、嫁入り道具だったのだろう。綺麗さっぱり持っていかれた上に悲鳴をあげ、抵抗した花嫁も殺されてしまった。運が悪いことにその場には花婿側の父親も居合わせており、こちらも盗賊たちに殺されてしまった。

 桂家の武士たちがすぐさま盗賊たちを追いかけたが彼らは翌日、首だけの姿で戻ってきた。朝起きて正面の門を開けると屋敷の前の道にずらりと生首が並んでいたそうだ。


 桂家の現当主からすれば次期当主を殺され、お抱えの武士団を全滅させられ、ついでに孫息子の花嫁を殺されたのだ。怒り心頭。都中にこう触れまわった。


 いわく――。


 盗賊の首と共に奪われた花籠や花嫁衣裳、嫁入り道具を持って来た者にはそれらの盗品すべてを与える。

 他、望むもの・願いがあれば一つ叶える。


 ――と。


 獣道を抜けると開けた場所に出た。どこぞの貴族が建てた後、手入れもされずに放置されていたのだろう。屋根も壁もところどころ崩れたいおりが現れた。

 見張りだろう。庵のまわりを小汚い格好をした男たちがうろついている。手には刃こぼれしていたり錆びていたりとろくに手入れのされていない刀が握られていた。

 刀の扱い、警戒の仕方――どれを取ってもずぶの素人。ゴロツキの寄せ集めだ。桂家の武士たちが全滅したのは追う側だったから。盗賊たちが熟知し、得意とする地形に誘い込まれたから。

 桂家に恩を売りたいちょっと腕に覚えのある貴族やかけられた懸賞品目当ての武士が盗賊を見つけられずにいたのは貴族や貴族の威を借りて傲慢に振る舞う連中を快く思わない庶民が口をつぐんだからだ。

 横柄な態度で聞かれれば知っていても知らないと答える。教えてなるものかと思う。それが人のさが

 でも――。


「貴族の自分、貴族に仕える自分が尋ねれば答えて当然、教えてもらえて当然と思っている」


 多くの貴族や貴族の威を借りている者たちがそういう考え方なのだ。


「貴族以外は人でない。人を人とも思わない。そんな考えだから元服もしていないような子供にさらわれるんです」


 鬼童丸は低い声でひとちた。かと思うと姿勢を低くして駆け出す。


「高価な花籠も、花嫁衣裳も、嫁入り道具も……花嫁すらも」


 長い黒髪がさらりと風になびいた。いつものみずら髪姿ではない。馬の尻尾のように低い位置で一つに結っている。

 隠れ家が見つかることはないとたかくくっていたのだろう。暗闇から飛び出してきた人影に盗賊が気付くまでにはずいぶんと間があった。鬼童丸と目が合った後の反応もずいぶんと遅かった。


「当座の衣食住。足となる馬、あるいは牛。それから仕事。あと必要なのは……」


 振るう刀は月明りを映して夜の闇に銀色の線を描いた。

 いくつも、いくつも――。

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