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鬼姫様は籠の中。  作者: 夕藤さわな


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第二話

 広くはない国の中央には帝が住まう内裏だいりがあり、その内裏を中心に都が作られた。碁盤の目の形に道が整えられた都の内側には上級貴族が居を構え、外周に向かうほど下級貴族や武士といった身分の低い者たちが暮らし、さらにその下、無位の庶民たちは都の外で暮らしている。

 都の中心部に建つ名門貴族の本家本邸ともなれば家臣や女房、武士団の者たちが暮らすためのいくつもの屋敷や船を浮かべられるほどに広い池付きの庭があったりする。


 道もそうだ。

 都の中央は道も整備され、牛車が通りやすいようにと石一つ落ちていない。広い道の両脇にはヒビ一つ、げ一つない白い塀がどこまでも続いている。

 反して下級貴族や武士が暮らしている外周は石だらけ、雑草だらけ。塀はヒビどころか崩れていたり、原型を留めていなかったり。そもそも塀があったのかどうかも怪しいほど綺麗さっぱりなくなっている屋敷も多い。


「当座の衣食住……足となる馬、あるいは牛……」


 そんな道を鬼童丸はぶつぶつぶつぶつと呟きながら歩いて行く。


「それから仕事……あと必要なのは……」


 明かりを灯している屋敷などない。当然、漏れる明かりもない。月明りだけを頼りにすたすたすたすたと暗い夜道を歩いて行き、辛うじて半分ほど塀が残っている屋敷へと入っていく。

 そして――。


「兄上」


 裏庭にまわりこんでそう言った。


「きい丸、お帰り!」


「桔梗家の姫様はどうだった?」


 縁側では兄二人が草鞋わらじを編んでいた。二人共、元服を済ませて下級官人として働いているけれど、それだけでは暮らしていけない。弟たちを食べさせることができない。だから、官人としての仕事のあとにこうしてせっせせっせと草鞋を編んで、売って、生活の足しにしているのだ。


 ――と、言う話はさておき。


「何日か前に桂家が盗賊の首に懸賞金をかけたという話をしていませんでしたか」


「え、えっと……」


「した、かな……?」


 ニコリと微笑んで尋ねる鬼童丸を見上げて兄二人は困惑の表情で顔を見合わせた。弟はいつも通りの穏やかな微笑みを浮かべている。浮かべているように、一見すると見える。

 ただ――。


「その話、詳しく教えてください」


 目が少しも笑っていないのだ。圧が凄まじいのだ。

 弟のいつもとは違う様子に兄としては事情を聞くなり止めるなりするべきだったのかもしれない。

 でも――。


「……あ、ああ」


「……話してやろう」


 二人の兄は弟の圧に負けてこくこくと頷いたのだった。

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