十五話 出てくる事実
ミアが居なくなってから暫く経ち。
一気に入ってきた情報に、俺は椅子に座り呆然としていた。
「…リオン様」
「…あぁ、大丈夫だ。
すまないが、シギを呼んできてくれ。」
「解りました。」
心配そうに自分を見る部下に、頼み事をする。
出ていく部下の足音を聞きながら、先ほど言われた全てを思い出していた。
―…あの後、屋敷で働いていたメイド達を呼んだ。
話を聞けば、ミアの言っていた事が事実だという事が、叩きつけられた。
『…仰る通りです。
最近はディルニア様がお給金をくださらない時がありました。
その時は、アニシア様が私達の休憩用の部屋にいらしてこっそり渡してくださってました。』
『リオン様の食事も、その通りです。
定期的に面会していたのは、食事内容を決める為でした。』
『シギ様の炊き出しも、行くのを渋るシギ様をアニシア様が送り出してましたよ。
なので私達はてっきり…。』
嘘だと、ミアの嘘だと思っていたから、正直動揺を隠せなかった。
そんな俺を見ながら、他のメイドや執事等もどんどん口を開いていく。
『…アニシア様から口止めされてたんですけど…。
あの日、皆さんが来る少し前に私達は全員、アニシア様に解雇されました。』
『「さぁ、早くこの屋敷から出なさい。」そう言って、アニシア様は僕達を屋敷から追い出したんです。』
『皆、混乱しました。もう一度、アニシア様に聞こうとした時。皆さんがディルニア様とアニシア様を捕えに来ました。』
自分の足元が、崩れていく感覚だった。
だって、あの女は…アニシアは変わったと思っていた。
牢屋に来た時も、檻越しで。
服だって、いつも違うのを着てて…。
だから、だから…。
そんな事をグルグル考えていると、震えた声が、響く。
『あにしあさまは…っ、あのひ、何が起きるか…知ってたんですよ…っ。
だって、だってそうじゃないと…おかしいじゃないですか…っ!』
『あんな、あんな狙ったように、皆が屋敷からいなくなるようにするなんて…っ!』
ぽろぽろと、泣き出すメイド。
最初に、質問に答えたメイドだった。
『あのひだって…っ、すぐ、みんな解りましたよ。私達を巻き込まない為だって…っ!』
『怖いハズなんです、だって、捕まったらどうなるか、私達でもわかるんです。
それなのに、アニシア様はそんなの一切見せず、私達の安全を優先したんです…っ。』
『ほんとに…っ、ほんとに悪逆非道な人なら…っ!
こんな事するはずないんです…っ!』
『リオン様、どうして…っ、どうしてアニシア様まで、死なないといけなかったんですか…っ。』
最後に聞いたあの言葉が、耳から離れない。
昨日までなら、何を、と一蹴していた。
憎い憎い、復讐対象だと思っていた。
だけど、ボロボロと出てくる、俺が知らない彼女の事。
その事実が、俺の判断を、鈍らせる。
深呼吸しようとして身体を動かした時、カサリ、と紙同士があたる音がした。
(…そうだ。さっき見損ねた手紙)
咄嗟にしまった封筒。
よく見ると封筒は少し寄れて、最近書いたものではないのはすぐ解った。
改めて中身と宛名を確認しようとして、固まった。
―リオンへ―
「…俺、宛て?」
呆然としてしまった。
てっきり父親やシギ、あるいはミアへのものだと思っていた。
シギやミアになら後で渡そう、そう思っていた。
だけど宛名は自分自身で。
震えながら、封を開け、丁寧に畳まれた手紙を開く。
何枚か重なっている便箋。
その一枚目に書かれてる文字に、目を見開いた。
―これを貴方が読んでいるって事は、私はもう死んでるのでしょう―
「な…。」
たった一文。
それだけを書かれた文章。
続きを読もうと、便箋をめくろうとした瞬間。
バタバタと、慌ただしい足音が響いた。
思わず音の方へ顔を上げると、足音と同じように、慌ただしく扉を開けた。
「リオン様…っ!」
「どうした。」
「シギ様が…っ。」
―シギ様がどこにもいません!!―




