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とある嘘つきの話  作者: 悧緒


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十二話 とある使用人の話

 私はかつての職場…ディルニア様とアニシア様のお屋敷に来ていた。

理由は簡単。

屋敷の案内と片づけの為。

といっても屋敷に勤めて間もない私は案内は殆ど出来ず。

ほぼ片づけ担当としてここに居る。


(昨日の今日でもうこの屋敷の物を換金するなんて…。)


 ひとつ、溜息をつく。

そして思い出すのは昨日見たあの悪魔のような所業。

何とも言えない気持ちで掃除をしていると、コツ、コツ、と革靴の音が響く。

ちら、と音の方を見えるとそこにはリオン様が居て。


(…一昨日までなら、英雄だと思ってたんだけどなぁ。)


 正直、カッコいいと思っていた。

死ぬのが怖くて黙っていた私とは真逆で、行動に移した人。

だから凄いと、純粋に思っていた。

けれど昨日のあの仕打ちを、笑顔で行う姿が恐ろしくて。


「…アニシア様まで、あんなことしなくても良かったのに。」


 少なくても、自分の中のアニシア様はディルニア様とは違って、まともな人なのだ。

屋敷に来て間もなく、迷った私を心配してくれた。

場所を教えてくれて、それから会う度に大丈夫かと声をかけてくれた。

それだけじゃない。

ディルニア様が湯水のようにお金を使って、給金が貰えない事があった。

そんな時、自分の私財を売り払って給金をくれたのだ。

アニシア様には専属のお世話担当が居たから、私はそんなに関わる事は無かったけれど。

少なくとも、あんな風に悪と罵られるような方では、無いと思っていた。

だから正直、街の人やあの男の反応には戸惑った。

それは、屋敷の皆が同じで。

けど、その反論を言う勇気は、少なくとも私には無かった。


(…あの人が裏切らなければ…。)


 この領地でトップクラスの実力を持っているシギ様。

あの人はアニシア様が好きだった。

だから、何かあってもアニシア様の身は安全だと、思っていた。

そんなのは、ただの空想だったけれど。

あの男があの人を協力者と言ったあの時は、本当に驚いた。

アニシア様もショックだったのか、抵抗することもなくあの人に拘束されて、連れていかれた。


(…愛しさ余って…って事なのかしら。)


 そんな事を考えていると、一緒に掃除をしていた子に声をかけられる。

どうやら場所を変えるらしい。

場所は亡き奥様、ベルリア様のお部屋がある通路。

そこはディルニア様とアニシア様以外は訪れる事を禁止されていた場所。

いいのだろうか、と思いつつあの男やその部下からの命令とあれば、行くしかない。

皆同じ気持ちなのだろう、少し困惑しながら、移動しはじめた。


 こつ、と自分の足音が響く。

此処を曲がればベルリア様のお部屋だ。

そう思いながら、意を決して足を進めた。


「…美人。」


 廊下の突き当り、視線の先には、幼いアニシア様とそれを抱いている女性、ベルリア様。

綺麗な銀髪と、夜のような深い蒼の瞳が印象的な、人だった。

絵に釘付けになったのは、どうやら私だけではないようで。

一緒に来た子達も絵に釘付けだった。


「アニシア様の瞳って、ベルリア様譲りだったんですね。」

「あぁ、そっか。

 貴女は最近入ったから知らないんだっけ。

 そうよ、アニシア様の瞳はベルリア様。

 で、髪の毛がディルニア様譲りなの。」

「へぇ…。

 ―……あれ?」


 まじまじと肖像画を見て、気づく。

ベルリア様が着けている耳飾りに、見覚えがあることを。


「先輩。」

「なぁに?」

「あのベルリア様が着けてる耳飾りって…。」


 そう聞くと、先輩は教えてくれた。


「ん?

 あぁ、あれね。そうよ、いつもアニシア様が着けてたピアス。

 元々ベルリア様のもので、形見としてアニシア様が貰ったものなの。」

「…え。」

「?どうしたの?」

「あ、いえ、なんでも…っ。

 怒られる前に掃除、始めましょ!」

「そうね。」


 先輩はさっさと窓ふきを始める。

そして私は、昨日抱いた既視感にようやく納得した。


(…そうか、だからあのピアスに見覚えがあったんだ。)


 処刑の時、ちらりと見えたシギ様のピアス。

あの人が着けてることに、感じた違和感と、妙な既視感。

それはきっと、何度もアニシア様が着けているのを見ていたからだ。

けどだったら、と新しい疑問が浮かぶ。


「…どうしてそんな大事なピアスを、シギ様は着けていたの?」


 それも、片方だけ。

少なくとも、アニシア様が捕まった時、両方着けていた。

それは断言できる。

だって、その直前に私たちに解雇を言い渡した時、身に着けていたのだから。

あまりに突然の解雇宣告に、アニシア様を凝視した、だから覚えてる。

その時は、アニシア様は両方に着けていた。

なら、いつあの人の元に?

そもそもそんな大事な物を裏切った人に渡すだろうか。

それとも彼等に奪われた?

いや、それなら両方着けているはずだ。

むしろそもそもの話。


―裏切りたくなるほど、嫌った相手の物を身に着けたりするだろうか―


(…まさか)


 ありえない考えが頭をよぎる。

けどそうじゃないと辻褄が合わない所がいくつもある。

もしそうだとしたら…。


「…こんなの…ただの…」


 メイドのその呟きは、兵士のとある呼び出しの声によってかき消された。

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