第二話:酒場の再会と届かぬ高み
第二話:酒場の再会と届かぬ高み
洛陽の街の片隅、埃っぽい裏通りにひっそりと、しかし夜ごと怪しげな、それでいてどこか人間臭い温かい灯りを漏らす一軒の酒場があった。
その名は「濁り酒屋『泥亀』」。
お世辞にも綺麗とは言えない、長年の煤と油でテカテカと黒光りする、破れた暖簾をくぐれば、そこはむっとするような熱気と共に、酸っぱい安酒の独特の匂い、焼いた獣肉の脂が焦げる香ばしい煙、男たちの汗と長旅で染み付いた土埃の匂い、そして一攫千金を夢見る者たちの荒い息遣いや、時折テーブルを叩くドスンという鈍い音、酔っ払いの甲高い怒号、腹の底から絞り出すような下品極まりない猥談の爆笑が、渾然一体となって渦巻いていた。
磨り減って黒光りする、ところどころ板がささくれ立って浮き上がった床。煤けて、巨大な蜘蛛の巣がまるで芸術的なタペストリーのように天井を覆う。あちこちにいつのものとも知れぬ濃い酒の染みがべったりと残り、いつ脚が折れてもおかしくないような、しかし妙に頑丈で、数多の修羅場(主に酔っ払いの喧嘩だが)を見届けてきたであろうテーブルと椅子。
ここには、明日への僅かな、しかし切実な希望をその血走った目に宿らせる、まだ若い遊侠たちもいれば、過去の栄光にすがりつきながらも夢破れ、ただその日の日銭を稼ぐためだけに、もはや錆びつき、刃こぼれした汚れた剣を、それでも手放せずに振るう古強者たちもいた。
陳統にとって、この猥雑で、しかし奇妙なまでに生々しい、人間の欲望と本性が、まるで煮凝りのように剥き出しになったような活気に満ちた喧騒は、彼の心の奥底で常に燻り続け、決して消えることのないどうしようもない虚無感や、出口の見えない焦燥感を、ほんの一時的にではあるが、麻痺させ、紛らわすにはちょうどよかった。
彼は、この「泥亀」の、そんな泥臭く、そしてどこか人間臭い、救いようのない、しかしどこか憎めない雰囲気を、決して嫌ってはいなかった。
むしろ、どこか自分自身に、そして自分の歩んできた、決して褒められたものではない人生に似ているとすら感じていた。
彼は、油で汚れ、無数のナイフの傷がまるで年輪のように刻まれた、ガタつく木製のテーブルに置かれた、縁の欠けた、しかし妙に彼の手のひらに馴染む陶製の杯に入った、水で薄められたかのような濁り酒を、無言でゆっくりと呷る。
喉を焼くような、そして舌にいつまでも痺れるようにピリピリと残る独特の強い苦みが、日中の戦いで全身にこびりついた血の匂いや、口の中にいつまでも残る不快な金属の味、そして拭い去ることのできない現実のやるせなさを、わずかに、ほんのわずかにではあるが洗い流してくれるような気がした。
ここが彼の定位置。
酒場の最も隅にある、壁際の、薄暗く、他の客の騒々しい視線や、面倒な絡み酒があまり届かないテーブルだ。
まるで、世を儚み、自らの拭いきれない無力さと、決して癒えることのない過去の傷を一人静かに噛みしめる、年老いた、そして孤独な隠者のように、彼は人々の喧騒から少し距離を置いて、ただ黙々と、しかし味わうでもなく杯を重ねるのが常だった。
周囲の、まるで祭りの前夜のような、あるいは世界の終わりの前夜のような、馬鹿騒ぎにも似た騒がしさが、かえって彼の心の奥底にある、深い孤独と、誰にも理解されることのない、そして理解されたくもない絶望を、皮肉にも、そして残酷なまでに際立たせているかのようだった。
不意に、彼のテーブルに、ぬっと大きな影が落ちた。
それはまるで、これまで彼を覆っていた、心地よいとまでは言えないが、しかし慣れ親しんだ酒場の喧騒の膜が、一枚鋭利な刃物で、音もなく、そして唐突に切り裂かれたかのような、そんな不快で、そしてどこか不吉な予感を伴う感覚だった。
反射的に顔を上げると、そこには見知った、しかし最後に会った時よりも明らかに精悍さを増し、どこか張り詰めた、そして隠しきれない焦りの色をその瞳の奥に宿した、若者の顔があった。
野心と、そしてどこか危うい、まるで抜き身の、そして研ぎ澄まされた刃のようなギラギラとした光を宿した鋭い目。
彼がかつて手塩にかけて剣技や、この過酷な乱世を生き抜くための様々な生存術を、時には厳しく、時には優しく叩き込み、そして自らの才能の限界を、そして教えることの限界を悟った時、半ば突き放すようにして、そして自らの無力さを心の底から呪うようにして独り立ちさせた元弟子の一人、朱桓だった。
最後に顔を合わせたのは、確か数ヶ月も経っていないはずだが、その僅かな間に彼はさらに背丈を伸ばし、肩幅もがっしりと増して、まるで厳しい風雪に耐えて天を目指す若木が、やがて周囲の木々を圧倒する大樹へと成長するかの如く、その屈強な体つきは、もはや並の遊侠ではなく、歴戦の、そして名を上げつつある武人の風格すら漂わせ始めていた。
その目覚ましい、そしてあまりにも眩しい成長ぶりは、陳統にとって誇らしくもあり、同時に、自らのどうしようもない停滞と、埋めがたい才能の差を、まるで鏡のように容赦なく突きつけられるようで、僅かな、しかし確かな嫉妬と、そしてどうしようもない、言葉にできないほどの寂寥感を覚えさせるものだった。
朱桓の身に着けた、まだ新しいが明らかに上等な、細かな細工の施された革鎧や、腰に下げられた、鞘に龍…いや、何かの猛獣の紋様が見事に彫り込まれた、一目で業物とわかる長剣が、彼がそれなりに危険な依頼をこなし、名を上げ、そして少なくない成功を収めていることを、雄弁に物語っていた。
朱桓は、陳統の許可を求めるでもなく、無言のまま、しかしどこか動きの硬い、まるで全身が鋼鉄のバネのように強張っているかのような、張り詰めた緊張感を漂わせた様子で、向かいの席にどかりと、しかしどこか遠慮がちに腰を下ろした。
その拍子に、古びて油の染み込んだ、いつ脚が折れてもおかしくないような椅子が、ギシリと不快な、そしてどこか不吉な予兆を感じさせる音を立てて軋むのが、周囲の喧騒にかき消されることなく、妙に大きく、そしてやけに長く響いた。
彼は、真っ直ぐな、しかし何かを射抜くような、あるいは最後の望みを託すかのように必死に縋るような、様々な感情が複雑に絡み合った鋭い視線で、じっと陳統を見据えた。
その若く力強い瞳の奥には、抑えきれない野心と、功を焦るような焦燥感、そして僅かな、しかし切実な懇願の色が、まるで嵐の前の、不穏で重苦しい、そしていつ爆発してもおかしくない空のように複雑に絡み合って浮かんでいるように、陳統にははっきりと見て取れた。
陳統は何も言わず、ただ黙って杯に残っていた濁り酒を、ゆっくりと、味わうでもなく一口飲む。苦い。いつも以上に、そしてどうしようもなく苦く感じた。
彼が何か重大なことを、そしておそらくは自分にとってあまり聞きたくないであろう、面倒事を切り出すのを、静かに、そしてどこか避けられない運命を、あるいはまたしても厄介事を、そして心の傷を背負い込むことになるであろう未来を予感しながら待った。
酒場特有の、酔客たちの騒がしい音楽や、下品なジョークに沸く甲高い笑い声が、まるで遠い世界の、自分とは全く無関係な出来事のように、二人の間の重苦しい、まるで鉛のように息が詰まるような沈黙を、さらに深く、そして重く強調しているかのようだった。
周囲の、酸いも甘いも噛み分けたような、しかしどこか野卑で下世話な遊侠たちも、何事かと遠巻きにこちらの様子を、好奇心と、僅かな、しかし確かな警戒心を込めて、まるで珍しい獣でも値踏みするかのように窺っているのが、陳統の研ぎ澄まされた肌感覚で、まるで背中に無数の冷たい視線が突き刺さるかのように感じられた。
やがて、朱桓は一度深く、そしてまるで決壊寸前の、か細く、そして今にも切れそうな堰のように、微かに震えるような息を吸い込み、意を決したように、低く、しかし内に秘めた抑えきれない熱と、どこか悲壮感すら感じさせる、心の底から絞り出すような、そして僅かに掠れた声で切り出した。
「師匠……どうか、もう一度、この朱桓に、貴方のお力をお貸し頂きたいのです。私は、かの伝説の【試練の塔】へ、この命を賭して、必ずや挑もうと決意いたしました。そのためには、どうしても師である貴方の、あの神業とも言える卓越した剣技と、百戦錬磨の経験に裏打ちされた深遠な知恵が、何としても、何としても必要なのでございます!どうか、この通り…!」
そう言うと、朱桓は椅子から滑り落ちるようにして、汚れた、酒と食べ物の酸っぱい臭いが染みついた土間の床に、まるで懺悔でもするかのように両膝をつき、深く、深く頭を下げようとした。
その若く、しかし傷つきやすく、そしてあまりにも誇り高い額が、泥と酒で汚れた、冷たく、そして無慈悲な床に触れる寸前だった。
「よせ、朱桓。みっともない真似はするな。お前らしくもない」
陳統は短く、しかし有無を言わせぬ、心の底から静かに、しかし確かな重みを持って湧き出るような力強さで、彼の行動を制止した。
彼の声には、普段の彼からは想像もできないほどの、確かな威厳と、そしてどこか深い、言葉にできないほどの悲しみが宿っていた。
「またか…」
彼は心の中で深く、そして重いため息をつき、思わず苦々しい酒を、まるで毒でも飲み下すかのように、一気に、そして味わうことなく飲み干した。
その言葉は、彼の心の最も柔らかな部分に、深く、そして決して抜けることのない呪いの棘のように突き刺さったままの、決して癒えることのない古い傷を、容赦なく、そして残酷に抉り出す、禁断の呪いの言葉だ。
【試練の塔】――。
古の時代、天界に住まうと言われる仙人が、地上に生きる定命の者たちの限界を試し、あるいはその内に秘められた無限の可能性を見出すために築いたとも、あるいは世界の終末がいつ訪れるのかを正確に見届け、それを記録するために、星々の運行を読むために建てられた、天空を貫く監視塔であるとも噂される、天を衝くようにどこまでも高く、そして不気味にそびえ立つ、謎に包まれた巨大な塔。
その頂に到達した者は、人知を超えた絶大な力を手に入れ、天命盤に刻まれた自らの運命すらも、意のままに操ることができるようになるという、遊侠たちの間で半ば神話のように、しかし熱に浮かされたような、ある種の信仰にも似た熱狂と共に語り継がれる、畏怖と憧憬の入り混じった伝説の場所。
しかし、その試練はあまりにも過酷で、その道のりは想像を絶するほどに険しく、これまで数多の、名だたる英雄豪傑たちがその頂を目指して勇んで挑み、そしてそのほとんどが無惨に命を落としたか、あるいは精神を完全に打ち砕かれ、生ける屍となって、二度と正気に戻ることのない廃人同然の姿で帰ってきたという、魔性的な魅力と底知れぬ危険を秘めた、まさに禁断の場所。
かつて、彼もまた、夢と希望に燃える仲間たちと共にその忌まわしき塔を目指し、そして…そのあまりにも強大で、あまりにも理不尽な力の前に、なすすべもなく夢破れ、かけがえのない多くのものを失い、魂に決して消えることのない深い傷を負って、言葉にできないほどの深い絶望と共に挫折した、二度と近づきたくない、思い出すことすらおぞましい記憶の場所。
陳統は、言葉を発することなく、ゆっくりと懐から古びた、しかし彼の手の形に馴染んだ天命盤を取り出し、無言のまま卓上に、ことりと置いた。
その所作には、長年連れ添った、もはや体の一部とも言える道具への深い愛着と、同時にそれに対するどうしようもない、救いようのない深い諦観が滲み出ていた。
彼の指が、慣れた手つきで、しかしどこか、これから起こるであろう出来事を予期してか、僅かな震えを隠すかのように躊躇うように、銅鏡の冷たく滑らかな表面を滑ると、そこに淡く、そしてどこか頼りない、まるで今にも消え入りそうな儚い光と共に、彼の現在の能力値が、まるで彼の魂そのものの貧弱さと、その限界を無慈悲に映し出すかのように、冷ややかに浮かび上がる。
それは、長年修羅場を潜り抜け、幾多の死線を乗り越えてきたはずの、歴戦の遊侠のものとは到底思えぬほど低い、あまりにも低い、絶望的なまでの数値。
彼の才能の限界、そして彼が生涯、決して拭い去ることのできないであろう、深い絶望と諦観の、動かぬ証拠。
その淡く儚い光が、彼の疲れ切った、生気のない顔をぼんやりと照らし出し、その深い、そしてどこか寂しげな影を、酒場の煤けた壁に、まるで彼の人生の墓標のように、長く、そして頼りなげに落としていた。
「……お前も、とうに知っているはずだ、朱桓。この俺は、天命に、そして武運という、この世界で最も重要なものに、生まれた時から徹底的に見放された男だ。どれだけ血反吐を吐くような地道な修練を積み、どれだけ己の命を削るような過酷な戦いを繰り返し経験して、その技を神域にまで磨き上げようとも、どれだけ寝る間も惜しんで古今東西の兵法書を読み漁り、万策を巡らせて知略を尽くそうとも、この天命盤に冷酷無情に、そして絶対的な真理として刻まれた、このどうしようもないステータスの差だけは、決して、決して、決して埋めることはできないのだ」
彼は目で、そしてその疲弊しきった、しかしどこか威厳を失わない全身から滲み出る、諦観に満ちた、しかし心の奥底ではまだ何かに抗おうとしているかのような複雑なオーラで、目の前の若く、そして才能に溢れた弟子に、そしてかつての、夢と希望に満ちていた自分自身に、静かに、しかしはっきりと語りかけた。
「お前は、俺が届かなかったあの眩しい場所へ行け。その若さと、天から与えられた豊かな才能で、俺が見ることすら許されなかった、遥か高みの、想像もつかないほどの素晴らしい景色を見るのだ。その輝かしい夢を、この出来損ないの、もはや抜け殻同然の師に、どうか、どうか託してはくれまいか」
それは、老いた、夢を完全に打ち砕かれ、もはや立ち上がることすらできない軍師が、前途有望な、しかしどこか危うさをその瞳に秘めた若き将に、自らの果たせなかった悲願と、そしてこの世界の未来を、最後の力を振り絞って託すかのような、悲痛で、そしてどこか懇願するような、心の底から絞り出すような響きを持っていた。
朱桓の顔が、みるみるうちに怒りと悔しさ、そして師への深い失望と、僅かな、しかし鋭く突き刺さるような侮蔑の色さえもが複雑に混じり合った感情で、まるで血を無理やり注ぎ込まれたかのように、赤黒く、そして醜く染まっていく。
彼は、血が滲むほど強く握りしめた拳をわなわなと震わせ、まるで傷つき、追い詰められた猛獣が、最後の力を振り絞って天に向かって咆哮するかのように、テーブルを力任せに、まるで破壊するかのような勢いで叩きつけるようにして、荒々しく立ち上がった。
そのあまりの衝撃に、古びたテーブルが、まるで悲鳴のような甲高い音を立てて大きく傾ぎ、その上に置かれていた陳統の、中身の入った杯が床に落ちてけたたましい音と共に砕け散り、残っていた濁り酒が、まるで彼の心の血のように、周囲に無残に飛び散った。
「師匠ほどの達人が、天命に見放された武運がないという、ただそれだけの、そんな些細な、くだらない理由で、全てを諦め、己の魂の輝きすらも自ら踏みにじって捨て去り、この世は報われぬものだと、本気で、心の底からそう仰るのですか! かの左慈元放や于吉仙人のような、希代の方術を操り、人としての限界を超え、仙道を極めたとされる方々ですら、この世界の絶対的な、そして不可侵の理である天命には、決して逆らえぬとでもおっしゃるのですか! ……ならば俺は、この朱桓は、このあまりにも理不尽極まりない、そして残酷な天命に、たとえどんな卑劣な、人の道に外れた手を使ってでも、この身が滅び、魂が千々に砕け散り、永遠に輪廻の輪から外れようとも、必ずや、必ずや、この手で抗って見せますぞ! この朱桓の全てを、この命の全てを賭けて!」
彼の内から迸る、若さゆえの純粋で、しかしそれ故に制御不能なほど危うく、そしてどこか痛々しくもある激しい激情が、抑えきれない無言の慟哭となって「泥亀」の喧騒を一瞬だけ完全に切り裂いた。
その凄まじい気迫と、周囲に放たれる、殺気にも似た、しかしそれ以上に深い悲しみと絶望を伴った闘気に、それまで騒いでいた酒場の、修羅場慣れした遊侠たちすらも驚いて言葉を失い、ただ固唾を呑んで、この尋常ならざる、そしてどこか悲劇的な師弟のやり取りを、遠巻きに、しかし息を詰めて見守るばかりだった。
朱桓は、血が滲むほど強く握りしめた拳を、さらに固く、爪が掌に食い込むほどに握りしめると、陳統に、もはや憎悪と失望、そして僅かな、しかし心の底からの憐憫すらもが複雑に入り混じった、言葉にできないような一瞥をくれ、そして何も言わずに、まるで荒れ狂う、全てをなぎ倒して進む嵐のような激しい勢いで、酒場から出て行った。
その怒りと絶望に打ち震える、しかしどこか孤独で、助けを求めているかのように悲しげな後ろ姿に、陳統は、かつての自分自身の姿を、そして届くはずのない、あまりにも高い天の星へと必死に手を伸ばし、しかしその度に容赦なく、そして無慈悲に打ちのめされ、深い絶望の闇の底へと沈んでいった、あの日の若く、未熟で、そしてあまりにも無力だった自分自身の姿を、まるで昨日のことのように、そして決して消えることのない悪夢のように、痛々しいほど鮮明に重ねて見ていた。
残された、無残に砕け散った杯の陶器の破片と、床に汚らしくこぼれた濁り酒が、まるで彼の砕け散った、二度と戻ることのない夢と、人知れず流した幾筋もの涙のようだった。
酒場の喧騒が、再びゆっくりと、しかしどこかぎこちなく、そして先程までの馬鹿騒ぎが嘘のように重苦しく戻り始めたが、それはもはや陳統の耳には届いていなかった。
彼の心は、再び深い闇と、どうしようもない、救いようのない無力感に、ゆっくりと、しかし確実に包まれようとしていた。まるで、底なし沼に沈んでいくかのように。