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4 俺は妻達を呼びに行く

「え? 貴方もう帰ってきたの?」


 すっとんきょうな声がうちに響き渡る。妻のアゼルタの声はよく通るのだ。


「旦那様もうお戻りで?」


 メイドまでこの調子だ。


「やだもう、貴方が久しぶりに戻ってきたから、せっかく今日こそは貴方の好きな料理をリータと一緒に沢山作っておこうと思ったのに!」

「そうですよ旦那様!」

「いやいやいや今戻ってきたのは、仕事の一環でもあるんだ」

「また仕事?」


 アゼルタは軽く膨れると首を傾げた。


「仕事は仕事なんだけど…… リータ、ちょっと茶をくれ。そしてお前も知っていることがあったら聞きたいから、持ってきたら一緒に席についてくれ」

「わかりましたあ」


 リータはびしっと敬礼をしてみせる。



「何ですってメイミがそんなことになっているの?!」


 思わずアゼルタはテーブルに手を付いて立ち上がった。

 俺は慌ててカップを取り上げる。

 一緒に置いてあった小さなビスケットが皿から跳ねた。


「それで、君から見て彼女におかしかったことがなかったか、と思って」

「おかしかったこと…… うーん、このところ、ここのところの反政府組織のテロで、なかなかあのひとのとこに行けなくて何だったからね…… その前の話でいいの?」

「そう。確かうちに来たこともあったろう?」

「あ、はいありますね」


 リータも頷く。


「あの方はうちのお菓子が美味しい、といつもおっしゃるので私は嬉しいです」


 乳母の娘のリータは俺が独立した時にそのままメイドとしてついてきてくれた。

 半ば使用人、半ば妹の様なものだ。

 結婚した時に身分がどうの、と一瞬気にしたアゼルタとも良く話が合う。


「その時どうだった? 二人から見て」

「そうね、ともかくサムのことを心配してたわ。ほら、夜に火の手が上がったこともあったでしょ? そういう時に、サムがまさか巻き込まれているんじゃないかって心配で眠れなかったって」

「あとほら、潜入捜査ってあるんじゃないですか? そういうのも心配してましたよ」

「? 何の心配だ?」

「ロイ様は堅物だからそっちの捜査に回されないだろう、って奥様と言いあっているんですが、噂で聞くじゃないですか、色町の方に潜入して捜査するって。そういうので色仕掛けに引っかかりはしないか、というのもお気になさっていた様ですよ」

「あの男が?」


 無い無い無い、と俺は手をひらひらと振った。


「貴方はそう言うけどね、貴方の部隊は特に秘密が多いから不安になりやすいのよ。特にあんな神経の細いひとは」

「奥様はその点」


 言いかけたリータの頭をアゼルタは一発はたく。


「こほん、ともかく色々彼女、心配してたのよ」

「そうか…… 君にも色々俺は心配かけてるんだな」

「旦那様は殺しても死なない、って奥様は信頼なさってましたよ」

「ちょっとリータ!」

「だってそうじゃないですか。同じ乳を飲んで育ったにもかかわらず、私と違って気がついたらまあ敏捷な筋肉にすくすくとお育ちになって!」

「お前それ、誉めてる?」

「誉めてるに決まっているじゃないですか! 坊ちゃまは私の誇りでもあるんですからね! っと、すみません!」


 リータはつい出てしまう坊ちゃま呼びに思わず口を押さえた。


「……あ、そういえば」


 アゼルタはぽんぽんとしたやりとりの中で、思い出したとばかりに手を打った。


「これホント、つい忘れていたけど、こんなことぽろっと言ってたわ」

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