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3 サムは妻のことを語る②

「おい、お前確か隣の奥さんからサムさんは死んだって言われたって」

「何なんだよこんな遅くに…… ひええ、サミュエルさん!」


 その声に、向かいの部屋のご夫婦も出てきました。


「あれまああなた生きてたのかね」

「一体ぜんたいどういうことですか?」


 それでとりあえず子供が居ない向かいの方の部屋に入れてもらい、話を聞きました。


「何もかんも無いよ。あんたの奥さんはあんたが任務で亡くなった、葬儀はもう隊の方でやってしまったから自分には何もできることがない、ただこの子を立派に育てるだけ、と言って微笑むんだぜ?」

「そうそう、何か前は結構沈み込んでいたんだけど、ここ数日はもう前よりずいぶん元気で」

「何で…… 確かに俺はここのところ任務で連勤が続いて帰ることができなかったんだが……」


 隣の旦那さんは黙って首を横に振った。


「ともかくあんたが生きているなら、それはそれでいいんだが、奥さんがああなる心当たりはないかね?」


 俺は正直心当たりなどまるで無かったので、そのまま言いました。


「確かに仕事が忙しくて帰りもままならなかったのは認めますが、でもそういう職だと」

「あああんた、治安部隊だものね。確かにここのところ色々帝都はあって連勤になるのも仕方ないよなあ」

「そう言えば以前から心配してたねえ。なかなか帰ってこない、大丈夫なのか、って。心配してもわざわざ心配だからって連絡するってのも妻としてどうか、と考え込んでしまってたねえ」

「そうなんですか」

「そうなんですかじゃないよ、ねえ」

「ねえ」


 奥さん達は顔を見合わせて頷きました。


「いつも帰った時には笑顔でお帰りなさいと言ってくれたのに……」

「そりゃあ、治安部隊の旦那が無事帰ってきたら嬉しそうにするだろ」

「俺達と違って、あのクソみたいな反政府組織とどんぱちやらかしているんだからなあ。だから俺等もあんたが死んだと言われて、ちょっと信じてしまったんだよ」


 俺はもう何とも言えませんでした。


「俺はどうしたらいいんでしょう」

「とりあえず職場で相談しなよ。奥さんのことはあたし等がしばらく見てるからさ」

「ねえ」


 俺はひたすら隣と向かいの夫婦には頭を下げまくりでした。

 戻ってみると、彼女はすうすうと安らかな寝息を立てていました。

 俺はその寝床に入っていいものなのか正直悩みました。



「そしてそのまま一睡もできず、本来だったら休みだった今日出勤した次第です」

「ふむ」


 隊長は険しい顔になる――がやがて、俺の方を向いた。


「ロイよ、お前の妻は確か此奴の奥と友達だったかな」

「はい。以前はよく行き来していたのですが、ここのところ物騒で女だけで行き来が難しく」

「ではまずお前は帰って妻に此奴の奥の話をしてやるといい。女同士で知っていることもあるだろうしな。その後共に此奴の家に向かえ」

「俺が、ですか」

「此奴が居ないことになっているなら、奥は危険な外にそうそう出ることはできないだろう。買い出しとかは」

「近所の奥さん達と一緒に時間を合わせて市場に行っていると」

「そう、だからお前達が訪ねてやることだ。儂は病院に現在空きがあるかを尋ねてみる」

「びょ、病気って」

「嘘であるならそれでよし、そうでないにしても、不安定な状態にあるのは確かだろう? まあこっちも忙しくて連勤させてしまったこともあるしの。昔それで儂も…… おっとっと」


 そう言って隊長は肩を竦めた。

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