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15話 ゴブリンの住処へ


 さて、無事アッシュ山の麓まできた俺たちは、このあとの動きについて確認していた。


「ね、調査ってなにするの?」


「この山の近くでゴブリンの住処がいくつか確認されてるから、まずはそこを見に行く。余裕があったら討伐、無理そうなら規模とか詳しい場所とかの情報だけ調べる」


 ルゥフに質問され、俺は順を追って説明する。


「同時にここらに普段いないような魔物探しだな。ほら、これが魔物の分布図だ」


「ふーん、なんかおもしろそう」


 俺が渡した図を黙々と読むルゥフを横目に、俺もまた地図を見てゴブリンの巣の場所を確認する。場所は数か所、そう遠くない所だ。今日中に全部確認できそうだな。


「よし、じゃあまず…ここから西にちょっと進んだとこ、結構近くだな。そこからいこう」


「はーい」


 互いに場所を確認し、荷物を整理して再び歩き出す。それにしても景色がいい。不穏な前兆が隠れているとは全然思えないほどだ。


「ん? あれかな」


 俺たちが魔物の痕跡を探しながら歩いていると、それらしき小さな洞窟が見えてくる。付近の木を見ると、幹に錆びた剣が突き刺さっている。ゴブリンの縄張りの印だ。


 ここらは他の魔物や人間があまりいないため、ゴブリンもわざわざ他の魔物のマーキングを偽装しないらしい。


「この洞窟が一つ目のポイントだな」


 俺は松明型の魔道具を出し、洞窟に入る準備をする。地図によればそれほど広くないはずだが、念には念を入れなきゃな。


 ギルドから支給された地図なので、ある程度の正確さは保証されるのだが、逆に言えばある程度しか保証されない。頼りすぎると足をすくわれることもある。


「んー、でも、ここなにもいないよ?」


 と、俺が洞窟に入ろうとすると、ルゥフがそんなことを言い出した。


「いないって…そんなことわかんのか?」


「えっと、うん。くんくん、てやっても匂いしないしー、音も聞こえないのでー」


「匂い…? 音? 獣人ってそんなことできんの?」


「え、知らなかったの? 獣人はー、耳も鼻も人間よりずっといいんだよ?」


 便利だなぁ、獣人って。強いし、探索にも役に立つときた。おまけに加護を持ってる奴もいるらしいし。迫害なんてやめればいいのに。


「ふーん、ま、何か残ってるかもしれないし、見るだけ見てくるよ」


 俺はそういって洞窟の中に入る。入口から少しだけ進むと、ぽっかりと開けた空間にでた。他に道があるわけでもなく、地図にある通りの小さな洞窟だ。


 藁のようなものと動物の骨のようなものがいくつか転がっているが、最近までゴブリンが生活していたような跡は見られない。

 それに、ルゥフも言ってたが、ゴブリンが住んでいたにしては匂いが薄すぎる。どうやらかなりの間ここは使われてないらしい。


「変な魔物の痕跡とかもないな。ここはバツ…‥っと。よし、次は‥‥」


 洞窟を出てから地図に印をし、俺たちは次の目的地に向かい始めた。


──────────────────────────────────


「ここもバツっと。これで最後だな」


「なーんもいなかったね」


 その後、俺たちは他の住処もくまなく調べたが、結局ゴブリンを追い出した魔物の正体は掴めずにいた。

 土砂崩れなどが起きた形跡もない。ゴブリンが巣を空けるくらいだから、何もないということはないはずなんだが──


「──あれ? なんだろこれ」


「ん? どうかしたのか?」


 俺が悩んでいると、ルゥフが帽子をとり、耳を立てた。確かめるように鼻をひくひくさせ、森の中の一点を見つめている。


「知らない匂い‥‥魔物‥‥?」


「…よし、行ってみよう」


「ん、ついてきて」


 ルゥフに連れられ、慎重に森を進む。進むにつれ、なるほど、俺でもわかるくらいに何かの匂いがする。

 獣臭に混じり、汗のような。

 匂いはだんだんと濃くなり、そして、


「──!」


 見えた。筋肉と脂肪に覆われた、まるで、岩のような巨体に、鼻が曲がりそうな悪臭、猪のような声。それはまさしく──


「──オーク‥‥!」

 



 

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