13話 勧誘
「か…加護を強化する加護!?そんなものがあるんですか!?」
「エイサっていう人によるとそうらしくて」
エイサの研究所に行った翌日、俺はギルドで、遂に判明した加護のことを報告していた。効果の範囲とか大きさとか、まだわからないことも多いが、まあその辺はこれから色々試していけばおのずとわかっていくだろう。
「エイサさんが言うなら間違いないでしょうね。驚きです」
やはり彼女はそれなりに、いやもしかしたらかなり名の知れた研究者らしい。俺はどうにも都会の常識に疎いな。もっと積極的に情報を集めないと。
「よお!加護が判明したんだってな!どうだった?」
いったいどこで聞いたのか、ギルドに入ってきたジェイが話しかけてくる。判明したのは昨日だというのに、噂が回るのが速いな。というか速すぎるな。ちょっとこわいな。
「以前から予想してた通り、加護を強化する力だったよ。これで少しは皆の役にたてるな」
「やっぱそうだったか! じゃあやっとパーティー入れるな! どのパーティー入るか決めたか?」
「パーティーか…」
俺はギルドの隅っこに座ってるルゥフの方を見る。俺に気づいた彼女が、はにかみながら手を振るのが見えた。
「俺も自分でパーティー作ってみようかなって思ってるんだ」
「へえー、いいじゃんか!お前ならきっといいパーティー作れるさ」
「はは、ありがとう」
‥‥そういえば今さらだがパーティーってどうやって作るんだ?なんか申請とか必要なんだろうか。気になった俺が受付嬢さんに聞こうとしたその時。
「おい」
「ん?」
後ろから俺に声がかけられる。
聞き覚えのある声に俺が振り返ると、そこに立っていたのは──
「お前、Sクラスの加護持ちなんだってな?」
「あー、あなたはたしか──」
「へ、聞いて驚け、俺様はなんとあの超有名なS級パーティー『紅蓮の刃』のリーダーにして最強冒険、ソードレット様だ」
そうだそうだ思い出した、この前ギルドで騒いでたやつらのボスか。
しかしまあ自己紹介だけだというのに高圧的な人だな。自分が世界の中心にいるとか思ってそうな態度だ。
「それはそれは。私はサイといいます、どうぞよろしく。それで、何か御用ですか?」
「特別に、お前を俺様たちのパーティーに加えてやろう。といってもあくまで仮入隊であって、使えなければすぐに追い出すがな」
「いえ、結構です」
「‥‥は?」
「じゃあ僕はこれで。是非ともまたお会いしましょう、ソードレットさん」
「おい!待て!」
‥‥はあ、めんどくさいのに目をつけられた。まさかS級パーティーである自分の勧誘を断るとは思ってもなかったんだろうが、冗談じゃない。
いくら実力がある奴らとはいえ、こんな露骨に嫌な奴の仲間入りしたら俺までギルドの皆に嫌われるじゃないか。俺は他人の目を滅茶苦茶気にするタイプなんだ。
「お、お前分かってるのか!? こんなチャンス二度とないぞ! 世間知らずの田舎者が、活躍できるとでも思ってるのか!?」
随分な言いようだな‥‥。まあ実際自信ないから図星なんですけどね。
それにしても、最強を自称するくらいならわざわざ俺を勧誘する必要もないんじゃないか? 実は戦力不足だったりするんだろうか。
「お気遣い痛み入ります。ですが、僕は自分でパーティーを結成したいと考えてまして。ですので、せっかくのお誘いですがお断りさせていただきます。いや、申し訳ありませんね」
「ふん!そうか、分かった。」
お? わかってくれたのか。意外と物わかりがいいのか?
「お前がどうしようもない馬鹿だってことがな! 後で後悔しても遅いからな」
「ええ、後悔しないよう頑張ります」
俺がそう返すと、ソードレットは怒りながらギルドを出ていった。
うーん、嫌われものとはいえ、力のあるパーティーのリーダーに敵視されたのはちょっと失敗かなぁ。
まあ仕方ないか。断る以外の道はなかったしな。
それにしても、最初からこれじゃ、先が思いやられるな。