表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界でも騒がしい所は苦手です。  作者: 花鯨
プロローグ
1/15

プロローグ.01

初めての投稿です。


友達がやっているのを知り、興味本位で書いてみました。


せめて仲間が出来てクエストをこなすくらいまでは書こうと思います。


よろしくお願いします。




 真っ白な世界で、鹿島みろ子はうずくまっていた。


 ここが何処かも分からず、今が何時なのかも分からず、ただ眩しさから逃れようと目を覆っている。


 みろ子の眼前には巨大な光を放つ球体が鎮座しており、その世界を真っ白に照らしていた。

 地面から反射した光は覆った手のひらとまぶたを通してもなお明るく、痛い程に自分の目へ迫ってくる光はまるで自分の体が透けている様に感じられた。

 「………助けて………」


 みろ子は思い出していた。ここへ来る直前も光を全身に浴びていた事を。

 一日中の長雨が続いた放課後、すっかり水浸しになった狭い道路でみろ子は自転車を滑らせ、バランスが取れずに車道に転がってしまった事。

 そして目の前に猛スピードで迫り来るヘッドライトが見えていた事を。


 冷やりとした感覚がスカートの裾から流れ込んでくる。いつの間にか辺り一面は水浸しとなっており彼女の周りに波紋を現していた。

 思わず体をのけ反らせたが、水溜りほどだった水面は既に腰まで来ており、ずぶずぶと水かさを増していくと彼女の自由を奪っていく。


 もうすでに諦めの境地でみろ子は脱力していた。その水は彼女の身長まで迫り、口から流れ込んだ際にむせてしまったせいで息を吸い込むことも出来ないまま彼女の体は、水底にゆっくりと倒れ込んだ。


 今まで死にたいと思った事が無い訳ではない。むしろ何かある毎に周りの奴も自分もズタズタに引き裂いて悲惨に死んでやろうかという妄想に日々励んでいる程だった。

 この状況が何も望ましい結末だという事ではなかったが、家族や同級生に対する煩わしさもなく、誰かに迷惑を掛けるでもなく静かに死ねるというのは、彼女にとってある種のハッピーエンドとも言えるものだった。




 あれからどれくらい経ったのか、とうに肺の中に酸素はないはずだが一向に苦しさや目眩がやってこない。

 水の中だとあの光はかなり緩和されるようだ。ゆらゆらとまるで海藻の様に揺れる自分の髪を視界の端に捉えながら、みろ子はそんな事をぼんやりと考えていた。


 突如、身体に違和感をおぼえる。胃がひっくり返る様な嫌な感じ、そして何かが身体にのしかかるような感覚。

 みろ子が慌てて振り向くと、さっきまで横たわっていた地面は既に離れ始めていく。

 藁をも掴むように慌てもがくも、その体は水の塊と共に空へと落ちて行き、嫌いなジェットコースターを思い出す重力の圧に彼女は引きつけられていた。

 ぐるぐると巡る視界の中で一瞬、彼女はあの光の球体を捉えた。彼女の体や水が猛スピードで落ちているにも関わらず、球体は遠く離れたかつての地面であった場所にくっつくように固定されたままである。


 尚も変わらず光り続ける球体は、まるでみろ子を見送るかのような、さもなくば見放すかのように一際強く輝いたあと、ぽっつりと消えてしまった。


 光が消え、真暗闇となった世界の中で落下し続けた彼女はで不思議な音を聞いた。周りの水がバラバラに散水し、無数の水滴となったその中で隙間を縫うように耳に入ってくる細やかな音だった。

 思わず音のする方を振り向く。それは確かに鳴き声だった。一つではない。雁の群れのような、何羽もの鳥が楔型に

列を成して飛んでいた。驚いて目を見張ると同時に、彼女の世界は一変した。


 まるで自分を中心に世界が造られていくかの様だった。


 暗闇だった場所は様々な彩りを魅せる果てしなく続く大地となり、またこの世界を覆う巨大な天盤のような大空となった。

 ぐるりと体を動かしてその世界を見渡してみる。

 大地は木々がうっそうと生茂る森や水平線まで延びる海、のみで荒く削り上げたかの様な山脈が連綿と並んでいた。

 空は重く雲がかかっていたが悪天候ではなく、遠くの空では千切れた雲の合間から優しげな光陽が大地を照らしている。


 みろ子はその二つの大自然に包まれる感覚を全身に受けながら、かつて自分を溺れさせた水と共に雨水みたく地面へと落ちていった。


 地面が近づくにつれ、みろ子は急激な眠気に襲われた。

というより気絶に近いもので、抗う術もなく彼女の体は真っ逆さまとなり自然と目蓋が重くなっていく。薄ぼんやりとした視界で彼女は遠くの大地にあるものを見つけた。


 白く、整った形をしていて荘厳さを感じさせる。トゲの様な塔がいくつも等しい間隔で並んでおり、ぐるりとそれを囲っていた。

 「お城だ。」


 それが彼女がこの異世界にやってきて、一番最初に呟いた言葉だった。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ