順和13年10月17日 4
(1)はx=3が方程式を満たすのは暗算でわかるだろう。(2)も2,4,8,16,...がわかれば答えはx=4と出る。(3)はx=1が明らかな解である。(4)も、x=2とわかるはずだ。
全て見つけるのは無理だとしても、1つなら簡単に見つかった。私は問題を30秒で解いてシャープペンシルで答えを書き込み、残りの4分半を睡眠に費やした。
「はい、終わりです。後ろから前に、自分のを上にして回してください」
宮崎先生の合図に従って、私はテストを前に送った。そしてクリアファイルからプリントを取り出し、授業を聴く態勢を整えた。
先生は、黒板に方程式2x+6=4x+8を書き、話し始めた。昨日「時間がある人は家で考えてみてくださいね」といって宿題(強制ではないが)で出された問題だ。
「教科書には”移項”なんて訳の分からない言葉が書いてありますけどね、単に両辺に数字を足す・引く・かける・割るしても変わりませんよ、っていう当たり前のことを難しく言ってるだけなんですよ。あんなの無視して大丈夫です」
そういいながら、彼は両辺に-2x-8と書いた。
「両辺から2xと4をひくと、-2=2xとなるから、両辺を2で割って答えは-1だ。という簡単な話なんですよ」
彼は黒板を拳で勢いよくたたきながら強調する。
「どの教科書見ても移項だとかわけわからん事言ってて、全く、だめですよ~」
先生は、上半身裸になってシャウトするお笑い芸人のようなトーンで話す(本人曰く、「真似ているつもりはない」とのこと)。みんな笑っているし私も笑ってしまったが、それでもわかりやすい、ということで、生徒たちの間では高く評価されているようだ。
私は板書を見て、何をするべきか(両辺からうまいこと式・数を引く)ということをメモった。
数学の授業となると時間が光のように早く流れていく。50分はあっという間に終わった。先生は、時間のある人は以下の問題を考えてくださいね、といって以下の問題を書いた。
0.4x+1.3=2.7+1.1x
私はその問題をプリントの片隅にメモした。つぎは家庭科だが、授業は教室でおこなわれるので寝れる。先生も起こさないタイプなので、私は10分休みに、悪びれるそぶりもなく眠りについた。
「ねえ、しふぉん、起きて!」
誰かが私の背中をたたく。変な夢を見ていた気がするが記憶にない。せっかく寝てたのに、起こさないでよという気持ちが強かった。
起きて軽く伸びをし、後ろを振り向くと、万咲ちゃんがたっていた。彼女は掃除(当番が曜日で振り分けられている)のようだ。
「もう15時40分だよ、帰りのホームルームも終わったよ」
私は急すぎて、頭がついて行かなかった。
授業中に爆睡して、気が付いたら授業が終わっていた、という経験がある人はいるだろう。また、2時間目に寝て気づいたら4時間目だった、という人もいるかもしれない。しかし、気づいたら帰りのホームルームが終わっていた、という経験をした人はなかなかいないだろう。
「しふぉん、寝すぎでしょ」
亮太くんは横で笑う。私は、うるさいな、と言いつつも、確かに寝すぎだということは認めざるを得なかった。
18時半にA駅近くのビル(H駅前ビルという名称だが、H/駅前ビルと区切られる。H駅/前ビルではない)の2階に集合することになっている。そこで何か重要な発表が行われるとのことだ。
今は16時前だ。ここからA駅までは徒歩で5分。少しばかりどうするか考えたのだが、一回家に帰ってから、再び自転車でA駅まで向かうことに決めた。




