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デビューシングル「希望の花言葉」1

目が覚めた。スマホで時間を確認すると11時30分。15時間も寝たのか。流石に寝すぎちゃった。そう思って1回の食事場所のテーブルに向かう。親は共働きなので今は家にいないが、いつもの朝ごはん、ピーナッツバターが塗られたパン、ゆで卵、キウイが用意されていた。私は適当に食べ、夏休みの宿題をやった。


ひと段落ついたところでLINEを確認すると、なっきぃが「移動手段の連絡が郵送で届いてた」と発言していた。

郵便受けを確認すると、1通の封筒が届いていた。中には8/3付で「8/6 9:00 マネージャー高橋の車が家の前まで参ります 昼食は各自持参」といった趣旨が書かれている手紙が入っていた。

マネージャーは面識のない人だったため一瞬不安を覚えたが、なっきぃも同じような手紙が届いていたため気にならなくなった。


まだ私たちは無名だけど、今後名前が知られていくことになるかもしれない。自意識過剰かもしれないけど、電車の中でファンに囲まれることがあったら大変なことになる。そう思うと、事務所の方が適切な移動手段を手配してくれたことに感謝の意が湧いてきた。

私は親にこの手紙の写真をLINEで送った。


今日は、オーディションを受ける前とほとんど変わらない平凡な1日だった。昨日は早く寝すぎたけど、今日はそこまで疲れていない。11時に床に就き、そのまま寝た。


目が覚めたのは5時45分。もう太陽が全部顔を出していて、外はもう明るい。2度寝ができないことはないが、全然眠くない。カーテンを開け、太陽光を体に受けた。


母親はもう起きてる。下の階から朝ごはんを用意する音が聞こえる。私は今日届く予定の音源を楽しみにしながら、日課である筋トレを軽く行った。


いつも親は7時に私を起こす。あと30分ほどだが、特にすることもないのでベッドでLineを確認して時間を潰した。


「ご飯できたよ〜」気づいたら7時になっていた。私はベッドから降りていつも通りの朝食をとった。親は私の活動についてあまり追求するつもりはないようだった。


食べ終えて洗面所に向かう。まず私は髪が濡れないように眠気覚ましのシャワーを浴びた。軽く寝癖を整え、髪の毛をくしでとかす。ショートヘアだから、手入れにそこまで時間はかからない。長いといろいろ不便だしね。メイクはどうしようか考えたが、他の四人も普段はしていないみたいだから別にいいや、ってなった。今日は舞台上で何か発表する、ということもないわけだし。


時間は8時20分。母親ももう仕事に行く時間だ。母は弁当を残し、「忘れないでね」と私に念を押した。


持ち物を確認し、軽く水を飲んでゆっくりしているともう9時になっていた。しかし、家の前にまだ車は来ていなかった。遅いな、と思っていると3分ほどしてそれと思しき黒塗りの車が来た。車から40前後と思われる男性が降りて自己紹介を始めた。

「はじめまして、鈴木紫保さんですね?マネージャーの高橋と申します。これからよろしくお願いします」


「こちらこそよろしくお願いします」

私は返事をし、車の後部座席に乗り込んだ。車は動き、目的のA駅前ビルまで向かい始めたようだ。


「今日の予定は、音源の確認・練習になります。15時くらいに解散となる予定です」

高橋さんはスケジュールを説明してくれた。他にも自己紹介や軽い世間話をした。40分ほどで目的地であるビルまでたどり着いた。私は5人の中で、家からビルまで最も遠いようだった。

10時前。出る時間が違った可能性はあるが、もう他の人たちは集まっていた。


到着してすぐ、プロデューサーが話を始めた。

「ヘリアンサスガールズの1stシングルにあたる歌は、『希望の花言葉』『ナツアオソラ』『道端花』3曲です。1週間で作られたためまだアレンジが完全ではないですが、とりあえずどんな曲なのか、イメージは決まっているので聞いてみてください。あ、歌詞は今すぐには覚えようとしないで結構です。その内自然に覚えていくと思うので」


そう説明している間にスタッフが音楽プレーヤーとヘッドフォンを持ってきた。私はヘッドフォンを装着し、3曲とそのオフメロディ版を順番に流していった。


1曲目、希望の花言葉。歌詞は、これから新しい人生が始まる私たちを励ましているようなものだった。2日前に決まった「ヘリアンサス」という言葉が出てくるので、本当に割と急ピッチで作られたんだね、と思った。所謂「応援ソング」と言われるような曲だった。少し歌うの難しそうだけど、大丈夫かな、と不安になってしまった。


2曲目、ナツアオソラ。さっきの曲と若干被るところがある気がするが、これも応援ソングだった。こっちにはユニットを象徴するような特徴的な言葉は入ってなかったが、さっきのより歌いやすそうだな、と思った。音域もあまり広くないし。


3曲目、道端花。これはたぶん、私たちの存在に気が付いてくれたファンの歌、と言う立場のものだろう。2曲目ほどではないけど割と歌いやすそう、という印象だ。


とりあえず1回聞いてみた印象としては、「希望の花言葉」を本気で練習しないと大変なことになる、だった。他の2曲はそこまできつくない。そういう意見もって他の4人に話を聞いてみたけど、みんな同じような印象だった、って言ってる。

私は「なんとかなるよ、頑張りましょう!」といって、5人の指で星を作った。


「後日マネージャーの方からmp3の音源が届きます。アレンジは変わる可能性が高いですが、メロディラインは変わらないのでイメージをつかんできてください」


歌のレコーディング自体は今日始まるわけではないし、ライブもそんなすぐある、ってわけじゃない。9月中旬の日曜日までに完璧になってればいい。そう思うと、気持ちが若干楽になった。


「振り付けもありますが、まだ決まっていません。8日にもう1度ここに集合していただきます。その時に動画を見せ、練習を始めるので把握お願いします」


明後日か。私はダンスにはあまり自信がないけど、何とかなると楽観的に見ている。


「そして8日の午後、PVの撮影を行います。ダンスではない日常的なパートです。練習風景を公式ツイッターに載せるかもしれないので理解お願いします」


なっきぃが、公式Twitterってあるの?と思ってIDを聞いていた。そうするとプロデューサーは画面を見せてくれた。アイコンとヘッダーはヘリアンサスガールズのロゴだったが、プロフィールは名前だけで私たちのTwitterアカウントへのリンクは張られていなかった。私は5人のTwitterアカウントを載せてもらうように頼んだ。


「了解しました。後日マネージャーの方にTwitterのIDをメールで送ってください」彼はこう伝えた。


付け加えて、

「本日の午後は撮影場所の下見となります。今は11時過ぎです。少し早いですが昼食をとって、午後の準備をしてください」


私たちは、撮影を楽しみにしながら楽屋で弁当を食べた。


なお、当小説に出てくる3曲、いずれも実在します。

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