順和13年10月16日 4
「みなさん、来てくれてありがとうございます。私は鈴木紫保って言います。『紫を保つ』とかく『紫保』の色はもちろん紫、しふぉんです! 身長169cmです。背が高い人だって覚えてください」
観客からは「しふぉん!」コールが聞こえてくる。私はマイクを横にいるそかかに渡した。
3人が挨拶をしている間、私はセットリストを思い出していた。ナツアオソラ→希望の花言葉→道端花→(アンコール)→ナツアオソラ(合唱版)。うん、間違えてないね。確認跡会場を見回してみるが、観客は約100人弱といったところだろうか。
3人ともそれぞれのあいさつを行った。時間は1人30秒ほどだ。その後、かわみんは話した。
「それでは1曲目、ナツアオソラです!」
彼女がそういうと音源が流れる。私たちはダンスとともに歌い始めた。
「梅雨が伸びて 7月も」
「土砂降りでも 明日は晴れるよ」
「雲はなく どこまでも すける夏の青」
「僕は 空へ行く」
「そのうち空晴れるなら」
「だけれど 迷わずに 走り出そう」
「たとえ この声が 途切れても」
「僕のところへ」
「声を出して 叫べば」
「曇りの この空も いつか 晴れる」
「きっと 君と僕 永遠に長い距離」
「僕ら空へ行く」
踊り自体はハードだが、その分歌う箇所は少ない。割とやりやすくなっている。それでも簡単ではなく、私はすでに汗をかき始めていた。歌う場所ではマイクを口の前に持っていくが、それ以外では左手で持ったままにしている。
ダンス中は考えている余裕は、全くとは言わないが、あまりない。ただ覚えているのをひたすらに踊るだけだ。
観客席は暗いが舞台は照らされており、サイリウムがはっきり見える。紫色の物を振ってくれている人もいる。誰か一人の力になってくれたら嬉しいと思っていた私は、今のダンスを精いっぱい頑張ろうと思うようになっていた。
歌い終えると、会場から拍手と喝采が聞こえてくる。10月とは言えまだ暑いので、私はポケットにしまっていた塩分タブレットを補給し、次の希望の花言葉へ心を構えていった。
かわみんは続いて話す。
「ここで突然ですが質問です。ここA市に住んでいる人って、どのくらいいますか?」
周りを見てみると、会場の9割以上の人が手を挙げている。どうやら市外からきている人はかなり少ないようだ。
「それでは、逆に市の外から来てる人ってどのくらいいるんですか?」
手を挙げているのは6人だ。かわみんは舞台を降り、その人たちにどこから来ているのか聞きに行った。6人中4人はT市、2人はK松島市から来ているようだ。どちらも隣の市のため遠いというわけでもないが、ココA市市民から構成されるアイドルのライブに違う市から来てくれるのは嬉しかった。
彼女は舞台に戻り、「つぎは2曲目、希望の花言葉です!」と言った。スタッフの方は希望の花言葉の音源を流す。これはナツアオソラほどダンスは激しくないが、その分歌が難しくなっている。私は今までの練習を信じて歌って言った。




