順和13年8月17日 5
スマートフォンの時計は11時40分を指している。2人が戻ってきた後、もう1度レッスンの30分が終われば昼ごはんの時間となる。携帯をポケットにしまって漫画を読んでいると、かわみんが「2人とも、ラストラベンダーってもう読んだ?」と私たちに尋ねた。
私は、何度も話を聞いているうちに、まだ読まないという謎の決意のようなものが揺らいでいた。まだ読んでいないが、いつか買って読んでみたいとも思っている、と答えた。なーなんは漫画にあまり興味がなく、こないだラインで話してたね、くらいの認識だったようだ。
私は、1巻を立ち読みして、最初の方のストーリーだけを把握した、ということをかわみんの目を見ていった。漫画において、主人公として描かれているのは福井功くん。16歳の高校生だ。彼はもともとアイドルを目指していたわけではなかったが、友達に勝手に応募されてしまいオーディションに行ってみたら、もののはずみで合格してしまった。もともとそのアイドルは6人組。グループのユニット名は、舞台の土地の花であるラベンダーにちなんだ、「セッティエーム・ラヴァンド(Septieme Lavande)」。フランス語で「7つ目のラベンダー」を意味する。ラベンダーの花を背負った少年たちが、7人目を探して世界を旅する物語だ。
今年末にアニメ化するらしいという状況を聞いているので、アニメ化されてから見ようかな、と私はもともと考えていた。しかし、かわみんが結構推してくる上、私としても個人的に「セッティエーム・ラヴァンド(7つ目のラベンダー)」に少し引っかかっている部分がある。漫画は今から2年前の順和11年に出たものだから、言ってしまえばただの偶然、あるいはただのこじつけなのだろうけど、それにしてもよくできているとしか思えなくなっていた。
私は、今度読んでみよう、と本格的に思い始めていた。ネット上には漫画をアップロードしている違法なサイトもあるとは聞いているが、私はそのようなのを利用するのはどうしても好きになれないため、クラスの男友達からリンクは送られていたが結局開かなかった。
ラストラベンダーについて気になっていることをいろいろ聞いていると、もう12時5分になっていた。なーなんは、私たちの話についていけないようで、1人でゲームをやっていた。何をやっているのか聞いてみたら、数年前に出た、隣り合う同じ色のオブジェクトをつなげて消すゲームのようだった。私も昔やっていたのだが、すぐ飽きてしまい消してしまった。なーなんいわく、暇つぶしにやるにはちょうどいいゲームらしい。
かわみんはまだFotFをプレイしているらしい。私は、それももうあきてしまっていたため、何か面白いゲームはないのかと探していたが、なかなか見つけられずにいた。彼女は色々ゲームをやっているらしく、おすすめ他にもあるから教えてあげる、と言ってくれた。しかし、すぐにそかかとなっきぃが戻ってきたため、「ダンス終わったら後で話す」ということになってしまった。
私たちは、12時40分までのレッスンで、2番のBメロとサビの練習を行った。Bメロでは、「ココロのドア 開いた先」で、心臓の前にドアノブをつかむイメージで手を当てて、1階ノブを回し前に突き出す。「何があるかわからない」で、右を向きながら手をぐるぐる回し、上に上げる。そして、上を向きながら1回手をたたく。「だけれど 迷わずに 歩き出そう」では、左で同じことを行った後、右足を出して強く踏みしめる。サビの振りは、Aメロのと変わらない。ここもフリ自体は難しくないのだが、「希望の花言葉」や「道端花」のダンスも覚えなければいけないのが難しい。
ナツアオソラに追われて、まだ「道端花」のダンスは確認していなかった。そもそも曲自体がわりとゆっくり目の曲なので、そんなきついふりではないだろう。私は勝手にそう予想していた。希望の花言葉も、少しずつでいいから覚えていかなければいけない。私は、どうしようもなく不安に迫られていたが、何とかなるだろうという思いもあった。
レッスンが終わると、私たちは部屋へと戻っていった。




