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順和13年8月16日 7

 道端花は、多分ファンの立場から私たちを歌っているような、そんな世界観なのだろう。そんなことに思いをはせながら、私は歌った。もしかしたら、自分がファンの立場として、他の4人とあと私ではない誰かからなるこのグループを推していたのかもしれないのだから。そう思うと、みんなのためにまじめに練習しなきゃ、っていう想いが頭の中に浮かんだ。私は、お茶を飲みながら、練習をつづけた。

 「道端花については、そこまで問題ないと思います。あとは、本番までこの調子を落とさぬように練習していけば大丈夫でしょう。ナツアオソラの録音が1週間以内と迫っております。これと希望の花言葉の練習に重点を置いて、これからはやっていきたいと思います」

 武田さんはこう言って、ナツアオソラの練習に切り替えていった。

 ナツアオソラは、割と陽気なメロディーの歌なので、歌っていると気分が高揚してくる。私たちは、楽しそうな感じで、それでも真剣に歌った。 

 ナツアオソラを歌いながら、私は次のレッスンについて、頭の中で何となく思いを巡らせた。練習は、日付は決まっているが何曜日とかではなく、5日に3回とかそのくらいのゆるい感じで埋められていた。明日8月17日土曜日はダンスのレッスンがあって、18日は部活がある。部活は火水金日とあるので、次の全く何の予定もない日は、19日月曜日となる。長い夏休みもあと10日で終わりで、26日からは学校がある。もちろん学校の扱いで、ライブや活動上変えられない用事があるような日は公欠にはなるので、その辺についてはあまり心配はしていない。

 考えながら歌ったので、どうやら武田さんも、私の歌い方が何か変だとは思ったようだった。

 「すみません、意識がどこかに飛んで行ってしまってました」

 大丈夫ですか、と聞かれてしまったので、私はこう答えた。武田さんは私に話す。

 「人間の集中力って、本来30分も続かない、と言われているようです。ここまで長くやってると意識がどこかに行ってしまうのも無理のない話ですが、あと少しなので集中してください」

 私たちは、1時間真剣に歌い続けた。時刻は5時を回っている。武田さんは言った。

 「今日のレッスンは、ココで終わりになります。家でも練習できると思うので、時間があればやっておいてください。あと、しふぉんさんはお茶の本質について調べてきてください」

 私たちは、最後の一言に笑いながら、ありがとうございます、と彼女に感謝した。最初の集合室に戻ると、長嶋さんが立っていた。

 「最後に、5人で3曲を1回ずつ通して終わりにしたいと思います。歌詞を見てもよいので、今日教わったことを最大限発揮できるように歌ってみてください」

 長嶋さんはこう言って、希望の花言葉のオフボーカルバージョンの音源を流した。


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