ナツアオソラ 練習
8月11日。今日だ。正直来てほしくなかった日がついにきてしまった。外を見るともう日は上っている。私は不安に駆られながら朝ご飯をゆっくりと食べた。
いつも通り髪のセット、軽い化粧をするが、どこか普段通りと違うような気がした。何が違うのか説明はできないけど、いつもの自分より生気がないような気がした。
いつも通り日課の腹筋、スクワットを10回ずつ行い、マネージャーさんがくるのを待つ。10時からレッスンということで、高橋さんは9時前にここに来ることになっている。私はTwitterを確認しながら、彼がやってくるのを待った。
予定通りの8時50分、1台の車が家の前に留まった。私は、弁当と持ち物を持って重い足取りで車に乗り込んだ。特にマネージャーさんとは何も話さずに駅前のいつものビルまで向かった。
9時25分、駅前のビルに到着する。なーなんが同タイミングで来ていた。私たちは2人で不安を吐きながらいつもの事務室まで向っていった。もうかわみんは到着していたが、なっきぃとそかかはまだ着いていないようだった。
私たちは10時になるまで、3人で歌を通して練習することにした。2人とも、歌にあまり自信はないらしい。自分だけではないと心に言い聞かせてはいたが、正直直接聞くことによってかなり安心することができた。
10分程すると、そかかとなっきぃが同時に入ってきた。レッスンが始まるまであと20分ほどある。私たちは、とりあえず1回通してみることにした。なっきぃのスマートフォンでオフボーカル音源を流し、それに合わせて5人で歌ってみた。
1回の通しが終わった後、私たちは大きくため息をついた。
「このままで大丈夫なのかな」
そかかが、4人に聞こえるように独り言を言った。みんなの前では口にしていなかっただけで、私も同じことを思っていた。残る3人も同じことを思っているようだ。
「まだ本番じゃないし、レッスンも始まってないから、たぶん大丈夫でしょ」とかわみんがフォローしてくれた。確かにまだ録音も始まっていない。その事実を再確認し、少し安堵の息が漏れた。
気づけば10時。プロデューサーと30代後半位の男性の2人が入ってきた。
「みなさん、おはようございます。今日は録音・練習となります。今回の結果でセンターが決まるとかそういうことはないので気楽に歌ってください。私の横にいる方が今回指導者となる長嶋是勧さんです」
彼の紹介で、長嶋さんは挨拶を始めた。
「初めまして。長嶋と申します。今回『ナツアオソラ』『希望の花言葉』『道端花』の指導者を務めさせていただくことになりました。宜しくお願いします」
私たちは、こちらこそよろしくお願いします、と挨拶し、軽く自己紹介をした。




