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ヘリアンサスの希望  作者: ソリング J
第3章 新型コロナウイルス発生後
222/261

順和16年9月12日〜 1

 文化祭も終わり、ようやく高校生活に日常が戻ってきた感がある。ようやく涼しくなってきたので、私は自転車で高校まで向かって行った。


 校舎に入り、自分の教室まで入る。ほぼ全員が来ていたが、大翔くんがまだ来ていないようだった。彼はいつも早めに教室に来ていた記憶がある。先生が重い足取りで教室に入ってくる。そしてホームルーム中、先生が重要な話がある、と言って話始めた。


「向坂さんなんですが、今日自転車で登校中、信号無視した車と交通事故を起こしてしまい、今病院に運ばれているという連絡が親御さんから入ってきました。今のところ意識不明とのことです」


 教室が静まり返る。私は頭の中が空っぽになってしまった。


 ホームルームはそのまま終わった。私は何をする気も起きなかったが、とりあえず、隣クラスに固まった元吹部仲間の3人にはそのことを話した。


 3人とも、私と同じように、彼が無事に回復することを信じているようだった。私は、教室に戻って授業を受けた。


 1時間目も2時間目も何も頭に入らなかったが、3時間目はホームルームの先生の授業(数学)である。彼は授業を開始してすぐに話し始めた。


「向坂くんの話ですが、まだ意識を取り戻してはいないようです。ただ、一命は取り留めたようで、ここから急にということはなさそうです」


 私はとりあえず、一命を取り留めたということに安心した。私は、できるだけ早く回復することを祈った。


 1回病院で彼に会いに行きたい。自分はそう思いながら数学の問題を解いていった。


「この問題はsin x =Yとおいて単位円との交点を見る方法が使えるのですが...」


 先生は話し続ける。自分は大翔くんの事故のことで頭がいっぱいだった。私は彼のことを胸の中に置いて数学の問題を解いた。


 4時間目・5時間目・6時間目もずっと気になってしまう。私はとにかく無事を祈り続けた。


 仲がいいかどうかに関わらず無事を祈るのは変わらないが、大翔くんは特に仲がいい男子の1人だ。私たちは放課後、吹部仲間の3人と神社の方まで向かって行った。


 私たちはお賽銭箱に1人ずつ10円玉を入れ、彼が高校に復帰できますように、と祈った。神様がいらっしゃるならばどうか彼を救ってください。私はそう強く念じた。


 私はそのまま重い足で自転車を漕いで家まで帰って行った。





 火曜日、水曜日、木曜日。彼が良くなったという情報は入ってこなかったが、少なくとも悪化はしていないようだった。私は、できるだけ早く治りますようにと願い続けた。


 そして金曜日。彼は意識を取り戻したようだ。私たちは学校が終わったあと、彼の病院までお見舞いに向かって行った。


「大丈夫?」


 彼は問題なく話せるようで、大丈夫だよ、と言ってくれた。私は、お大事に、と声をかけた。


 実際のところ、後遺症がある程度残ってしまうこともあるらしい。彼は体が重いようではあるが、そこまで重度の後遺症はなさそうだ。私はとりあえず一安心した。


「高校に戻ってくる日を楽しみにしてるから、リハビリ頑張ってね」


 真鈴ちゃんは彼にそう言った。彼は、ありがとう、と言っていた。


「差し入れとして漫画持ってきたから、よかったら読んで」


 大翔くんは最近流行っている漫画であるRainarrowを持ってきていた。弓道部を舞台にした漫画だ。私は読んだことはないが面白いと聞いている。彼は、ありがとう、と言って受け取っていた。


「でも無事意識を取り戻してくれてよかった」


 万咲ちゃんはそう言った。彼は、ありがとうと言ってくれていた。


 私たちは、またね、と言って病院を出て行った。


 家に帰ったあと、スマートフォンを確認すると彼からメッセージが来ていた。


「そういえばさ、前僕が知らない場所にいるっていう夢見たって言ってなかった? あれ、事故で寝てる時の僕の経験と重なるんだけど」


 私は、どういうことだろうと思って詳しく聞く。彼は詳しく教えてくれた。


「ちゃんと書くと長くなるから後日話すけど、なんていうか城壁のある街?で生活する夢だった」


 私はなんとなくそんな話をしたことを思い出した。彼は話す。


「これ、交通事故にあって異世界に飛ばされた人の話」


 私は送られてきたリンクをタップした。すると、前に話した城平の体験談が出てきた。


「これ、話した記憶あるね」


 私はそういう。彼は返信した。


「これに似た体験をしたってわけ」


 彼はそう言って話し始めた。

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