順和16年8月3日4
「次は休憩です。10分後にまた始まるので、それまでに戻ってきてください!」
私たちが歌い終えた後、まなははそう言った。私は再び椅子の上に座った。
「汗かいてきた」
かわみんがふと声を漏らす。私も暑くなってきたと感じていたところだ。私はポケットの中のハンカチで汗を拭き、残り時間に備えた。観客席を眺めながら10分を何もせず過ごす。
そして休憩が終わりライブが再開される。3期生が前に出た。1期生4人は座っている。
「今から3期生5人のトークの時間です! 最近ものすごく暑いですが、皆さんはどうでしょうか? 体調崩されていないといいのですが……」
観客がどのように思っているかリアクションを見ることはできないが、多くの人はうなずいてくれるだろう。まなははゆっかにマイクを渡した。
「本当に暑いですね……汗が止まらないです。何か熱中症対策にいいってものあるんですかね? 折角なのでファンの方の意見を聞きたいのですが。何か熱中症対策に効くものってあったりするって人、手をあげてもらえますか?」
客席を見ると十数人手を挙げている。ゆっかは舞台から見て右奥の方を見ていた。
「えーっと、奥から1、2、3、4番目の右から2番目の方、何かありますか?」
ゆっかがそう尋ねると、スタッフがマイクを持ってその人のところへ向かっていった。よく見えないが若い男性のように見える。その人は答えた。
「よく言われてる話ですけど、麦茶に塩を入れるっていうのやってますね。自分自身暑さには弱いタイプなので」
彼は落ち着いた声で話す。適切な量であれば塩分を入れることが熱中症予防につながるという話は聞いたことがある。
「折角なので、後1人くらい聴きましょうか、何かいい方法あるでしょうか? さっきは右奥の方を当てたので、次は左手前の人お願いします」
スタッフはマイクを持って左前で手を上げている人の方へと向かっていった。30代くらいに見える女性だ。彼女は話す。
「私は塩分タブレットっていう飴を常備してますね」
彼女はそう言った。実際塩分を補給できる飲食物はあるに越したことはないだろう。ゆっかからマイクを受け取ったまっちゃんは話す。
「私の話なんですけど、本当に暑さには弱くて、1年前暑さと貧血のせいでめまいと立ちくらみ感?が止まらなかったんですよね。結局夏が終わるまで治らず夏が終わったら自然に治っていったんですけど、今年はそうでもないのが救いです」
立ちくらみは私もたまに起こる。辛いが頑張って耐えるしかないかもしれない。まっちゃんはりりおんにマイクを渡した。
「私はそこまで暑さに弱いかって言われたらそうでもないと思ってるんですけど、それでも暑いのはそんなに得意ってわけでもないので暑さを感じない服を選んでますね。ワンピースとか最近よく着てるので、皆さんも試してみて欲しいです。若干ではありますがズボン姿よりも暑さが抑えられる気がします」
ワンピースは私はあまり履いていないが機能的なファッションとしてありかなと感じる時はある。男子の人の間ではまだあまり普及しているとは言いづらいだろうが、どんな感じなのか気になるという人は試してみてもいいのかもしれない。
最後、りりおんはみなみんにマイクを渡した。
「私もワンピースをよく着ていますがやっぱりズボンより涼しいって感じますね。男子だと抵抗があるかもしれないですが、抵抗がないという方は是非一度履いてみてください!」
これで5期生全員が話し終わったことになる。次はまなはが話し始めた。
「着物のワンピース男子っていうとどうしても女装というイメージを持ってしまうかもしれませんが、夏場は機能的に優れていますし、女装という括りを外れて着てみてもいいと思うんですよね。自分の話になるのですが、大学生の兄が無印良品のワンピースを着て大学に行っていましたし」
まなはに兄がいることは知らなかった。まなはは話す。
「似合っているかどうかまではわかりませんが、めちゃくちゃ変とは思いませんでしたね」
まなははそう感じたようだった。自分の弟は割とフェミニン気味なのでワンピースを着ていてもそこまで違和感はない。
実際ヘリアンサスガールズの衣装もワンピースだが慣れてきたということもあり、そこまで変ではないのかもしれない。ただ、自分が着こなしているところを想像できないのが現状だ。まなはは続ける。
「ちょっと何の話をしていたか分からなくなりそうでしたが、3期生トークはここまでです。次は『次の世界へ』です!」
私たちはそう言って歌い始めた。そして、連続して道端花、サヨナラの先へも歌いきった。観客からアンコールが入る。いよいよ最後の曲だ。
「アンコールにお応えいたしまして、最後の曲は大冒険時代の英語版です! 今回初披露ですが、スクリーンに歌詞を出すので覚えていってください!」
まなははそう言った。私たちは、頑張って歌っていった。
「In front of us lies a grassland, even if there's nothing there
Just go on straightforward, and we believe we won't get lost at the horizon,
It's the Era with No Maps, where stars lead us to a sea
Now we are just heading for, surely heading for a sea distant far away」
「Nuvole nel cielo, con vista sull'oceano
Saremo in grado di alzare le vele in un viaggio lontano」
発音がいいとは言い切れないが私たちは歌い切った。観客からは拍手が聞こえる。まなはは話した。
「この曲も後日SNSで歌詞が公開されますので、楽しみにしていてください!」
そう言ってまなはは最後の言葉を言い始めた。
「今日は暑い中ヘリアンサスガールズのライブに来てくださって誠にありがとうございました! 15分後から物販や撮影会も行われるので、ぜひそちらにも参加してください!」
彼女はそう言って舞台を降りた。私たちも楽屋へと戻っていった。私は少し休んだ後、タオル15枚とCDと、ヘリアンサスの希望15部を持って物販の場所へと向かっていった。
私が本を持っていることに気づいたそかかに話しかけられた。
「ヘリアンサスの希望ってさ、私の分ある?」
私は、今ここにはないことと、pdfであればDiscordで共有できることと、紙で欲しかったらウェブ上で買ってもらうしかないことを伝えた。
「本当はプレゼントって形で渡せればいいんだけど、在庫とかの問題もあるからね」
そかかは、pdfで送って欲しいという旨のことを言ってくれた。彼女は、わかったと言ってくれた。
二百数ページとそこまでたくさん書いたわけではないが普通の本と同じくらいには分厚い。れんれんのエピソードで字数を稼いでいるとはいえよくここまで書いたなと我ながら思うことがある。
私は物販の自分のテーブルの下に販売するものをおいた。数分後物販の時間が始まる。私たちは販売を始めた。
最初の方に来てくれたリュウヘイさんも来てくれている。他にも様々なファンが並んでくれていた。自分のファンにはいろいろな世代・性別のひとがいるようだ。私は、一人ひとりにいつもありがとう、と伝えた。
私たちは撮影会・物販を終えた。自分のところは売り切れなかったが売り切れたたところもあるようだった。
終わった後、私は楽屋で横になった。だいぶ疲れた気がする。私はお茶を飲んで休んだ。
私たちはその後解散となり、家まで帰っていった。




