部活 4
教室には中2の先輩が1人だけ来ていたが、他には誰もいなかった。机の上に楽譜とメモ帳を置き、譜面台を設置した。チューナーを442Hzに合わせてBb(シ♭)の音を鳴らす。その後、他の音を出して、音のテストをした。
「希望の花言葉」「ナツアオソラ」と言った歌はまだ一般公開はされていない。その歌を知っている優越感とともに、私はトロンボーンでそのメロディーを吹いてみた。ただの音を出す練習であり、ナツアオソラのメロディーはシンプルなのでトレーニングにちょうどいいからであった。
パートリーダーの小林真琴先輩が入ってきた。私は何を言われるか気が気でなかったが、先輩が入ってきて私を見たときの第一声は「おめでとう」だった。怒られるかもしれないという不安が心の中を駆け巡っていたが、私は一瞬で安堵の感情を取り戻した。
私はいつも通り音を出す練習をし、課題曲の練習を始めた。Sing sing singは富南祭で演奏する歌だ。しかし、地元で行われる中学生の演奏大会のようなものが今月の25日、日曜日にある。中学生は、その日の課題曲である「ツバサ」「タビソラ」を練習することになっていた。
ツバサは、オーディションの課題曲でもあった。2曲とも、もともとはT県A市の吹奏楽連盟が作ったものらしい。2曲合わせて5分。ツバサは明るい曲長なのに対し、タビソラは独特なメロディーがある。トロンボーンパートは、リズム的に演奏は難しくはないが、休符の時間があまりないのがつらい、というのが印象だった。
吹奏楽部は火水金日の週4回。今の時期は、基本的に水日は富南祭に向けた練習を、火金は地元の演奏会の練習をするスケジュールになっている。今日は金曜日なので、私たちは大会に向けたトレーニングを行うことになっていた。
ナツアオソラをウォーミングアップとして吹いた後、ツバサの楽譜を取り出す。すぐ部活の出席時間になったので、音楽室に向かった。先輩は点呼をとった。
今日は全員そろっているようだった。部長の先輩は話を始める。
「みなさんこんにちは。中学生の方は後2週間で演奏会です。もうすぐですが頑張っていきましょう。高校生は、コンクールに出る人は午後の合奏があります。出ない人と中学生は、昼前で解散となります」
演奏会・コンクールは、1週間ほど前に訪れた文化会館で行われることになっている。その日は、A市の中学校のうち、11校が出ることになっているらしい。私は、そのことを確認した後、パート連の教室に向かっていった。
今は9時過ぎ。11時から合奏なので、個人練・パート練に使える時間はあと2時間弱だった。私はパートの同学年の(クラスは違う)高橋美玲ちゃんと軽く無駄話をしてから練習へと入っていった。
練習していると、あっという間に時間が過ぎていく。もう10時55分だった。酸欠で立ち眩みがする。もう入部して半年がたつが、未だに慣れない。呼吸の練習をしておかなければ、と思った。
私たちは音楽室に戻り、合奏を始めた。「ツバサ」においては、私が演奏するトロンボーンのBパートは和音の中の1音を演奏する。サビはチューバが変わるものの、サビ以外の部分の演奏が難しい。「タビソラ」は、サビがどこなのかがわかりにくい。私のトロンボーンAは、だいたい和音の根音を演奏することになっている。
中3で、演奏会の練習を仕切っている坂本広美先輩の指示に従って、私たちは合奏を始めた。
私は、演奏を1度ミスしてしまったとき、無理に合わせようと遅れて吹こうとしてしまうことが多い、ということを先輩に指摘されてしまっていた。そうならないように気を付けていても、今回も無意識にずれて音を出してしまった。私は、他のパートが練習しているタイミングで、先輩の方を向いて、すみませんとジェスチャーで伝えた。




