表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/261

部活 3

食べ終わった弁当の殻を下の階に持っていく。弟はクッキーが入っている皿を机の上に置いている。まだ熱いようだが、温度を下げれば完成らしい。私は邪魔にならないように、台所のごみ袋に殻を捨てて部屋に戻った。


私がアイドルに入ったことは、先輩に伝えたことをきっかけにして、すぐ広まったらしい。LINEを確認すると、吹部仲間を含めた同級生10人近くからのメッセージが届いていた。


吹部じゃない友達数人にはそのことを伝えてはいたが、「他の人には言わないで」とかん口令を敷いておいていた。そのため、実際把握していたかいなかったかは別として、ほかのクラスメイトからは特に何も言及されてこなかった。


しかし、メッセージを読むと、先輩に伝えたことがきっかけで、そこから他の部活仲間に流れた、という事が判明した。正直、想定外だった。


確かに先輩には、言わないでほしいと言っていなかったが、まさかここまで広まるとは思っていなかった。


私は急に明日の部活が不安になった。眠気に打ち勝てず、シャワーを浴びて歯を磨き、ベッドに入った


ここ数日忙しい日が多く、私は金縛りにあってしまった。意識はあるのに動けない。しかし、5分ほどすると、眠りに落ちていった。


8月9日、朝7時。私は母の声で起きた。出された朝ご飯を適当に食べ、軽くシャワーを浴びて制服に着替える。髪の毛を軽く整え、私は家を出た。


マネージャーと相談したうえで、定期券が切れる年内まではバス・電車で通学することに決まった。家から歩いて5分ほどのバス停に向かう。7時42分のバスに乗り、10分ほどで駅に着く。5分ほど待てば電車は来るので、それに乗れば8時10分にはA駅に着く。私はいつも通り、そこから歩いて学校へと向かった。


いつもと違ったことは、車両の中吊り広告にヘリアンサスガールズのメンバーのシルエットと名前が書いてあったことだった。左から順に、なっきぃ、そかか、私、かわみん、なーなん。私は身長が高いからなのか、真ん中に来ていた。


通学中、万咲ちゃんに遭遇した。私を「しふぉん」と呼び始めた子だ。実は、アイドル界だけではなく友達の間でも私は「しふぉん」で通っている。同じクラスの人であっても私のフルネームを知らない人までいるようだった。万咲ちゃんは、私が活動を始めたことを、先輩からのラインで知ったらしい。


駅から歩いて8分ほどの学校に着く。エアコンが効いていて、中は十分涼しかった。部活の楽譜をとりに教室へと向かう。私のクラス、1年A組は2階にある。大翔くんも私と同じくらいのタイミングで来ていたので、いつも通り適当な挨拶を交わした。

「おはよー」

「おはよ、駅で『しふぉん』のポスター見たよ。活動頑張ってね!」


「しふぉん」というあだ名の人などたくさんいると思う。恐らく、シルエットの形と身長で私だとバレたんだろう。そう思いながら私は「ありがとう」と返事した。


電車内に張ってあったポスターと先輩のせいで、私がアイドルを始めたという事実は広まっていた。言わなくても伝わるなら言わなくてもよかったなと思った。しかし、考えてみるとそれはあくまで結果論だ。私は掲示されていることを、見るまで知らなかった。だから、言わないと怒られてしまうのは仕方ないだろうね、と思った。


私は、音楽室でパート連の教室を確認し、部活始まる前の朝練をしに教室へと向かっていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ