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ヘリアンサスの希望  作者: ソリング J
第3章 新型コロナウイルス発生後
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順和15年11月21日 2

 5人は、ほぼ埋まってる客席を見渡すように目線をきょろきょろさせていた。客席からエールが届いている。収まるまでいくばくかの時間を挟み、プロデューサーは続けた。


 1期生のときのお披露目会と流れを同じにするようだった。


「今からそれぞれ一言ずつ自己紹介を行います。右から、富田里央さん!」


「はい」


 彼女はどこか落ち着いて、それでいではっきりした声で返事をした。


「富田里央、中学3年生です! 『りりおん』と呼んでください!」


「「「りりおん!」」」


 観客席の人たちは大声で叫んでいる。その声はディスプレイ越しにもはっきり聞こえてきた。


「続いて、福原柚夏さん!」


「はい!」彼女は落ち着いた声で返事をする。


「福原柚夏、中学2年生です!最近将棋にはまっています。『ゆっか』と覚えてください」


「「「ゆっか!」」」


 また観客席からエールが聞こえてきた。どこか別の世界線(名前も顔も違うほど離れた世界線)の私たちを見ている気分だ。その後も自己紹介は続いていく。


「続いて、宮沢南さん!」


「はいっ」


 彼女は明るい性格だということが分かるようなトーンで返事をした。


「宮沢南、中学2年生です!趣味というほどではないのですが、ボードゲームが好きです。あだ名は『みなみん』です!」


「「「みなみん!」」」


 観客が名前を叫ぶ。客観的に聞いている分には、残りの2人と声量の差はそこまで感じられない。


「続いて、江口愛葉さん!」


「はい」


 彼女は賭けているメガネを治して落ち着いた声でそう言った。


「江口愛葉、中学1年生です! 甘い物と辛い物に目がありません。本名そのまま『まなは』なので覚えやすいと思います!」


「「「まなは!」」」


 観客は今までと同じように名前をコールした。落ち着くまで待ってからプロデューサーは続ける。


「最後に、木村茉南さん!」


「はい!」トリにふさわしい声量で彼女は返事をした。


「木村茉南、中学3年生です! よく『まなみ』『まな』と読み間違えられますが『まつな』です。『まっちゃん』って呼んでください」


「「「まっちゃん!」」」


 最後の人の名前のコールが終わった後、プロデューサーは事前に用意していた質問を読み上げた。1期生のオーディションの時に使われた質問と同じもののようだ。私たちは、懐かしい気持ちで映像を見ていた。


 5人の発表が終わると、プロデューサーが「5人に拍手をお願いします!」と伝えた。会場は拍手で湧き上がる。2年前のあの日を思い出す。


 そかかがくじを引いてヘリアンサスガールズと読み上げたあの光景がふと脳裏に鮮明によぎる。もちろん、3期生がメンバー名を決めることはないが。


「では、1個目の質問です。皆さんの将来の夢は何ですか? では一番左の富田理央さんからお願いします!」


 彼はそう言って順に聞いた。彼女たちは、順番通りに答えていった。


「私は将来は幼稚園の先生になりたいと思っています」


「私は将来、面白いゲームを作る人になりたいと思います」


「えーっと……具体的なイメージはないですが、何らかの形で皆さんに希望を与えられる存在になりたいです」


「なんとなくですが、10年後もこの世界に入れたらなぁなんて考えています」


「将来は、山を登る人になりたいです」


 5人の話を聞いて自分のオーディション頃のことを思い出す。あの時の自分は、確か「トロンボーンで有名な人になりたい」的なことを言った記憶がおぼろげながらある。今はその道を諦めてしまった。


 なりたい自分になれるかなんてわからないものだろう。私はそう思いながら見ていた。


「では次はみなさんの部活について聞いていきたいと思います。先ほどと同じように、冨田さんから順番に答えてください!」


 りりおんが水泳部、ゆっかがバドミントン部、みなみんが手芸部、まなはが料理部、まっちゃんが茶道部だ。彼女たちは順に答えていった。私のときは私とそかかの吹部がかぶっていたが、今回は被っていないようだった。


 2期生のお披露目会といえば一人称僕のれんれんが異彩を放っていた記憶がある。今回は一人称僕の女子はいないようだった。


「次は得意教科をお願いします」


 そういうと5人は順に得意教科を話していった。そして、最後の2つである、好きな食べ物、嫌いな食べ物を順に話していった。


「これで質問のコーナーは終わりです」


プロデューサーがそういうと、3番目の希望のピアノ演奏音源が流れた。そして、プロデューサーはまた何か話し始めた。


「ここで、突然ですが、3期生のシンボルフラワーを決めたいと思っています」


 プロデューサーは誰も知らないことを話し出す。私たちは、シンボルフラワーってなんだろう、と思いながら映像を見ていた。


「シンボルフラワーというのは、そのメンバーたちを象徴する花ということです。今回で言えば、5人を象徴する花ということですね。1期生がグループ名を決めたときと同じように、くじで決めたいと思っています。じゃんけんで誰がくじを引くか決めてください!」


 そういうと、5人は立ち上がって同時にじゃんけんを行った。カメラワークの関係で誰が何を出したのかは見えないが、5回のじゃんけんの末まっちゃんが勝ったようだった。


「それでは木村茉南さん、くじを引いてください!」


 彼女は木の棒が何本か入ったくじの棒から1本引き抜いて、その先端に書かれている文字を読み上げた。


「セロ...シア?」


 私たちは首を傾げてしまったがプロデューサーは続けた。

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