表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/261

私たちは、了解しました、と相槌を打つ。


「元々は4時くらいまで撮影がある予定だったのですが、こちらの事情で急遽無しになりました。それでは今日は解散になります。皆さんお疲れ様でした」


解散後、私は車に乗せてもらった時に、マネージャーさんと少し話をした。10日、個人の自己紹介動画の撮影がある、ということを確認した。集合時間は10時。名前、部活、趣味、好きなもの、意気込み等を話してほしい、とのことだった。その日は午前で終わるので、弁当はいらないとのことだった。


今日は道がすいていたので、30分弱で家まで帰れた。


「ありがとうございました」

マネージャーさんに挨拶をし、私は家のドアを開け靴を脱ぎ、階段を登って部屋に入った。冷房のスイッチをオンにし、シャワーを浴びてリフレッシュする。風呂上がりの冷房がついた部屋は、私にとって最高の瞬間だった。


自分の机の上にあるコンピュータの前に座り考え事をする。11日、ナツアオソラの歌か。私はPCの前で軽く練習した。オフボーカル音源も届いているので、練習することはできる。しかし、音程があっているかは自分の耳で判断するのは難しかった。


私がピアノを始めたのは小学校4年生になってからだから、音感はあまり優れていない。しかし、耳コピはそれなりに練習していたので、ある程度なら歌を演奏できるように、紙に書き起こすことはできる。私はナツアオソラを聞き込み、ヘッドフォンを付けて部屋にあるピアノで演奏した。


サビは特徴的にメロディーが繰り返され、音程もさほど広くない。無理な跳躍がないので、割と簡単にメロディーはコピーすることができた。Aメロ、Bメロもそこまで高い音、低い音は出てこず、16分音符以上の細かいノートも出てこないので、それほど苦も無く書き起こせた。


私は、手書きで楽譜を書くことができないため、書き起こしたメロディーをmidiファイルに変換しPCで楽譜にした。


ヘッドフォンで聴きながら、私は歌ってPCで自分の音程をチェックした。少しずれているが、大幅ではないようだった。数十分後私は歌うのをやめ、宿題を少しやって部活の先輩に連絡を行なった。


「今月11日、こちらの事情で部活を休ませていただきます」


私はLineを閉じ、Twitterを開き、夏休みの宿題をやっているところを写真に撮り投稿した。私はすることがなくなったのでベッドに横たわり、天井をじっと見つめながらぼーっとしていた。


「あれ、寝ちゃってた?」気づいたら19時。1時間半くらい寝てしまっていたようだ。外はまだ明るい。弟はもう塾から帰ってきていたようだった。


下の階に降りてみる。今日は弟が料理する日ではないが、彼は趣味のお菓子作りを行っていた。弟は女子力が非常に高い。裁縫の腕も一人前と呼べるレベルだ。恥ずかしい話だが、私よりも”女子らしい”。決して悪口ではない。むしろ尊敬の念すら抱いている。


見た感じどうやらクッキーを作っていたようだった。クッキーの作り方など見当もつかない私は、工程を見学していた。作るのに2時間くらいかかるらしい。私は完成したら1枚欲しい、と伝えて2階へ戻った。


私は再びLineを開いた。基本的にLineのグループの通知はオフにしているため、個人チャット以外の通知は来ない。18時過ぎ頃、吹奏楽部のグループで私は先輩に軽く怒られてしまっていたようだった。


「最近諸事情で休みすぎじゃない?何かあるのかもしれないけど、それなら言い訳せずにちゃんと伝えてほしい」


私はもっともだ、と思った。しかし、ヘリアンサスガールズの話をするのはまだ心のどこかに抵抗があった。でも何時かは言わなきゃいけない。そう思ったので、私は先輩の個人チャットでその件を伝えた。


「タイミングがなく言うことができていませんでしたが、先月私は『ヘリアンサスガールズ』というA市のローカルアイドルユニットに加入しました。そのため今後、断りなく休む機会が増えるかもしれません。可能な限り連絡いたします。申し訳ありませんでした」


すぐに既読はついたが、数分経ってもメッセージは何も返ってこなかった。私は部活について不安に思いながら窓の外をじっと見つめた。しばらくしてから部屋にある古いテレビをつけたが、面白い番組は特になかったのですぐ電源を切った。


親はいつの間にか帰ってきていた。私は、親が買ってきてくれた弁当を自分の部屋に持っていき、1人で食べた。弟がクッキーづくりで1階の机とキッチンを占領していたからだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ