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ヘリアンサスの希望  作者: ソリング J
第3章 新型コロナウイルス発生後
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順和15年11月6日 2

「みなさんこんにちは! ヘリアンサスガールズのクール系担当のしふぉんです! ヘリアンサスガールズの名前だけでも覚えて帰っていってください!」


 私は寒い中、歓声を通り抜けて遠くからも聞こえるような大声で一言一言はっきりと話した。


 観客からは「しふぉん!」という声が聞こえてくる。この声を聴くといつも、ここまで頑張ってきてよかったと感じる。


 順になーなん、かわみん、まりりん、ひぃたん、みぃちゃんが自己紹介を行った。


「次は、Departure!」


 そういって私たちはDepartureを歌い始めた。


「今電車が来て気づく 二人で 夕焼け空 君と見るのは最後だということ」


「数え切れないほどの夢を いっぱい 話した思い出」


 なっきぃの脱退が決定した今メロディーや歌詞がどこか重めに響く。なっきぃと活動できるのが最後だと、なっきぃが活動を一時停止したときには想像できていなかった。なっきぃも想像できていなかったことだろう。


「胸に抱えよう もしも僕ら もう1度会える ことがなくっても」


 決して2度と会えないわけではない。それでも、一緒に活動は出来なくなってしまうのは悲しい。


「迷わずに進め 違う道を それぞれの明日で 笑っていたいよ」


 私は少し重い歌詞を踏みしめながら、暗い道の先に見える光を信じようという気持ちになった。


 分かれというものはそこまで悲しまなくてもいいものなのかもしれない。当時は違ったが、今となってはそう思うようになっていた。


 感傷に浸ってしまった。次の「希望の花言葉」も問題なく歌い終える。まりりんが最後の曲の曲名を読み上げた。


「最後の曲は、『次の時代へ』! 8月のライブで初披露され、先月MVがリリースされたばかりの曲です」


 私たちは軽快なテンポに乗って曲を歌い始めた。


「空の彼方まで飛んでいけるのならば 何があるの?」


「この空自由に飛び回ってるような鳥のようにゆこう」


「描いた未来がかなり遠くででも歩けば」


私たちは明るい未来をイメージしながら歌っていった。そして歌い終わった後、まりりんが話し始めた。


「先日なっきぃの脱退が発表されてしまいました。悲しいですが、別れというのはある意味必然なのかもしれません。本人が向こうで楽しくやっていくことを願いましょう!」


 私は、なぜか彼女の言葉に安心した。力強い話し方だったからなのかもしれない。私は、最後の曲を歌い始めた。


 私は、お茶を飲んで最後の曲に備えた。


「大冒険時代!」


 まりりんが曲名だけを強いトーンで読み上げた。私は、マイクを握って歌い始めた。


「果てしない荒野 煌めく星の 足跡たどり 僕らは砂漠を横切る」

「広がる草原 何もなくても 遠い地平に 真っすぐ迷わないだろう」

「荒野を渡る汗で滲んだその視界には目指した海をとらえていた」

「空になびく雲大海を望む 遥かな航海に帆を掲げていけるさ」

「彼方の地平に届かなくても 僕らはめざす 子供のころ思った場所」


 歌詞の中で簡単なストーリー性があるところが好きだ。私たちは、リズムに乗って歌いきった。


「これがヘリアンサスガールズの発表のすべてとなります」


 まりりんがそういうと、観客からアンコールの声が聞こえてきた。


「残念ですが尺の都合上アンコールはありません。ありがとうございました! 今後のライブの予定については、公式ウェブサイトに掲載されるので確認してください!」


 まりりんはそういった。私たちも、それぞれありがとうございましたといって舞台を降りた。その後私は衣装から私服に着替えたのち、いつもの駅前のビルまで向かっていった。


「みなさん、お疲れ様でした! そして、なっきぃとの別れのために書かれた曲が今日の夜Discordで共有されます。次回のレッスンまでに口ずさめる程度に聞いておいてください」


 プロデューサーは指示する。わたしたちは、わかりました、と合図した。


「では今日はこれで終わりです。お疲れ様でした」


 プロデューサーはそういって解散とした。その後、それぞれが家まで帰っていった。



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