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ヘリアンサスの希望  作者: ソリング J
第3章 新型コロナウイルス発生後
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順和15年11月2日 2

 私は2年半後である高3の春にみんなと別れることになるだろう。それまでは頑張らなければならない。


 私はお茶を飲んで、なっきぃと最後になるかもしれない時間を過ごすことにした。


 昼ごはんは持ってきていないが、ここから歩いて行ける範囲にコンビニがある。私たちは、4人で昼食を買いに、そこまで向かっていくことにした。


「それにしても、驚きっていうか……。」


 かわみんはふと呟いた。この場所にそかかがいないことが残念でならない。ただし、受験勉強という意味では仕方ないだろう。


「神奈川のどの辺なの?」


 私は聞いてみる。正直、神奈川の地理を把握できているわけではないが、例年の帰省のおかげで、実家の近くだけはある程度把握していた。


「正直なところ分からないけど、横浜の川崎に近い方らしい」


 この言い方的に、私の実家の場所に近い可能性がある。私の実家の最寄り駅も、川崎市に接していることは知っているのだ。


「とにかく、細かいことはまだ分からないけど、その辺ってだけ」


 私は、なるほど、と返事をした。私はコンビニでざるそばを買った。他の3人もそれぞれ買いたい物を買ったのち、私たちは先ほどの部屋まで戻っていった。


 私はざるそばの汁を容器に開け、付属していたネギをそばの中に入れた。ワサビはいまだに苦手なので、私は横に避けた。


「向こうではアイドル活動のことについてどう説明するつもり?」


 なーなんは聞いていた。なっきぃは、今のところ聞かれたときの対応は決めてないが、自分からは言わないつもりだということは決めているとのことだった。実際、関東の方でのヘリアンサスガールズの知名度は低いだろう。意外と隠し通せるものなのかもしれない。


「でも、聞かれたら話しちゃうかもな」


 なっきぃはそう話す。今のところ、確実なことは言えないようだった。


「正直、今のところはわかんないかな」


 なっきぃは改めてそう言った。実際、その場で対応するつもりのようだった。


「高校の3年間は、アイドルという世界から離れて過ごしてみたいっていうのが願いなんだよね。また戻って来るけど、それまでの間は普通の女子高生として過ごしてみたいっていうか」

 

 彼女は思ってることを素直に話した。私の場合アイドルとしていられる時間は決まっているからなのか考え方が違う気がするが、大学に入ってから戻れるのであればそう考えるのも理解できなくはないのかもしれない。みんなは、なるほど、という風にうなずいていた。


「そろそろ3期生が入って来るじゃん? お別れのときにまた会えたらなぁって感じかな」


 なっきぃは思い浮かんでいることを話しているようだった。3期生は今月の下旬には入って来るらしい。今のところ名前は把握していないが……。


 11月の段階ではヘリオプシス(研究生)だが、お別れ会が3月だとすればそのときにはもうその肩書も外れているだろう。私は、3期生についても結構期待していた。


 まだメンバーが決定されているわけではなく、誰がいるのかもわからない。れんれんみたいに感動の再会(?)があるかと言えば、正直ない可能性の方が高い。


「メンバーカラー、どうするんだろう」


 私は正直に思ったことをつぶやいた。1期生の色が「紫・オレンジ・緑・青・ピンク」。2期生の色が「蓮色(濃い目のピンク)・白・黄緑・ベージュ」。今のところ、使われていない色は計9色だ。


「水色、赤とか、アイドルっぽい色を差し置いてベージュとか、あとはピンクにかぶってる蓮色使うようなプロデューサーだし、適当に何かしら考えるんじゃないかな」


 かわみんは話す。


「あるのはその2色に加えて、藍色とか赤紫、あとはエメラルドグリーン色とかもあるのかな? でも、正直、『既存の色と完全にかぶらなければOK』みたいな緩いスタンスでやってそうだから、変な色とか似てる色持ってくる可能性もありそうだよね。茶色とか銀色とか、クリーム色、黒?とかも使ってきても驚かないかな」


 なっきぃはそう言った。色のバリエーションも減っていくことは仕方ないといえるだろう。私は、なるほど、と返事をした。


 私は、お茶を口にして気を落ちつけた。


 なっきぃの脱退自体は悲しまなくてもいいことなのかもしれないが、心残りはもう一緒に活動することはかなわない可能性が高いということだ。彼女と私は同い年なので、残念ながら、彼女が戻って来る1年前で私は活動を停止してしまいそこから戻ることはできないという感じになると思われる。


 私は、その未来を鮮明に想像して息ができないほど苦しくなってしまった。


 実際、会えないというわけではないだろう。長期休みには戻ってきたいみたいなことも言っていたし、そのタイミングでまた会えればなと思っている。もう一緒に活動できないことだけが心残りだ。


 私は、今までありがとう、といってなっきぃと握手をした。彼女の力強い握り方に、彼女なりの未来への希望を感じることができた。他の2人も握手をしていた。


「また会えるから心配しないでね。じゃあね!」


 私たちはそう言って家まで帰っていった。


 なっきぃはこの脱退をネガティブなものとしてはとらえていないようだった。別に喜んでいる(=いなくなれてうれしい)というわけではないものの、悲しいと言いたくないみたいな気持ちが彼女のどこかにあるのかもしれない。もしかしたら、それがなっきぃの出会いと別れに関する味方なのかもしれない。


 私は放心してベッドの上で横たわってしまった。

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