MV撮影 その3
私は受験生のため、今後更新ペースが落ちるかもしれません。
私たちは、ここ数日の部活の様子など、近況について軽く喋った。とはいっても、みんなも部活出れてない日が多いみたいだけど。
私は、4人に、「まだ部活の友達にはヘリアンサスガールズに加入したことを話していない」ということを伝えた。他のみんなは、もう伝えていたみたいだったので、私がまだ言ってない唯一の人となってしまっていた。詳しく話を聞くと、なっきぃは合格した日にLineの友達に全員に送ったらしい。かわみんは、仲良い友達に教えたら、アイドルを始めたという噂がすぐ広まったと言っていた。まあ普通はそうだろうね。なんで私のうわさは伝わっていなかったんだろう。
ハンバーグ弁当の梅干しとたくあんをよけながら、私は考え事をつづけた。このまま部活のメンバーに隠し続けるのは無理がある。しかし、今更伝えるのは遅すぎる。どう言い訳しようかな。
考え事をしていると無口になってしまう。私は4人の話を左から右へ流してしまっていた。食べ終わってからもしばらく虚空を見つめていた。上の空でぼーっとしていると、そかかが私に話しかけた。
「大丈夫?」
「あー、ごめん。色々不安が多すぎて考え事してた」
私は、どっか行っていた意識をかろうじて戻し返事をした。不安を言葉にすれば薄れるかな、とも思ったが、解決策が見つかるとは思えず言うことはできなかった。
そんな間に全員食べ終わり、13時になった。私たちはプロデューサーと千葉さんとバスに乗って、次の撮影場所まで向かう。移動した先は洋風庭園。撮影場所は、建物を出て近くにある広めのテラスで、花壇にはたくさんの向日葵が植えられていた。
「今から撮影しますので、適当にはしゃいでください。ただ、常識の範囲内で、暴れすぎないようにお願い済ます。音は入りません」
カメラマンは、そう説明して動画をとり始める。私は芝生に寝っ転がったが、陽がまぶしいので、日陰の場所に移動。そこでなっきぃと雑談をした。最近はまっているアニメや漫画とか。声は収録されないとのことだったので、好きな話をすることができて、不安が軽減された。
かわみんとそかか、なーなんは、花壇の花を見て「綺麗だね!」とか「これ庭にあるやつだ!」とか笑いあっていた。私も、話の切りがいいところで「見に行こう!」となっきぃに提案した。最終的には、5人で花を見て喋っていた。
十数分後、5人が一瞬無言になる時間が訪れた。撮影している人は、タイミングを見計らってカメラを止めたようだった。だが、私はそれを気にせずに喋り続けた。
しかし、プロデューサーは「このまま外にいると熱中症になってしまうので、休憩をとります。今は13時40分です。14地10分までは休憩とします。中に入って水分を補給してください」とをかけ、私たちを屋内に連行した。確かに少しくらっとするかも。私は屋内にあった自動販売機でスポーツドリンクを買った。
私は人に比べてかなり汗をかきやすい。だから飲む前に、汗を抑えるために首の後ろにペットボトルを当てた。汗がぴたりと止まる。それが私の汗を止める方法だ。今回かいた汗が、あっという間に収まっていった。
私は飲み物を飲んで水分補給をする。気持ちと言われたらそれまでだが、今までの撮影で足りなかった水分を一瞬で補給できた気がした。
私たちは部屋の中のソファーでくつろいでいた。そかかがトランプを持ってきてくれたようだったので、5人でババ抜きをして時間をつぶした。
楽しいことをしているとあっという間に時間が過ぎた。私たちはカメラマンに感謝の意を伝え、駅前のビルまで戻った。
ビルの中で、プロデューサーは説明した。「今月の22日に、ナツアオソラの録音を行います。その日までにも何度か練習する日はありますが、各自練習してくれるとスムーズに行くと思うので無理のない範囲でお願いします」
マネージャーから楽譜についての説明は受けている。歌っているところを録画することはしないから、とりあえず今回の収録は楽譜見て歌っても大丈夫だとのことだ。私は下の歌詞の、★をつけた行のパートを歌うことになっている。
雨が降った 6月に
★梅雨が伸びて 7月も
空が晴れず 僕たちの ココロが今 暗くても
台風だって 雷だって
★土砂降りでも 明日は晴れるよ
これだけの希望を持ち
空を 見上げたら
★雲はなく どこまでも すける夏の青
ミライ 晴空に この想い 高く上げ
★僕は 空へ行く
「今日の天気、曇り空 明日の天気、雨が降る」
★そのうち空晴れるなら
僕の想い 伝わるはず
ココロのドア 開いた先 何があるか わからない
★だけれど 迷わずに 走り出そう
次は 僕たちが 大空に 声をあげ 遠く響かせて
★たとえ この声が 途切れても
僕たちは 愛を 送るから
君のところへ
★僕のところへ
声を出して 叫べば
★曇りの この空も いつか 晴れる
★きっと 君と僕 永遠に長い距離
徐々に 駆け抜けて ミライ 晴空に
この想い 高く上げ 僕ら 空へ行く
私がソロになるパートは
「★土砂降りでも 明日は晴れるよ」
「★だけれど 迷わずに 走り出そう」
「★僕のところへ」
の3つだ。実際のライブのときは、ココを間違えないことが重要になってくる。もちろん他の場所なら間違えてもいい、というわけではないけど。
プロデューサーは説明をつづける。
「11日、オフボーカル音源を流した状態で歌っていただき、録音させていただきます。この出来でセンターは決まりません。コーチの指導の参考資料的なものとなります。練習してきてください」




