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ヘリアンサスの希望  作者: ソリング J
第3章 新型コロナウイルス発生後
159/261

順和15年1月15日 2


「ちょっと暗い感じの曲でしたが、次は明るい曲行きたいと思います。ツバサです!どうぞお聞きください!」


 コメント欄には楽しみとか雰囲気ガラッと変わるねとかいうコメントがある。私はそれを読んだうえで歌い始めた。


「扉を開いたら見える 7色の景色が」


「雨上がり 水たまりに映り込む虹 軽く跳んで ここから始まる僕らだけの世界」


 ソロで歌うのは久しぶりだが案外何とかなるものだ。コメント欄も楽しそうに歌っててかわいいみたいなコメントが多かった。


 もとは合唱曲なのだがここでは個人向けに編曲されている。そこそこ有名なので知っているひとも多いようだ。


「懐かしい! 高校生の頃歌ったなぁ…」

「声すき」

「しふぉんってボーイッシュな外見から想像つかないくらい声可愛いよね」


 私は外見が男子っぽいとして一定の人気を集めているようだ。私自身その方向を目指している感はあるが、声は変えられないだろう。私はいつも通りの調子で話した。


「そういえば、2期生が晴れて研究生から正規メンバーになりましたが、こないだ出たシングルの『2つ目の希望』聞いてくれましたか?」


 コメント欄では聞いてくれた方が多いようだが、まだ聞いていないという方も一定数いるようだ。2期生のメンバーの名前は以下の通り。


太田響ひぃたん

大西未来みぃちゃん

早川蓮花れんれん

山本茉莉音まりりん


「個人的には早川ちゃん、れんれんちゃんが一番印象に残っていましてね、1期生オーディションのときに1ブロック6人とかでその場で歌ったりダンスしたりするんですけど、そのときに一緒のブロックだったんですよ。正直、物販に来てくれた時に言われて思い出したんですが……。」


 私は思い出したように話してみた。れんれんがここを見ているのかは知らないが、彼女と私は割と前からお互いを認識していた。私としても、彼女が晴れて合格できたことは非常にうれしかった。


「初めて聞いたエピソードなんですが、れんれんさんは何か言ってましたっけ?」


 コメント欄には意外という感じのコメントが多かった。れんれんがブログを書いていればわかることもあるのかもしれないが、今のところブログは日常的な内容しか書いていないようだった。れんれんからもそのうちこのような話がされるのかもしれない、と私は話した。


「れんれんさんの一人称僕、正直どう思っていますか?」


 れんれんさんは一人称が僕の女子(いわゆる、僕っ子)ということでファンに強烈な印象を与えているようだ。私としては、外見からのギャップにドキッとしてしまうことがある、ということを話した。別に恋をしているわけではない(私は同性愛者ではない)。ただ、男子だったら絶対好きになっている可能性が高いだろうとは思っていた。


 彼女を痛いと思っているファンもいるようだ。私自身痛いとは思っていないが、そう思っていても(この動画はアーカイブに残り、後から閲覧できてしまうため)言わない。事実として私は痛いとは思っていない。


「僕目線だと、紫保さんの方が一人称僕似合ってると思う」


 コメント欄にはそんなことも書き込まれていた。正直、どう反応していいのかわからない。


「え、僕ですか?」


 すっとぼけた感じで言ってみるものの違和感が強い。仮に一人称を僕にしようとしても、最初のうちはキャラがぶれて「私」と「僕」が混ざってしまう気がしなくもない。身に沁みつくまでには時間がかかるだろうし、何よりその必要性を一切感じない。れんれんのように一人称として意識せずナチュラルに僕が出てくるようになるまで、相当長い時間がかかるのは間違いないだろう。


 私はそんな感じのことを話した後時計を確認した。そろそろ次の曲を歌う時間だ。私は、道端花を歌います、といってマイクの前に立った。


 原曲がゆっくりということもあるが、今回は特に落ち着くピアノバージョンだった。私は息を大きく吸って歌い始めた。

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