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ヘリアンサスの希望  作者: ソリング J
第3章 新型コロナウイルス発生後
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順和14年9月12日 4

 私は男装する先輩4人より背が高く、身長はまだ伸びている。恐らくだが、今の自分は175近くあるんじゃないかとさえ思っている。先輩方は低身長に少しばかり悩みがあるようだったが、それも気にせずに男装しているようだった。


「しふぉんさんって身長のせいで、男子っぽく見える!」


 先輩は男装した私を見てそう言った。筋肉量は明らかに少ないが、遠目からとられた写真を見てみると、そう見えなくもないかもしれない。私は少しうれしかった。


 私たちは、その後発表を行うために体育館まで向かっていった。


「それでは、男装コン・女装コンの発表をします。まずは男装コンから。エントリーナンバー1番、藤原聖花ふじわらきよかくん!」


 彼女は「はい!」と叫んだあと体育館のステージに立った。何となくイケメンの雰囲気を漂わせていた。


「エントリーナンバー2番、松山凜和まつやまりんなくん!」

「エントリーナンバー3番、佐々木麗ささきれいくん!」

「エントリーナンバー4番、鈴木紫保すずきしほくん!」

「エントリーナンバー5番、近藤瑞樹こんどうみずきくん!」


 5人が一列に並べられた椅子の上に座った。そしてインタビュアーは尋ねた。


「みなさん、意気込みをよろしくお願いします!」


 私たちは、それぞれこたえていった。


「みなさんこんにちは! 藤原聖花ふじわらきよかです。……」


 この調子で前の3人が答えた。次は私の番だ。私はかけている伊達メガネを直し、舞台の上から観客をみおろして落ち着いた声で話した。


「みなさんこんにちは。ヘリアンサスボーイズの鈴木紫保です。ひまわりの花のように皆さんに希望を与えられたらなと思っています。よろしくお願いします!」


 私はアドリブで答えた。ヘリアンサスボーイズというのは今一瞬で思いついた名前である。私がヘリアンサスガールズに所属していることは多くの人が知っているだろうという前提でつけた名前だ。そして落ちそうなメガネを直して私はいすに座った。


 実は、私がメガネをかけて出るということは誰にも伝えていなかった。今の私は視力が落ちつつあるもののそこまで悪いわけではなくメガネはかけていない。個人的にコンタクトは少しばかり抵抗があるので、視力が落ちればメガネにすることになるだろう。


 5人が話し終えた後、私は舞台を降りた。そして男装メイクを落とし、教室へと戻っていった。


「メガネをかけてるしふぉんちゃん、普段よりかっこよかったかも!」

「メガネひとつでだいぶ印象変わるね」

「普段からメガネかけててほしい」


 私のメガネ姿は男女ともに割と人気があるようで一安心だ。私は男装していない姿でメガネをかけてみた。


「男装してなくても、いつもメガネだったらいいのに」


 不本意だがそういわれてしまった。そのうち視力が落ちてくればメガネにするかもしれない、と私は笑いながら話した。実際、常用するファッションとしては伊達メガネはあまり好きではないのだ。


 話していると今日の13時から吹奏楽部の演奏があることをふと思い出す。私はそれを見に行くことにした。今は12時24分。私は弁当を食べ、50分になると体育館へと向かっていった。


 吹奏楽部は私のかなわなかった夢だ。しかし、やめるという判断を下したのは自分だった。1年たった今思うと、その判断は正解だったと思う。


 正直、やめなければよかったな、と思わなくもない。しかし、やめてなかったら「やめておけばよかったかな」と思っていた可能性は非常に高いだろう。


「隣の芝生は青く見える」ではないが、経験していないもう一つの未来はより眩しく見えてしまうものなのかもしれない。眩しい世界の自分もなにか悩みは葛藤はあるだろう。そう思うと、今の選択がすべて最善だと思うことが、過去に悩まずに過ごしていく一番の方法なんだろうなと何となく思っていた。


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