順和13年12月22日 5
「今から4年前(順和8年=西暦2015年)に、『拓真』さんによって掲示板に書き込まれた話です。書き込みの時点で『ちょうど10年前の話』と言っているので、実際に経験したのは元号が変わる前、というか、私が生まれる前の話ということになりますね」
多分私の知らない話だ。他の3人も、ピンと来ていなさそうな顔をしている。彼女は語り始めた。
彼女はカンニングペーパーのようなものは一切読まずに話し始めた。彼女の話の内容を要約すると以下のようになる。
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拓真さんはある日、部活の試合を終えて車で家に帰ろうとしていた。しかし不注意からか、勢い余って電柱にぶつかり、意識不明の重体となってしまう。これからする話の内容は、彼が意識を取り戻すまでの間に経験した話だ。
目を覚ますと、彼は変な場所、草原とでも表現するべき場所にいたといっていた。周りには何もなかったとのことだが、何故か食欲および便意を一切感じなかったらしく、彼は何日も歩き続けて城壁がある街へとたどり着いた。
中に入ってみると、普通の街並みが広がっている。日本にもありそうなものらしい。彼は町の歩き続け、交番のような場所を発見した。そこに駆けつけて今まで会ったことを話すと、地図を提示したうえで、半ば自然な日本語を用いて警察官(のような人)は話した。
「この2つ先の交差点を左に曲がったところにある建物に向かってください。そこに行けば色々分かると思います」
彼は、警察官のような人の指示に素直に従ってそこに向かった。そこにあった建物は学校のような見た目をしていて、入るか入らないか躊躇していると、施設の中から女性が出てきた。
「何しているんですか?」
挙動不審になった彼を見て話しかける謎の女性。彼は彼女に連れられ、謎の部屋へと連れていかれた。
そこで、彼は状況の説明を受けた。そこで彼が聞いた話を列挙すると以下のようになる。
・ここは城平と呼ばれる町
・「意識を失って、気づいたらここにいた」と主張する人(通称、外つ者)は500年前からいる
・城壁が建てられたのは300年前だが、今は使われていない。ただの観光名所扱い
・日本語に関する研究もおこなわれている
・城平がある大陸の東側には島国がある。そこでは日本語に似た言語が用いられている
・どういうメカニズムでここに来るのかは不明。突然現れるのかもしれないが瞬間を見た人はいない
・この施設は城平で暮らしていけるようにサポートするための施設。謎の女性は彼の味方
……(その後も様々な経験をしたようだが、なーなんは長くなるというのを理由として省略していた)……
2年ほど過ごしたある日、城平にある階段で足を滑らせて倒れ、また意識を失う。気づいたら知らない病室にいた。目覚めてうろたえていると母親が入ってくる。どうやら、彼は意識不明の重体で2ヶ月ほど寝たきりになっていたようだ。
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この話を書き込んだ拓真さんは「釣り(人の注目を集めるためのウソの書き込み)ではない」と主張しているようだが、話の内容的にはおそらく臨死体験(?)のようなものなのだろう。
なーなんは楽しそうに話す。すると、コメント欄にいくつか書き込みがされていた。
「その話、知ってる!」
「そういう異世界物の話面白いよね」
「時空のおっさんの話を思い出した」
説明すると長くなってしまうので深入りはしないが、時空のおっさんとは、インターネット上でまことしやかにささやかれている都市伝説の一つである。上の城平の話は拓真さん1人によって書き込まれた話だが、「時空のおっさん」は複数人の話によって構成されているのが大きな特徴である。
「こういう異世界系の話ってロマンがあるよね」
私は思ったことを口に出した。
15分ほどなーなんと私の間の話になってしまった。他の3人はあまり都市伝説を知らないらしく、(話自体は面白く聞いてくれていたようだが)特にコメントができないようだった。
「脱線してるw」
コメントにそう書き込まれてしまった。実際認めざるを得ないだろう。どうしようか思いを巡らせていると、なっきぃが話を仕切り直してくれた。
「拓真さん」の話はネット上に存在する話ではありません。なお、「時空のおっさん」は実際に存在する都市伝説です。




