久しぶりの部活
目が覚めたのは6時30分。いつも親が起こすより30分ほど早い。今日は普段より長い8時間半睡眠だったが、それでもまだ寝足りなかった。
しかし、何故か眠る気は起きない。私は、ネット小説を読んで時間をつぶした。
「7時だよ~紫保、起きて!」母はいつもの調子で起こす。もう起きてるよ、と言いたかったが、「ならリビングに早く来てよ」と突っ込まれることを恐れて言えなかった。顔を洗って朝ご飯を食べにテーブルへと向かった。
「部活しばらく行ってなかったんじゃない?」母親は朝食を準備しながら私に問いかける。部活に行くのは確かに1週間ぶりだが、週4日でそのうち3日がアイドル活動の関係で出席できなかった。1日さぼったのは悪かった、とは思っている。
吹奏楽部はきつい。1日くらい休んでもいいじゃん。そう自分に言い聞かせてはいたが、それでも罪悪感は感じていた。
朝食中は話すこともなく、食べ終わるまで無口になった。
「ごちそうさまでした」食べ終えて、髪を整え、制服に着替えて家を出る。忘れ物はないね。確認した後、私はバス・電車に乗っていつも通りの道で中学校へと向かった。
正直、私は通学中に他の人の「ねえあの子、しふぉんちゃんじゃない?」のような会話を耳にすることを期待していた。しかし、そんな会話は全く聞こえなかった。まあ当然か、と思いながら学校へ行った。
学校には8時20分に着いた。部活は9時から始まる。私はその前に自主練を行うべく、楽器を音楽室からパート連の教室へと持っていった。私のところは一貫校のため、高校生もいる。もう高校生の先輩と中学校の先輩2人ずつがいた。中1はまだいないようだった。私は先輩方に挨拶し、個人の練習を始めた。
と言っても、トロンボーンのチューニングをしているだけでもう8時50分になってしまった。もうこの段階でこのパートの部員は全員来ていた。「そろそろ集合時間ですよ」という先輩の号令に合わせ、私は音楽室へと向かった。
実はアイドルになった話は仲のいい友達数人にはしていたが、吹奏楽部の同級生・先輩にはまだしておらず、休むときの連絡も「諸事情」とだけ伝えていた。先輩は私に対して、活動のことは特に何も聞いてこなかった。だから、少なくとも同パートの人たちは、まだこのことを把握していないのかと思った。知ってるけど気を使って何も聞いていないのかもしれない、とは思ったが、トロンボーンパートは学年関係なく仲がいいから、それはないかと思った。
9時になった。「それでは本日の活動を始めます!」部長の萩原唯莉先輩が始まりの合図を行う。
『はいっ!』全員が張った声で相槌をうつ。
「まずパートリーダーは点呼をとってください」
どうやらまだ一部のパートで数人来ていないようだった。しかし、それを把握したのか部長は続けた。
「今日の予定はこのホワイトボードに書かれているとおりです」
11時半までパート練、そこから1時間で合奏。中学生と市の大会に出ない高校生はもうそこで解散となっている。私はここ数日で割と疲れているため、このようなスケジュールにしてくれた部長・顧問に感謝している。
『はいっ』相槌をし、私たちはパート練の教室に移動する。移動中、同級生の杉原万咲ちゃんと喋ったが、ヘリアンサスガールズの話は出てこなかった。やっぱ言わないと伝わらないか。まあその内伝わるだろうから今話さなくてもいいや。軽い会話をしているとパート練の教室についた。
教室に入り、全員が椅子に座ると、パートリーダーが説明を始めた。
「9月の文化祭まで、あと1ヶ月です。それに向けて、みんなで完璧にしていきましょう!」




