デビューシングル「希望の花言葉」2
5人の弁当の量は、だいたい同じくらいだった。私が一番に食べ終わった。次になっきぃ、そかか、かわみん、なーなん。全員が食べ終わったのは11時40分だった。なーなんは食べるのが遅いのか。
12時になる少し前にプロデューサーが再び現れた。彼は私たちをバスに乗せ、こう言った。
「それでは移動を開始します。今回行くのは5箇所です。全て市内です」
お露目会の時と同じバスに揺られ、まずは10分もかからずに着く海辺に行く。
N海岸。私にとって特に思い入れのある場所ではないが、海と聞くといつも心が躍る。PVでは、海ではしゃいでる姿が使われるらしい。泳ぐのは好きではないけど、台本なしで適当にやってくれればいい、っていっていた。ダンスはここではしないらしい。
潮風に吹かれて、階段の脇に花が咲いている。私たち5人はその花に目を傾け、色々話した。どうしてこんなところに寂しく咲いているのだろう?
その答えがわかる前に、プロデューサーは私たちを集合させ、一緒に次の場所へ向かった。海から車で20分ほどの場所にある、公民館的な場所であった。
「希望の花言葉は、花に興味を持った少女たちが、花に詳しい方に話を聞く、というストーリーのMVになります。ここでは話を聞いているシーンの撮影となります」
私はここに来たことはないが、かわみんが1回小学校の頃の社会科見学で来た!と騒いでいた。
そして、ダンスの撮影場、道端花MVの道路、ナツアオソラMVの公園。5つの場所をめぐってからバスに乗ってビルまで戻ると、もう15時を回っていた。
「お疲れ様でした!それでは解散となります。」
私は、お疲れ様でした、と挨拶を返す。その後マネージャーの高橋さんが、家まで送迎してくれた。ありがとう。
家に着いたら16時を回ったところだった。親はまだ帰っていない。私はTVをつけ、マネージャーにLineでTwitterのIDを送った。
「こちらが私のTwitterアカウントです」送信され数十秒で既読が付いた。返信待ちながらテレビを見ていると、数分後にプッシュ通知が届いていた事に気づいた。
「このアカウント、恐らく昔から使われている者だと思うので、新しく作った方が良いかと思います」そんな趣旨のメッセージ。
確かに、と思って私は新しくIDを作った。名前の後ろに「@ヘリアンサスガールズ」をつけ、見て自分のアカウントだということがわかるようにしておいた。
「新しくアカウント撮ったので、これでお願いします」私は高橋さんに返信した。すると、数十分後、次のメッセージが届いた。
「Twitterアカウント、了解いたしました。もう1点連絡があります。
1stアルバムの曲・センター発表は9月18日、日曜日です。その日までに、先日聞いていただいた3曲をある程度歌えるようにしていただきます。コチラに曲の音源・歌詞を用意しておいたので、時間があれば練習しておいてくれると助かります。
(URL)
次回の集合は8日となります。10時に送迎いたしますので、宜しくお願いします」
私は「ありがとうございます」と送り、URLをタップした。そこには、先日聞いた3曲と歌詞のテキストファイルがある。もう1度ゆっくり聞いてみたが、特に変わっている部分はないようだった。希望の花言葉の練習が大きな壁になりそうだが、1か月もあればダンスを含めても大丈夫だよね、と自分に言い聞かせた。
私は歌詞を覚えるために、部屋にあったA4の白紙に書きなぐった。
・希望の花言葉 歌詞
心に風が吹いて
言い残したあれこれ
どのみちに行けばいいの?
わからないままで
冷たい息は語る
別れの時期が来ると
自分の過去の思いに
囚われたくない
進みたい道の先
霞んでて見えない?
心の奥から 湧き上がる
どうしようもない不安は
聞こえない風の中 空に靡く雲
永遠などないって 僕に語りかけてる
選んだ自分の道 心に咲く花
道のどこかに光る 自分だけの未来
月明かりに照らされ うっすら見える足跡
先人などいなかった 初めての道も
暗闇はすぐ晴れる 洞窟の出口へ
輝く未来と 憧れは 道端花の花言葉
続くその道の先 見えなくなっても
いつかはたどり着くよ 夢を諦めないで
交差点の信号 三叉路の先へ
直感を信じよう 未知の帰り道を
未来は 待ち受けてるものじゃないんだよ
さあ 掴みにゆこう
聞こえない風の中 空に靡く雲
永遠などないって 僕に語りかけてる
選んだ自分の道 心に咲く花
道のどこかに光る 自分だけの未来
ここからは僕たちが 道を開くんだ
後悔はもう捨てて 新しい世界へと
ヘリアンサスの花は 太陽に微笑む
一人一人の色を 咲かせ 次の明日へ
・ナツアオソラ 歌詞
雨が降った 6月に
梅雨が伸びて 7月も
空が晴れず 僕たちの
ココロが今 暗くても
台風だって 雷だって
土砂降りでも 明日は晴れるよ
これだけの希望を持ち
空を 見上げたら
雲はなく どこまでも
すける夏の青
ミライ 晴空に
この想い 高く上げ
僕は 空へ行く
「今日の天気、曇り空
明日の天気、雨が降る」
そのうち空晴れるなら
僕の想い 伝わるはず
ココロのドア 開いた先
何があるか わからない
だけれど
迷わずに 走り出そう
次は 僕たちが
大空に 声をあげ
遠く響かせて
たとえ この声が
途切れても 僕たちは
愛を 送るから
君のところへ
僕のところへ
声を出して 叫べば
曇りの この空も いつか 晴れる
きっと 君と僕
永遠に長い距離
徐々に 駆け抜けて
ミライ 晴空に
この想い 高く上げ
僕ら 空へ行く
・道端花 歌詞
いつもの道 脇に咲いた
塀の陰で 日奪われた
そんな花に 目が止まる
だけど僕には 勇気がなく
町風に 吹かれてる
道端の その花に
信号 緑に なるまで
片目向けてるだけ
誰にも 気づかれず しおれた 花は咲き
街角 青い空 仰ぐように そこにいた
朝の早く 見つけた花
朝日昇る その瞬間
花の上に 落ちた露を
最後見たのは いつだろうか
枯れかけた その花に 雨が降り 咲き還る
しぼんだ 蕾が もう一度開く日が来る
未来は目の前だ
再び花が咲き
目の前 強く生え
僕の心 癒す日が
届かない 僕の声 足元に つぶやけば
花びら 散らして 優しく微笑んでくれた
梅雨前 晴れ空の 眩しい 日差し受け
その花 弾けとび 僕の心 強くした




