季節はずれの花火
詩・短編を書いてみました
気に入っていただけるか分かりませんが
一生懸命に書いてみました(^_^)
1000文字以内で書いてあります
物語の断片や本の1ページのようなモノだと思いながら
暇なときにでも読んで
楽しんで頂けると幸いです(^_^)
澄んだ空気が僕達を包む冬の夜
今日は
今の季節には珍しい花火大会の花火を見に行く予定で
僕と幼なじみの彼女は突き刺さるような寒気から身を守ろうと
防寒着のポケットに袖口と一緒に手を突っ込みながら
花火が良く見える高台へ行き
そこのベンチに座って
花火大会が始まるのを待っていた
静けさが僕達を支配し
聞こえるのは互いの呼吸音だけ
デートでもないのに妙に緊張してしまう
そんな時間に終わりを付けたのは
花火大会の開始を知らせるアナウンスだった
開始時刻と同時に花火が打ち上がり
雲1つ無く無数に輝いた星々が広がった夜空に
大小様々な花火が夜空に花を咲かせた
彼女はその一つ一つに声をあげてくれて
どうやら楽しんでくれているみたい…
正直に言うと
彼女をここに連れてきたことは不安で一杯だった
今の彼女は多くの事を考えないといけない時期だったから
でも
喜んでくれる彼女を見れてよかった
少し心の荷がおりた…
それから
たくさんの花火が打ち上がり
気がつけば
次が最後の花火のようだ
アナウンスの掛け声の後に
花火大会のフィナーレを飾る3尺玉が打ち上がる
空中で火薬に火が着くと
大きい枝が垂れた柳の木のような見事な花火が夜空に描かれた
その美しさは
恋に興じていたカップルの会話をも止めてしまうほど…
彼女はそれを見ながら
失う時間を名残惜しそうな顔で「綺麗…」と呟いた
今の彼女はどんなことを思っているのだろう
未来の事を考えているのだろうか?
それとも
過去の事を考えているのだろうか?
どっちにしても
彼女が何か考えていると思うと泣きそうになる
2発目が上がる
すると
その花火を合図に彼女は僕の前に立って大きく手を広げて
こう言った
「私ね。夢があるの!」
僕は彼女の突然の行動に驚きながらも
それを止めることなく
その想いを聞いた
「私は世界を回ってね、色んな文化や文明を見て、たくさんの人に出会って、笑って泣いて喜んで怒って………」
彼女はたくさんの夢を笑顔で語ってくれた
その笑顔はどこか清々しく
悲しそうだった
多分
先の運命を憎みながらも受け入れている
そんな笑顔なのだろう
彼女が想いを吐き出しきるのと同時に花火大会も終わり
僕は今日の事を頭に刻み込んで彼女と一緒に家へと帰った
それから数年後
彼女はこの世を去った
実はあの花火大会のとき
彼女は末期ガンを患っていた
死ぬのをただ待つ日々に連日泣いて泣いて泣いて…
そんな彼女を見れなくなった僕は病弱な彼女を無理矢理
花火大会へ連れていった
何か少しでも彼女の笑顔に繋がればと…
葬式が終わった帰り道
空を見ながら僕は彼女の事を思い出していた
「夢がある」か…
なら
君の代わりに僕が世界を回ろうかな
それは自分の為なのかもしれない
でも
その僅かな何かが
次に繋がっていくのなら嬉しいと思ったんだ…