オリエント連邦について
これは2018年にクリスマス企画兼資料集として投稿したものです。
「スターライガ」「スターライガ∞」に登場する国家「オリエント連邦」の設定を纏めています。
本編のストーリー進行に伴い加筆修正されると思うので、その時は再度ご確認ください。
※現在は「スターライガ∞」開始時点の情報を掲載しています。
オリエント連邦(英語表記:Olient Federation)はユーラシア大陸北部にある単一国家。国名に冠している「連邦」は象徴的な意味合いが強く、実質的な政治体制は中央集権的とされる。
・データ(栖歴2132年時点)
国の標語:「勇敢にして先駆者であれ」
国歌:ウィルト-グレンドル・オリエンティア-ヘムリヌト(日本語訳:白き大地は我らが故郷)
公用語:現代オリエント語
首都:ラッツェンベルグ
最大の都市:ヴワル
国家元首:オフィーリア・カラドボルグ(連邦首相)
面積:世界2位(スペースコロニー除く)
人口:地球上約2000万人+スペースコロニー約320万人(世界32位)
GDP:29兆9444億ドル(世界1位)
建国:1世紀頃?(諸説あり)
通貨:クリエン(国際通貨コード:OLC)
タイムゾーン:UTC+6
国名コード:OLI/OL
ccTLD:.ol
国際電話番号:77
国技:犬ぞりレース
国鳥:フェニックス、ワシミミズク(対外的にはこちらが主流)
国花:セイヨウウスユキソウ(エーデルワイス)
・国名
国名の「オリエント(Olient)」はオリエント古語で「我々」を意味している。
東方を意味する「オリエント(Orient)」とは発音が偶然似ているだけで全く関連性は無いが、オリエント人は皮肉を込めて「ヨーロッパから見て東の方にある国」と語ることも多い。
ちなみに、連邦法においては「『オリエント連邦』が国名である」と定義されており、国民も「オリエント」や「連邦」といった砕けた表現はあまり使わない。
・歴史
オリエント連邦は栖歴2000年の隕石災害「終末の5日間」が終息した後、俗に「オリエント圏」と呼ばれる周辺国共々突如ユーラシア大陸北部に現れた国家である。
1999年以前の記録が断片的であることから詳細は不明だが、各地に遺された神話が事実なら1世紀頃には既に建国され、戦乱に満ちた血みどろの歴史を歩んできたと考えられている。
ロシアの領土を潰すように現れたこの大国は当然パワーバランスを揺るがす存在となり、出現以来20年に亘って人知れずロシアと冷戦状態を展開することになる。
ところが、この睨み合いは2027年に終わりを迎える。
同じ年、かつてフィクションの世界でしか語られなかった異星人の襲来――「第1次フロリア戦役」が起きたからだ。
一時期は約85%の土地を占領され追い詰められた地球側だったが、フロリア星人から鹵獲した兵器を基に開発された機動兵器「モビルフォーミュラ(MF)」の実用化で戦局が覆ったのはよく知られている。
この時、列強諸国の反発を押し切ってMFの大量配備を訴えたのがオリエント連邦であり、フロリア星人の侵攻から国土を防衛しつつ運用ノウハウを蓄積。
戦争末期には日米露の所謂「ビッグ3」を差し置いて対フロリア戦争の主力を担い、勝利に少なからず貢献することとなった。
活躍を認められたオリエント連邦は2032年に国連加盟及び常任理事国入りを果たし、やがて日米による支配体制を揺るがすほどの影響力を持ち始める。
その後もフロリア残党の2度にわたる武力蜂起や諸外国との貿易摩擦といった困難を乗り越え、人類初のマスドライバーや軌道エレベータの実用化、スペースコロニーの建設及び移民開始など宇宙開発においては常に先駆者であり続けている。
・政治
国家元首である連邦首相は直接選挙によって選ばれる。
任期は最大5年、連続就任の上限は15年(4選禁止)となっているが、連邦政府議会は首相に対し不信任決議案を提出できる権限を持つ。
なお、建国以来大統領職が置かれたことは一度も無く、現代オリエント語で国家元首を意味する「プレシディア」も本来は首相だけを指していた。
立法を担う連邦政府議会(議員定数320人)は一院制を採用している。
議員はオリエント連邦内の市長24人、各スペースコロニーの代表者10人、連邦法で指名された「上流階級」と呼ばれる世襲貴族の代表者32人(一族につき1人)を除き、比例代表制によって選出される。
オリエント連邦は無党制を採用する唯一の先進国だが、これは連邦法により政党の組織が禁じられているためである。
司法は上位から順に連邦最高裁判所、連邦地方裁判所、市裁判所、地区裁判所などが存在する。
オリエント連邦の裁判制度は機密性が強いとされており、一般市民による傍聴や陪審制は認められていない。
犯罪発生率が世界で最も低い国として知られるが、それは重犯罪に対する刑罰を厳罰化しているからである。
刑務所の運営コストを抑えるため終身刑は存在せず、懲役の上には死刑が設定されている。
つまり、他国なら終身刑で済む犯罪が死刑として処理されることが多く、一部の人権団体からは非難の声が挙がっている。
・国際関係
オリエント連邦は全ての国連加盟国及び国連総会オブザーバーをランク分けし、外交においてはそれに基づいた行動を取っている。
なお、スターライガシリーズの世界では隕石災害により消滅した国家が数多くあるため、「現実世界」の常識が通用しないことに留意されたい。
最上位の「ランク・アルフェ」にはかつて連邦を構成していたオリエント圏の国々、現在は友好国として歩んでいるロシア、経済分野で提携関係を結ぶウクライナ、文化交流が盛んな北欧諸国(ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、デンマーク、アイスランド)が含まれている。
次点の「ランク・ヴィルタ」は日本やアメリカ、イギリスといった主要先進国が振り分けられている。
これらの国々――特に日米とは決して良好な関係とは言えないが、多極体制を構成する国家の一つとして競争の過激化は避けるよう協力し合っている。
ちなみに、このランクに位置付けられているアジア地域の国家は日本だけである。
「ランク・グンマ」は前述の2つに入らないヨーロッパやアジア、中南米の小国などが該当する。
この辺りになるとオリエント人が知らない国が出てくるようになる。
そして、オリエント連邦が国家承認を行っていないのが「アマサト(現代オリエント語で未熟者の意)」と呼ばれる国々である。
これらは基本的に国家として認められておらず、互いの国民の往来すら禁止されている。
・軍事
オリエント連邦の軍隊である「オリエント国防軍」は優秀な人材と強力な装備を擁し、古来より数多くの実戦を経験してきたことから「世界最強の軍隊」と評される。
専守防衛を主任務とする国防陸軍、多数の全領域艦艇を運用し宇宙でも活動できる国防海軍、少数精鋭主義で誇り高き国防空軍の三軍を有しており、21世紀以降はモビルフォーミュラを主力とする空軍の活躍が特に目覚ましい。
度々増強を進めている三軍の総兵力は約100万人に達し、これは国民の約4%が軍役に就いていることを意味する。
国防軍の起源とされる「オリエント騎士団」の伝統を受け継ぎ、恒久的な徴兵制度は設けられていない。
オリエント連邦は世界で最も軍需産業が盛んな国の一つであり、同国製の兵器は特にオリエント圏において極めて高いシェアを誇る。
優れた技術力と潤沢な予算を持つことから国際共同開発には消極的な傾向が見られ、ライセンス生産も含め国防軍向けの兵器は完全国産化が図られている。
また、22世紀の民間軍事会社と言われる「プライベーター」の積極的な利用も進んでおり、近年は国防軍の予備役を縮小し有事の際に同郷のプライベーターと契約する方針へ転換しつつある。
・行政区分
行政区分は24の「市(City)」と63の「区(Borough)」、区の下に位置する「地域(Region)」の3種類がメインとなっている。
一つ一つの規模は比較的大きく、オリエント連邦の市は日本の「都道府県」に相当する。
また、既存の区分に当てはまらない地域である10の「特別区(Exceptional Borough)」、4の「地下区画(Geofront)」、10のスペースコロニー群(S.C.)には区と同等以上の権限が与えられている。
行政上公式に名前が充てられているのは市と区だけであり、地域とスペースコロニーに関してはコードナンバーや非公式愛称で区別されている。
例えば、連邦議事堂の所在地は「ラッツェンベルグ市ラッツェンベルグ区3-22」と表記されるが、実際には市を省略したり単に「議事堂」と呼ばれることが多い。
コロニー内の住所は「コロニーコードナンバー+地域コードナンバー」で表すことができ、世界初のスペースコロニーである「ジ・アーク」の役所は「S.C.01-1」という区画に置かれている。
ちなみに、出生届の届け先が市役所及び区役所(地域役場は代行業務のみ)になっているためか、オリエント人の出身地は「○○市××区」「コロニーの非公式愛称」というように地域を略して表記される。
オリエント連邦には人口100万人以上の都市が10存在し、最大の規模を誇るヴワル市では北部の独立後(現在のルドヴィレ市)も約360万人が暮らしている。
首都ラッツェンベルグは僅かに少ない320万人、次点で165万人のジェラースが続く。
以下人口が多い順にレティシア(142万人)、ヴォヤージュ(130万人)、チルノイル(122万人)、ルドヴィレ(119万人)、スワ(115万人)、スプリングフィールド(111万人)、サイヨウ(102万人)となっている。
これら「メトロポリス」にスペースコロニーを除いた総人口の約85%が集中しており、残る14都市を足した人口はラッツェンベルグ市にほぼ等しい。
また、歴史的経緯から開発が遅かったリペリング山脈以南の3都市(ナズール、グリネ、センナ)はコンパクト化が図られているため、大きな市の一区に負けるほど人口が少ない。
特にナズールは観光都市として有名だが、経済規模のわりに住民は多くない(約66万人)とされている。
・地理
かつて「シベリア」と呼ばれていた地域を押し潰すように現れたオリエント連邦の国土面積は世界最大のカナダに次ぎ、ユーラシア大陸において最も巨大な国となっている。
また、スペースコロニーというカタチで宇宙空間に領土を有する唯一の国家でもある。
国土の約15%が北極圏に入るほど高緯度に位置するが、中部から北極海沿岸部にかけて広大な平原とタイガの針葉樹林を有している。
ロシアと隣接する西部にはウラル山脈が残っており、かつてはこの山脈が軍事境界線となっていた。
東部には隕石災害の影響により生まれた「北ユーラシア大砂漠」から寒冷な国土を護るようにヴェールヌイ山脈が鎮座し、陸路による東西からの侵攻を阻み続けている。
また、領土内の南部には国民から「霊峰」として恐れられるガングート山、未だ誰一人として登頂を成し遂げていない「難攻不落」のレオモンタル山、そしてオリエント連邦最高峰の「星の海に最も近い場所」ロズベリ山など、多数の8000m峰を抱える大山脈「リペリング山脈」が横たわっている。
国土を囲む海域は北の北極海と南のペレス海だけであり、国土面積に反して海岸線の距離は短い。
領海内に存在する大きな島は北極海側のクビアト島ぐらいしかなく、性格的には内陸国に近いといえる。
ペレス海に関しては全海域を実効支配しているが、かつての連邦構成国の一つ「イチピカ王国」との間に領土問題を抱えている。
主要な水系としては国土の真ん中に位置する世界最大級の淡水湖であるヴワル湖、そしてこの湖へと流入しているサンズ川やリルド川、別の湖からペレス海へ向かって流れるリペリング川、西部で最も長い河川であるエリダヌス川などが挙げられる。
ヴワル湖や南部のリペリング盆地などクレーターと思わしき地形が多数存在するため、大昔に多数の隕石が降り注いだことがあると推測されている。
四方を海と山脈に囲まれたオリエント連邦は防衛に適した地形を持つ国であり、幾度となく侵略者の脅威に晒されながらも全て退けてきた歴史を持つ。
空路からの侵攻に対しては防空システムの強化、宇宙規模での軍事作戦には哨戒任務による制宙権維持でそれぞれ対抗している。
・気候
ケッペンの気候区分では全土が亜寒帯及び寒帯に属し、年平均気温は約-2℃と非常に寒冷である。
オリエント語の辞書には独特な気候を指す「低温低湿」という言葉さえ存在している。
寒さ自体は北極海沿岸部のチルノイルやレティシアよりも内陸部の都市のほうが厳しく、スプリングフィールドやサンリゼといった盆地及び山間部では-30℃以下の最低気温を記録することも珍しくない。
一方、リペリング山脈の南に位置する都市の年平均気温は約7℃とかなり穏やかで、短い夏の間には20℃程度まで暑くなる。
リペリング山脈の山頂付近は地球上で最も寒い地域として知られている。
万年雪が降り積もるような山岳地帯は-90℃を下回る極寒地獄であり、動植物はおろか下手なバクテリアの活動さえ許さない「この世の果て」なのだ。
興味深いことに、この国の気候は従来の理論では説明し辛い傾向を持っている。
一般的に大陸性気候は寒暖差が激しいのだが、オリエント連邦は最も気温の差が大きいリペリング盆地(観測所はスプリングフィールド)でも極端な差は生じないとされる。
また、年間降水量の大半は10月後半~3月前半の冬に集中しており、降雨が少ないことから大半は雪として降り積もる。
オリエント圏の気候は研究対象として学会から関心を寄せられているが、未だ詳しい解明には至っていない。
・経済
オリエント連邦は世界で最も経済的に豊かな国であり、尚且つ財政面も長期に亘り安定していると評される。
GDPは国連加盟時の2032年時点で既に世界3位だったが、2060年代には自動車産業の不振に苦しむ日本を追い抜いて2位へ浮上。
そして、2085年にアメリカを上回ってからは約50年に亘り「世界一の経済大国」の座を維持し続けている。
国民総所得(GNI)に関しても2050年に当時世界一だったノルウェーをかわし、国家の繁栄が国民の豊かさへ繋がる社会が構築されている。
この国の経済を支える要素の一つが豊富な地下資源である。
鉄やアルミニウムといったベースメタルから金や銀に代表される貴金属、そしてリモネシウムのようなレアメタルまで幅広く採掘可能な鉱脈をヴェールヌイ山脈方面に多数擁し、石炭及び天然ガス含む多種多様な鉱物資源の一部を輸出することで莫大な外貨を獲得している。
また、中部及び東部の広範囲に亘って良質な油田が点在しており、「オリエント産石油」の登場がかつてオイルマネーで潤っていた中東諸国を大不況へ追い込んだだけでなく、原油価格――そして世界情勢にも少なくない影響を及ぼした。
東部のヘルヴェスティアやサンリゼ、気候が穏やかな南部地方では厳しい冬に負けない農業も盛んに行われている。
特にヘルヴェスティアは寒冷ながら世界有数の穀倉地帯として知られており、小麦や大麦といった麦類を世界各国へ輸出することでも外貨を獲得している。
元々の人口が少ないことから多めに輸出しても食料自給率は高い数値を維持でき、大きな戦争が起こっても食糧難に陥りにくいという国防上の強みを持つ。
事実、第1次フロリア戦役終結後の世界的な戦後混乱期には食糧支援を行い、多くの途上国を大飢饉から救った。
軌道エレベータやスペースコロニーの建設技術を見れば分かるように、メガストラクチャー分野にも長けている。
オリエント圏やヨーロッパ諸国ではオリエント連邦の企業が担当した高層建築物が多数見られる。
主要な貿易相手国はロシア、スウェーデン、ウクライナ、日本、アメリカ、フィンランド、ノルウェーなどである。
日本からは自動車や電子機器を大量に輸入する一方、天然資源が乏しい同国へ鉱物資源を輸出している。
オリエント連邦に本社を置く有名企業としては世界初のモビルフォーミュラメーカーであるアークバード、重化学工業を得意とするナトリ重工、スノーモービルやATVの開発に長けるマドックス、下請けから独立MFメーカーとなったRMロックフォードなどが挙げられる。
・交通
積雪に強い鉄道はオリエント連邦において最初に発達した交通機関の一つである。
旅客機が普及する以前の全盛期にはヴワルやラッツェンベルグから地方都市へ向かうように鉄道網が張り巡らされ、2132年現在もルートを維持しつつ設備を近代化した路線が数多く使われている。
厳しい天候に耐えられるよう、地下鉄のような第三軌条方式で集電するシステムを採用している。
また、一部の大都市及びジオフロントがあるエソテリアでは地下鉄も運行されている。
道路は日本やイギリスと同じ左側通行を採用しており、この関係で日本車の輸入が盛んに行われている。
頻繁に路面が凍結することから高速道路網の整備は進んでいなかったが、ロードヒーティングの全国的な敷設後は代替滑走路を兼ねた高速道路が主要都市と地方都市を結ぶようになった。
市内で交通渋滞が起こりやすいヴワル及びラッツェンベルグには環状道路が存在し、迅速な移動を可能としている。
広大な国土(連邦時代はさらに広かった)を抱えるオリエント連邦では、航空機による旅客輸送が1930年代の時点で行われていた記録が残されている。
国内線と長距離国際線はフラッグキャリアであるエア・オリエント、短距離国際線とチャーター便はスタークルーザーという二大エアラインがシェアをほぼ独占している。
地上と宇宙を往来する手段としてヴワル市郊外に世界初の軌道エレベータ「ステルヴィオ」が建設されており、このメガストラクチャーの登場により地球人類が気軽に宇宙へ行ける時代が到来した。
空陸宇の交通網が充実している一方、水上交通はあまり盛んではない。
領土内の都市が全て陸続きであるため旅客船の必要性は薄く、代わりに海沿いの大都市は巨大コンビナートを形成することで貨物船の受け入れを行っている。
・国民
オリエント連邦含むオリエント圏の国々では我々ホモ・サピエンス・サピエンスとは別種の人間「ホモ・ステッラ・トランスウォランス」が全人口の99.2%を占めている。
残る0.8%は2030年代以降増加した外国人移住者や赴任中の外資系企業の社員である。
かつては地球へ亡命してきたフロリア星人も少数暮らしていたが、彼らとオリエント人の混血が進んだ結果、2090年を以って純血の地球居住フロリア星人は誰もいなくなった。
人口動態は戦争による増減を除けば安定しており、1960年代以降は約2300万人で推移し続けている。
ホモ・ステッラ・トランスウォランスの生物学的な性質上、平均寿命は他国と比べても非常に長い。
2130年の国勢調査時には女性が166.8歳、男性も164.1歳と記録されている。
オリエント人の史上最高齢は215歳で天寿を全うしたロヴィーサ・ストランドマン(1897~2112)という女性であり、男性ではマックス・リリエンハイム(1892~2102)が210歳没という長寿記録を遺している。
性別比はオリエント圏の宿命で女9.6:男0.4と極端なまでに偏っており、「ミツバチのような社会」「巨大なアリの巣」に喩えられることも多い(働きバチや働きアリはメスである)。
旧連邦構成国の多くが男性の社会進出を進める中、オリエント連邦は国家としての成熟が早かったことで古い価値観に固執してしまい、21世紀初頭まで「名家に婿入りするか慰み者として生きるか」と言われるほど男性の立場は弱かった。
それに加えてホモ・ステッラ・トランスウォランスは女性同士でも繁殖できる以上、従順且つ非力で大人しいオリエント人男性はオスとしての役割さえほとんど果たせず、「ただ希少価値が高いだけの存在」として生きるしかなかったのである。
2020年代以降は国連加盟の条件として「女尊男卑の是正」などを求められたこともあり、旧連邦構成国と同等以上の水準まで男性の待遇改善が為されている。
結婚可能になる年齢は義務教育終了と同じ18歳からである(成人年齢は22歳)。
結婚後のファミリーネームは同姓と別姓を選択できるが、統計では同姓の夫婦が80%を占めている。
なお、性別比の都合上女性による同性婚の敷居が低く、母国で結婚できない同性カップルがオリエント連邦へ移住し婚姻届を提出する事例も少なくない。
現在のオリエント連邦は総人口の96%を占める「オリン族」による単一民族国家だが、広大な国土を持つ連邦時代には多種多様な民族が一つの国旗の下にいた。
オリン族以外の大半は「純化」と呼ばれる強硬的な同化政策の過程で併合された民族であり、彼女らは20世紀末期の連邦制崩壊と共に独立運動を起こす。
その結果、「メルンハイム公国」「ラオシェン共和国」「ノルキア聖王国」といったオリエント圏の国々が相次いで連邦からの独立を果たした。
なお、連邦制崩壊後もオリン族との共存を選んだ「エルフ族」及び「アカバ族」という少数民族が残り4%を占めており、彼女らはオリン族の社会に溶け込んでいる。
・言語
オリエント語には大きく分けて「現代オリエント語」と「オリエント古語」の2種類が存在するが、公用語に制定されているのは前者である。
オリエント古語は人名や地名など固有名詞として残っているほか、学術研究や文学作品で度々用いられる。
一例を挙げれば前述の「ステルヴィオ」はオリエント古語由来の言葉であり、「星へ至る道」を意味している。
日常会話で使用されるのは現代オリエント語一択であるものの、マルチリンガルの国民は決して少なくない。
この現象は大学の卒業資格に「最低1種類の外国語の修得」が含まれていることから生じており、特に高学歴者に多く見受けられる。
現代オリエント語は外来語を積極的に取り入れる傾向があり、近年はイギリス英語やロシア語から強い影響を受けている。
日本語由来の外来語も少なからず存在し、「コミケ」「ラノベ」「ロリコン」「カミカゼ」「ヘンタイ」など日常会話レベルで伝わる言葉は多い。
また、日本製のアニメやゲームをローカライズする際も作中用語(キャラクター名など)はオリジナル版を尊重するため、日本とオリエント連邦のサブカルチャー分野は交流が盛んなことで知られている。
・宗教
連邦時代から政教分離原則の徹底に基づいた「無宗教(≠無神論)」を国是としており、現在の連邦法においても宗教信仰の自由はほとんど認められていない。
オリエント人の子どもたちは幼少期から宗教が人類へもたらす問題について教えられ、「宗教を信じるな、宗教を創るな、信者に深く関わるな」という「三原則」を叩き込まれることになる。
あくまでも法律上は「宗教の弾圧を目的とするものではない」とされているが、一神教の信者に対する不利な扱いなど、国外からは宗教差別の常態化を厳しく非難する声も挙がっている。
なお、前述の通り神の存在を否定しているわけではなく、オリエント圏で馴染み深いオリエント神話には32の女神が登場している。
・福祉
先進国の多くが国民の経済格差の対策に悩む中、オリエント連邦は潤沢な国家予算の一部をノルディックモデルに基づいた福祉政策へ投資することで格差社会の「撲滅」を図っている。
世界一高いと言われる税率(高福祉高負担国家)と引き換えに医療費や教育費の無償化を実現し、国連常任理事国の中では唯一ベーシックインカムを導入している。
なお、連邦政府議会に議席を持つ上流階級の一族、国家公務員、総資産額1億クリエン以上の国民は原則としてベーシックインカムを受給することはできない。
・教育
義務教育は3-3-3-3の12年制であり、旧連邦構成国もこのフォーマットを受け継いでいる。
具体的には7~9歳が「幼年学校」、10~12歳が「小学校」、13~15歳が「中等学校」、そして16~18歳のティーンエイジャーが「高等学校」でそれぞれ教育を受ける。
義務教育に含まれない大学は全て4年制を採用している。
連邦法により中等学校以下は公立校しか認められていないため、ほとんどの子どもたちは大学または特定の高校への進学を志望した際に初めて入試を経験することになる。
高校入試に関しては「あくまでも私立高校及び大学附属高校への進学希望者が受ける者」とされており、公立高校へ進むのなら特に受ける必要は無い(腕試しを兼ねて参加する物好きもいるが)。
なお、高校入試に失敗した場合は「滑り止め」に指定されている公立高校へと入学する。
学期は春が訪れる4月から始まり、8月の短い夏休みや12~1月の冬休みを挟んで翌年2月に終わる変則的な2学期制を採用している。
中等学校までは情緒教育、高等学校では社会教育、大学では専門教育及び外国語教育にそれぞれ重点が置かれており、一人の子どもに掛ける時間や教育費は非常に多い。
教育システムの一長一短はともかく、オリエント連邦の教育水準は世界有数のレベルにあると評されている。
・メディア
連邦時代は国内のあらゆるメディアが政府に掌握され、報道の自由は無きに等しかった。
連邦制崩壊前後から民間企業の放送業界参入が認められるようになり、現在は全てのテレビ局及びラジオ局が民営化(かつて国営放送だった連邦放送協会含む)されている。
新聞はあまり盛んには読まれていないが、東部や南部では地方新聞の購読者が一定数存在する。
・建築
軌道エレベータやスペースコロニーなど現在はメガストラクチャー分野での活躍が目立つが、国内に目を向ければ歴史資料となり得る古城や古代遺跡がいくつも残されている。
その中にはかつて名家が暮らしていた「オロルクリフ城跡地」や先史時代の作品といわれる「エソテリア洞窟壁画」、中世時代の英雄が埋葬されているという「レティシアの丘」など世界遺産も含まれている。
・文学
オリエント連邦において最も有名な文学作品は「勇者レティシアの叙事詩」である。
前述の「レティシアの丘」に眠る英雄を題材とするこの作品は、登場から約600年を迎えた現代においても「オリエント人が目指すべき姿」として幅広い年齢層に愛され続けている。
これに限らずオリエント圏の伝統文学は英雄伝説や騎士道、そして血塗られた戦争史を題材としていることが多い。
21世紀以降は日本のライトノベルも若年層を中心に読まれるようになり、彼女らの中から「ナロウ」と呼ばれるオリエント流の異世界転生小説を書く作家も生まれている。
著名な作家としては「勇者レティシアの叙事詩」の原作者とされる吟遊詩人トギレッタ、言論統制が最も厳しい1930~60年代にかけて活躍したカヤプテワ・ビヲルコワ、名家の女性当主と少年奴隷の悲恋を描いた「恋の炎」の作者キミ・コバライネンなどが知られている。
・音楽
オリエント人の祖先たちは洞窟壁画を描いていたのと同時代に「歌」を覚え、それから程無くして打楽器を作ったと推測されている。
伝統音楽においてはヴァイオリンに似た弦楽器やピアノのような鍵盤楽器が用いられていたらしく、その頃の記憶が遺伝子に刻まれているのか、現代のオリエント人もヴァイオリンとピアノの音色を好む傾向がある。
連邦時代には伝統音楽に加えてオーケストラや電子音楽の普及が推し進められ、21世紀以降は日本のサブカルチャーの影響を受けたゲームBGMやアニメソング風の新たな音楽も人気を博している。
著名な音楽家としては名門シャルラハロート家のお抱え作曲家だったノピヌジ・ペーリ、「歌姫」という異名で知られる伝説的歌手のローズ=マリー・ブラギ、2050~70年代にかけて一世を風靡したアイドル歌手のルチル・ローレライなどが挙げられる。
・美術
前述のようにオリエント人の美術への興味は洞窟壁画の時代から始まっていた。
中世から19世紀にかけて上流階級の名家は一族の栄華を讃える美術品の制作を芸術家へ依頼し、莫大な援助を受けた彼女らは歴史的価値が高い絵画や彫刻を多数残している。
文学や音楽と同じく21世紀以降は「マンガ」や「アニメ」を筆頭とする外国文化の影響を受けるようになり、日本の作品向けにイラストを提供するオリエント人イラストレーターも増えてきている。
画家ではエウフェミア・クエジャル、彫刻家ではシズエ・ヴァン・エムデンなどが名家の「お気に入り」として寵愛を受けた。
また、連邦時代にはマーリア・キースキネンに代表される前衛芸術家たちが「国家公認芸術者」として重用され、当時を窺い知れる貴重な作品を残している。
ネットワーク社会が到来した21世紀以降はデジタルイラストをネット上で公開する「現代絵師」を輩出しており、日本ではアンナ=マーヤ・サムエルソンやリリー・ラヴェンツァリがライトノベルの表紙絵を担当したことで有名となった。
・映画
オリエント連邦史上初の映画は1899年に生まれたと考えられている。
これはシャルラハロート家の家督継承式を記録した映像であり、オリジナルのフィルムは一族の家宝として保存されているという。
一方、物語性を持つ劇映画も1902年に制作され、この作品は「勇者レティシアの叙事詩」をオマージュした短編映画だった。
連邦時代は「芸術性の高い文化」として映画の制作・観賞が国を挙げて奨励されていたため、オリエント映画が名実共に黄金期を迎えただけでなく、外国映画の輸入も盛んに行われている。
21世紀以降はハリウッド映画などに押され国産映画の人気は下火となっているが、芸術大学で演技を学んだ実力派俳優を輩出しているほか、広大且つ自然豊かな国土を活かした撮影場所の提供など、世界の映画界に対する貢献は大きい。
・食文化
オリエント人のほぼ全体を占めるホモ・ステッラ・トランスウォランスは肉食性が強い雑食動物であり、農耕を覚え穀物を得るようになる以前は獣肉や魚を主食にコケモモを時折食していたという。
約1万2000年前に穀物が栽培されるようになってからはパンやパスタが主食として扱われているが、オリエント料理のメインは暖かい肉料理または魚料理にあると言っても過言では無い。
肉食が発達した背景には厳しい気候に起因する植物栽培の困難さ(農耕が安定化するのは中世になってから)が挙げられるほか、そもそもホモ・ステッラ・トランスウォランスは人体構造的に植物質の消化を苦手としており、菜食ばかりだと逆に体調を崩すためである。
寒冷地に位置していることから冷製料理はあまり見られず、伝統的な料理は必ず暖かい状態で供される。
オリエント発祥の料理で有名なものとしてはピロシキに似た揚げパン「ペートロフ」、フェットチーネのようなパスタにクリームソースをたっぷりかけた「フェネトキー」、鹿肉とタラを一緒に煮込んだスープ「ソウペ」、カキフライと揶揄される南部の郷土料理「クロエケルテ」、北部の郷土料理であるロールキャベツ風の「コルドルマ」、オリエント風ポテトサラダとも呼ばれる「サラデール・オルヴ」、コケモモのクッキー、ヘルヴェスティア・ビール、沸騰させた雪解け水で淹れる紅茶、ウォッカのような蒸留酒など枚挙に暇がない。
この中ではペートロフ、フェネトキー、サラデール・オルヴが国民食の地位を確立しており、国外のオリエント料理店でもよく提供されている。
他方、外国の食文化に対してもわりとリベラルな傾向が見られ、本家本元のピロシキやウクライナ料理のボルシチは21世紀以降の家庭料理として定着しつつある。
外食産業においてもハンバーガーやフィッシュ・アンド・チップス、パフェ、ラーメンなどを取り扱う大衆食堂が増えてきている。
基本的に何でも食べるといわれるオリエント人だが、「恩を仇で返してはならない」という理由から犬肉の流通・消費はタブー視されている(犬ぞりなどで人間のパートナーだったため)。
また、オリエント神話で「不浄な生物」とされた昆虫類を食することは完全にアウトである(蜂蜜は唯一の例外)。
所謂「ゲテモノ料理」が問題視される事例も多く、これを巡って他国と文化摩擦が起きることも少なくない。
・世界遺産
オリエント連邦には前述の3件を含めた計15件の世界遺産が存在している。
その内訳は文化遺産4件、自然遺産11件である。
また、軌道エレベータや初期のスペースコロニーは数百年維持できれば産業遺産になり得ると考えられている。
ただし、オリエント人は過去よりも未来を重要視する傾向が強く、世界遺産に対する関心が薄いとも指摘されている。
・祝祭日
諸外国と同じく1月1日は元日、5月1日はメーデー、そして12月25日はクリスマス(ヨーロッパからの輸入)となっている。
オリエント連邦独自の祝祭日としては勇者レティシアの日(1月22日)、第1次フロリア戦役終戦記念日(2月4日)、建国記念日(3月2日)、第2次フロリア戦役終戦記念日(6月11日)、死者の日(7月7日)、憲法記念日(8月9日)、宇宙移民の日(9月24日)、自由民主主義の日(11月5日)などがある。
年末年始休暇は約4週間(例年は12月下旬~翌年1月中旬まで)と長い部類に入る。
ちなみに、「対○○戦勝記念日」といった祝祭日は「敗戦国に対する挑発行為」と見做されるため制定されていない。
・スポーツ
リペリング山脈の麓など年間を通してウィンタースポーツを行える環境が各地に点在するため、冬季オリンピックでは毎回金メダルを争う強豪国として知られる。
夏季オリンピックにおいても2040年の初参加以来、必ず1個は金メダルを獲得している(最高記録は2072年大会の55個)。
開催実績は2132年時点で夏季オリンピックが2056年(ヴワル)、2080年(ヴォヤージュ)、2100年(ラッツェンベルグ)の3回、冬季オリンピックが2058年(レティシア)、2102年(ヴワル)、2126年(サンリゼ)の同じく3回となっている。
なお、2132年もレティシアでの夏季オリンピック開催を予定しているが、こちらはルナサリアンとの戦争により中止される可能性が高い。
国技である犬ぞりレースは産業革命以前の最盛期に比べるとかなり衰退してしまっているものの、北部地方における名物として競技会や観光客向けツアーが催されている。
犬ぞりレース界では技術力を活かした軽量且つ高強度なソリの製造に加え、優秀な犬種や人材の育成で知られており、世界レベルで活躍するチームも少なくない。
北部の都市チルノイルに本社を置くマドックスは元々犬ぞり用ソリの製作から始まった企業であり、現在もレジャー用から競技用まで幅広く取り扱っている。
産業革命によって移動手段としての犬ぞりが衰退すると、乗り手たちは原始的なスノーモービルや自動車の運転手へと転身していく。
実用化されたばかりの乗り物による冒険と競争が盛んだった歴史もあり、現在のオリエント連邦はイギリスに匹敵するモータースポーツ大国としての地位を築いている。
F1ではサンリゼリンク(2037年~)とヴワル市街地コース(2062年~)による1ヶ国2開催を認められているほか、アマチュアからプロフェッショナルまで様々なカテゴリーのレースが行われており、国内外で活躍する有力選手や強豪レーシングチームを数多く輩出している。
航空機の普及が比較的早かったためか、空軍黎明期から現代に至るまでエアレースも盛んに行われている。
背景としては戦争終結により軍を辞めさせられるパイロットの受け皿が必要だったこと、飛行機を製造可能な企業が比較的多かったこと、そして1910~30年代の上流階級が飛行機を「先進的で瀟洒な乗り物」として好んでいたことなどが挙げられる。
現代では第一線を退いた国防空軍パイロットが「純粋に操縦技術を試す場所」としてエアレースへ転向することが多く、逆に「有事の際は軍務に就くこと」を条件に軍の支援を受けるエアレーサーも存在する。
伝統的なスポーツとしては剣術の「ティアオイエツォン」や手技足技だけを駆使する格闘技「ナッコジャー」、スキー・オリエンテーリングに似た「ウィルトエドヴェンチュ」などがある。