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フェアリーブレイド ~旧き約定の剣と、新しき紲の剣~  作者: エキストリーム納豆
六. 精霊の道
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84. 狂獣討伐

 戦闘開始時にガメオが魔剣を抜いて白銀の鎧を呼び出した瞬間、チャンカは確かに気配が変わったのを感じた。

 彼女が言うところの強者のニオイに近いものだ。

 だがそれも所詮優れた道具頼みの借り物、そう思える範囲に留まる変化だった。


 しかしフロスギンに促され、ヴィリアンボゥに背中を押されて自らが最後の攻撃を担うと決断し駆け出した今はどうだ。

 強いかどうかで言うなら、多分さっきまでより上だ。

 でもそう言う事じゃない。


 あれは・・・アレは何だ?


 見る者の心身を凍り付かせるような恐ろしく悍ましい殺気と、目を離せないあれほどの美しさをヒトは同時に放てるものなのか!?




~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~




 巨獣は既に二本の首と胴体のかなりの部分を失っており、残りも幾条にも切り刻まれて致命傷一歩前と言った状態だ。

 それだけに必死に暴れて抵抗される可能性が非常に高いとも言え、本来ならこのまま押し切るのが望ましかった。


 元の討伐プランは、ゼタニス、ヴィリアンボゥ、そしてフロスギンの後先考えては使えない切り札を初手でぶっ放して一気に決めるというものだった。

 先日討伐した魔物もそれを使用すれば単騎で撃破でしうるものだったが、いずれも使った直後に無力化や弱体化のある手段だ。

 故に倒し切れなかった場合や、また倒せても他の魔物に襲われる可能性を考えると本当に可能な限り使用を避けたい技と言えた。

 しかし防御を担う誰かが居るならその心配はない。

 無論、背中を預けるに足る相手でなければその役目は負わせられないが。


 三行程の内二つと半分までは順調に行ったと言っていいだろう。

 だがフロスギンのメインウェポンである斧が破損するという緊急事態により、危険な土壇場近くでの変更が発生した。


 そして今、ガメオが咆哮と共に駆けていた。


 主武装の斧を失いながらも強化状態の≪鬼人化≫はまだ解けていないフロスギンは、左手の鉤爪とサブ武器の肉厚のダガーで沼の魔物を牽制し続けていた。


 現在の魔物の姿は、下半身が蛇になった姿と言う古き女神であるラミアの、男版兼グロテスク版といった風情だ。

 そして何を思ったか、あるいは元々そういう機能があったのか上半身状の首は根元のあたりで胴体を切り捨てた。

 トカゲなどの動物が行う自切と呼ばれる行動のようだが、だとしたら本体は胴ではなく首だったらしい。

 傷だらけの胴体は見る間に肉が崩れ始めた。

 それと同時に、胴体と言う檻から解き放たれた魔物の筋肉が膨れたかと思うと背中から腕が四本生え、六本腕となった。


 人間サイズからしたらなお十分な巨体が見せる、余計なものを捨てて圧縮した強さを見せつけるような素早く鋭い動き。



 六本腕の一本が、人体を容易にミンチに出来る勢いでそこに辿り着いていたガメオに対し振るわれ、・・・上腕の切断面を晒し宙を舞った。



 ガメオが今呼び出しているのは、セバーの剣技のみだ。

 今までであればそれだけでは、この凶悪なバケモノに抗し得るものではなかった。

 しかし今ガメオは、魔剣の力を降って湧いた借り物ではなく「自身の力」として受け入れるよう自らに言い聞かせていた。

 ただそれだけで、魔剣と自身の間にあった隙間や溝、見えない薄皮のようなものが消えて無くなったような感覚が手に入れられた。

 魔剣から降ろした技と自身が近付く事で、今まで意識できなかったレベルのロスやラグ、淀みが無くなりより高い精度で技を再現できるようになったのだ。


 魔剣が記憶した中で人間が使う剣技は全て、今の素のガメオよりも遥かに優れている。

 その技とオウガの頸も素手で捻転出来る膂力をもって、伝説的なドワーフの名工が命と意地を注いだ業物の魔剣を振るえばそう言う威力になるのだ。


 一方フロスギンの鉤爪とダガーは、魔物の腕の表皮に多少食い込んだだけで殆ど弾かれている状態だった。



「チィッ、やっぱ得物がコイツじゃだめだな!」



 しかし気を逸らせるには十分な攻撃だ。


 二対一での激しい攻防が始まった。

 押しているのはパワーと体格と、あと文字通りの手数で魔物側の方だった。

 しかし相対する二人の巧みな、時に未来予知のような防御に押し切れない。


 嵐のような五本腕の乱撃が僅かに止んだ間隙、不意打ちで尻尾の薙ぎ払いが飛んだ。

 ついさっきまでは首だったそれを尻尾と呼ぶべきかどうかはともかく、その重量感と速度は直撃して人の原形を留めていれば奇跡という水準だ。


 フロスギンは射程から素早く退避したが、尻尾が振り切られた後にガメオの姿はない。

 チャンカはガメオが吹き飛ばされてしまったと考えたが、それは誤りだった。

 振るわれた尻尾に魔剣を刺し、それに掴まる形で取り付いていたのだ。


 この程度の動きであれば魔剣で特定の魔物の幻影を呼び出して、というプロセスも経ずに直接技を呼び出せるようになっていた。



「ガオゴアアアアアアアアアアアア!!!!!!」



 気付いた魔物が咆え、振りほどこうと尻尾を波打たせた時点で既にガメオは踏み出して空中を跳んでいた。


 一息での三閃。


 シグナム、ヴギル、そして謎の剣士Xの剣技が連続で呼び出され魔物の残り五本の腕を切断、胴体も背中側から袈裟斬りにした。

 正面から見ると逆袈裟の形のそれは、致命傷ではあろうが切断には至らない。

 それを勢いのままに跳び越して前方の地上に着地したガメオに対し、最後の意地とばかりに鋭い牙の並ぶ咢が開いて襲い掛かった。


 その瞬間、魔物の頭部に雷光の一撃が直撃した。

 物陰から身を乗り出したゼタニスの構えた聖剣が、魔法を放った残滓を僅かに発光させていた。



「やっちまえええええええええ!」



 ゼタニスの作った僅かな隙に、ガメオは内観魔力を活性化させていた。

 漏れるような光は≪身体強化≫の発動した証。



 振り向いた動きと一体の魔剣の横薙ぎは魔物の胴を完全に断ち切り、腹から上を上空にくるくると撥ね上げた。



 暫く空中を舞い、どかっと落下した場所はチャンカとゼタニスのすぐ近くだった。

≪鬼人化≫が解けてその場に膝をついたフロスギンが、チャンカに向け声を掛けた。



「・・・止めを刺すんだ、チャンカ。我々は暫くまともに動けんようだ」


「あ、はい・・・!兄様」



 無理をして動いたゼタニスも、身体強化の反動は以前ほどではないにしろ受けているガメオも、この場で最大の火力を発揮したヴィリアンボゥもその場に倒れて動けない状態だった。

 魔物の頭部は息も絶え絶えながら、未だ得物を求めているかのように舌を出し、牙だらけの醜悪な顎を開閉させていた。


 チャンカの槍に魔力が籠り、穂先の鋭さが一時的に増した。


 構えから一息に突き下ろされたその先端は、魔物の頭蓋を貫いた。

 断末魔は無かった。



(討伐は成った・・・が、確かめなければならない事も出来た。しかし多少は休憩を入れないと・・・我々は動けそうもないな)



 チャンカの止めの一撃をその目で見て、フロスギンはうつ伏せに崩れ落ちた。

 決着を見届けた見張り番の戦士たちが駆けてくるのが、彼の閉じようとしている視界の端で見えていた。

よく考えると身体強化と鬼人化がカブってるのに今気付いた

ま、まあ・・・鬼人化もプライムオークじゃ秘術扱いなので・・・それにホビット以外と交流無い少数民族じゃあ漏れる可能性もないかなって・・・

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