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フェアリーブレイド ~旧き約定の剣と、新しき紲の剣~  作者: エキストリーム納豆
六. 精霊の道
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83. 対狂獣

 あたいが物心ついた時には、フロスギン兄様はまだ少年と言うぐらいの歳なのに里一番の戦士のはずのフォベルク父様(ととさま)に食い下がれるだけの強さがあった。

 辺境に追いやられ他の同胞がどうなっているかも分からないプライムオーク族だけど「≪闘争者≫たる役割の体現者はあ奴になるかもしれん」父様はよくそう言った物だ。

 そして兄様は長じるにつれ、父様が予想したとおりに偉大な戦士となって行った。

 ホビットの商人に護衛として請われるなどして顔を隠して外に行く事がよくあり、数えきれない武装した人間を食い殺したようなバケモノを兄様が一人で仕留めたというのも少なくない。


 あたいにはそんな才能はなかった。

 どれだけ槍を振るっても、同じ歳だった頃の兄様にも遠く及ばなかった。

 戦士の一族として悔しくはあったが、今はもういい。

 及びはしなくても、兄様を支えられるだけの強さと言う目標ができたから。



 ・・・なのに、あいつは現れた。



 あたいと同じく大した強さもないのに、兄様から背中を預けるに足る戦友のような対等に見える立場で接されていた。

 エンリが助かったのはあいつのお陰かもしれない。

 でもそれはあの妙なモリナシがすごいんであって、あいつの力なんかじゃない。


 あたいは、あのガメオって奴を認めない。

 でも兄様や客人達が認めているのは悔しいけど分かる。


 だから、自分の目で確かめてやることにしたんだ。





「・・・おいフロスギン、お前の妹メッチャガメオの事睨んでねえか?連れて行く奴にあいつ選んで大丈夫なのかよ、流石に戦場でまで面白がって観察する趣味はないぞ?」


「チャンカは妹ではなく姪だ。いずれは沼の魔物番の役割を負うかもしれないからな、やる気があるなら見せてやるのもいい。最も今回の魔物は例外だが。・・・あと面白がるとはどういうことだ?」


「・・・分からぬならこの際、それはそれで良いのである」



 何だか心外な誤解を受けている気がするけど、今はいい。

 この中で一番弱いあたいが勝手なことを言われるのは仕方ない。



「何でもいいから準備は出来たのか?出るんなら早い方がいいだろ」



 ・・・それよりも、あいつが仕切る感じになってる方が気に食わない。

 そう思っていると父様があたい達に声を掛けた。


「討伐が成るならそれでいいが、無理そうなら背中を見せて逃げる事も考えておけよ。・・・いや、若い者を先に見送り続けて歳を取った元戦士の戯言だ。忘れてくれていい」





 亜精霊である大猪スプーの速力は凄まじいものがあった。

 景色の代わり映えがしにくい荒野にあって遠景がぐんぐん流れ、ちょくちょくある魔物の襲撃の気配もあっという間にで引き離すほどだ。

 隊を組めば片道一週間かかる道のりが太陽が頂点に差し掛かるより遥か前に走破され、洞穴基地にいた見張り番達を驚かせた。

 プライムオーク族以外の種族に巨大な亜精霊、ピクシーまで居るのだしその反応も無理はない。

 あたいも驚いたし。


 それはそうと、兄様が見張り番のリーダーであるバコールにおかしなことを尋ねた。



「バコール、今回の我々以外にあの沼に近付いた同胞以外の者はいるか?」


「いえ・・・そんな輩、居たらすぐに我々がとっちめますよ」


「そうだな・・・いや済まない、妙な事を聞いた」



 スプーに乗って来た一行が、何故かあたいを除いて全員一瞬険しい表情になった。

 いやヴィリアンボゥ様の顔は兜で見えなかったけど、同調している感じはあった。



「兎に角、作戦は既に話し合った通りだ。持ち場に付くぞ」




~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~




 その魔物の姿は、先日撃破したものと比べてもより奇怪なものだった。

 あれ以上の巨体に触手が数え切れぬ程生えていることは当然として、首が三つに分かれておりうち一つが人型をした筋骨隆々の上半身に変化していたのだ。

 言うまでもなく全体の印象としてグロテスクと言う点では先の魔物と変わりはなく、困ったことにその点でも強化されていたのである。


 岩陰に潜むガメオ達は、ゾオレの魔法により気配ごと完璧に隠蔽されていた。

 見張り番達はもしもの事態に即応できるよう、沼からは離れた場所に待機させていた。

 最初の一手を務める手筈のゼタニスは、いつでも行ける様集中して体内の魔力を活性化させていた。



「・・・あと一分であれが来る。それが開始の合図だ」



 ゼタニスのトーンを抑えた言葉に、一同は頷いた。


 やがて遥か天空から強力な気配が飛来してきて、三つ首の魔物が反応するのとほぼ変わらないタイミングで全員が散った。

 中でもゼタニスは風魔法の連続発動を利用してほぼ真上に勢いよく飛翔し、自身の持つ最強の雷魔法を構築しながらそれを空中で手に納めた。

 王都の大聖堂より≪聖剣召喚≫で呼び出した、彼の為に(あつら)えられた聖剣と言う名の魔導兵器だ。


 自身の剣術を根本から練り直す行為は、ゼタニスの魔法の技術にも影響を与えた。

 修練の中で魔法を組み直し、同じリソースをより効率よく、より鋭く重くなって行ったそれは最早彼に取って手足の延長、もう一つの剣に等しい。

 そしてそれを今まで、雷の聖剣を通して使用した事は無かった。

 さらにこの地に到着後の休憩時間にガメオに振舞われた例のモリナシ―――巨大になり過ぎてもう一人一切れで十分食べ応えがあるレベルの―――により今までになく充実した魔力と研ぎ澄まされた感覚。

 どれだけの威力になるのか彼自身想像もつかない。



「≪雷光穿≫!」



 ゼタニスの眼前には思った以上に伸びる首から凶悪な顎が迫り、幾本もの触手や毒液の礫も飛んできていた。

 ―――それらを一撃で呑み込み灼き尽くす焼滅の閃光、爆発。


 嫌なにおいを伴う煙が激しく、その破壊の結果をまだ目視はできない。



「我ながら強烈だぜ・・・っと!」



 自由落下中の彼を目掛け、煙の中から新たな触手が飛んできた。

 しかし自身の最強魔法を使ったばかりの反動で全身が痺れ、ゼタニスは防ごうにも剣を上手く振れない。


 そのタイミングで踏んできた人影が槍を振るい、打ち払った。

 ゼタニスを安全に退避させる僅かな時間の護衛という役割がチャンカに与えられていたのだ。



「サンキュー、お嬢ちゃん!」


「これがあたいの役目、だからッ!」



 触手の一本一本はそれほど強くはない。

 だが未熟なチャンカにはたかだか十秒強それを凌ぐのにもそれまでに自身の限界を超える集中力が求められた。

 チャンカとゼタニスが物陰に入って息も絶え絶えになったあたりで、漸く煙が晴れた。


 魔物の首一つが丸々消滅し、胴体の一部までゴッソリ抉られていた。

 ゼタニスが≪雷光穿≫と名付けた必殺の魔法の威力が見て取れた。

 しかし。



「オイオイ・・・もう傷が塞がり始めてねえか?もう一遍生えてくるとかやめろよ・・・こっちは暫く動けそうもねえってのによ!」


「大丈夫だ!こいつの再生は戦いの最中に生え変わるとかそういう次元のシロモノじゃあ()()!」



 ガメオは攻撃準備に入ったヴィリアンボゥを襲う触手を魔剣で次から次に切り払いながら、ゼタニスの毒づきに返答した。

 腕輪の鎧は視覚聴覚を強化する機能があるが、特定の相手の声を拾いやすくするような器用な使い方も可能だ。



「それは良い!後先考えずにブッ放せるのであるからな!」



 機械的なデザインのヴィリアンボゥのハンマーが、ただデザインのみならず実際に機械であることを示すようにガシャガシャと複雑に変形、内部に収納されていた何か大きなものを展開させていた。



「1、2、3で撃つ!ガメオもフロスギンも上手く退避するのである!」



 自分の前で剣を振るガメオ、そして跳び回って魔物を翻弄しているフロスギンに聞こえるびりびりとした大きな声でヴィリアンボゥが叫んだ。

 既に彼女の肉体で活性化した魔力は、見る者が見れば「砲身」であると分かるそれにも十分に巡っていた。



「い-ち、にい~~い、ッ・・・ッッさああああああああああん!」



 激しい衝撃を伴い、赤い球を中心として形成された虹色の光弾が飛翔した。

 怪物に直撃して轟音と共に炸裂したのは爆発、と言うより黒い大きな球体だった。

 ガメオは横っ飛びしながら、深緑の谷の奥で見た空間魔法の塊に似ていると少し思い出していた。


 魔物の巨体の一部を巻き込むまでに膨れた黒球は、ある程度のサイズで急に止まり、一瞬震えた後見る間に縮み始めた。

 ・・・沼の魔物の肉体を巻き込んだまま。


 文字に書き起こすのも不可能な奇怪な鳴き声を大音声で上げ抵抗するもその肉体は黒球の中心一点を目掛けて引っ張られ続け、最後には噛み千切られたようにえげつなく削り取られた。

 残る首は中心にあった人型の上半身風のみだが、この姿ではそれが首に当たるかどうかは微妙なところだ。



「これが吾輩の≪大喰らい≫である!」



 砲身として展開していたパーツの中で最も白熱していた部分が外れてその場にごとりと落ち、そのまま融解した。

 この使い方をすると本来使い捨てでない部分が使い捨てになる文字通りの切り札と言う事であり、またヴィリアンボゥ自身も鎧の各所から煙を上げて膝をついた。



「最後は私だ!ではいくぞ≪鬼人化≫!」



 フロスギンの肉体に力が満ちて筋が浮き、表情は険しく、角は鋭く、ついでに髪は若干光を放ち逆立った。



「毒ガスの前には背中の隙間が一斉に開く、気を付けろ!」


「分かったぜガメオ!うおおおおおおお!」



 高揚感も加わるようで口調まで変わっていた。

 それまでの動きよりも一層速度を増したフロスギンはある程度の離れた距離から見てもなお目視困難なレベルに達しており、銀の軌跡を残すたびに魔物の巨体に深い傷が刻まれて行った。

 鱗状になっている魔物の背中が一瞬、逆立つように僅かに立ち上がった。

 見るだけで気分が悪くなりそうなガスが音と共に盛大に噴き出す頃には、フロスギンは余裕をもって一度地上に降りていた。

 この毒ガスは魔力で強引に作り出しているらしく、瞬間的な殺傷力は高いものの十秒経たずに影響が無視できるレベルまで無毒化されてしまう。


 それまでの間接近しての攻撃は不可能だが、体力を消耗するのか魔物側も動けない。

 毒煙が晴れ、フロスギンは再び雄叫びと共に弾丸の如く飛び出し、速度が最高に乗ったところで愛用の鋭い斧を空ごと切り裂くかのような勢いで叩きつけた。


 ───その瞬間、魔物の表皮に弾かれた斧頭が柄から外れて飛んでいった。



「!?チィッ、斧が毒を被っちまってたか・・・いや、違うコイツは!・・・クソッ今はやるしかねえ!ガメオ、予定変更だ!また止めは譲ってやる!」


「吾輩は気にするな!奴には最早こちらを攻撃する余裕はない!」



 ガメオは頷くと、今まで防御のために呼び出していたイプロディカの眼とランツェの技を解いた。

 次いで呼び出す技を何にするかは、もう決めていた。


 魔剣を車に構えながら、少年は駆け出した。

そういえば弓をメインにしてるキャラ作ってない事に気が付いた

まああとでエルフ出せば嫌でもでてくるやろ(未来に丸投げ)

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