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フェアリーブレイド ~旧き約定の剣と、新しき紲の剣~  作者: エキストリーム納豆
六. 精霊の道
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74. 聖女の依頼

毎日投稿できる人の速度をパクりたい(無理)

 タウルキアスは憎きアルテアへの屈辱的な敗北に怒り狂い、荒れた。

 ・・・だがそれも、丸一日と持たなかった。

 アルテアに対するその戦いぶり、そして使った戦術などが思った以上に評価されたのか、会う者会う者が口々に褒め称えて来たからだ。

 人は、おだてられ続ければ例え言葉に心が籠っていなくとも機嫌は良くなる。

 それが真心からの評価であるなら猶更だ。


 斬新な戦術、騎士団の個々の能力と練度、タウルキアスの操兵術。

 ()()()()銅勇者50人と金勇者一人に相当する戦力で、かの勇者アルテアがただでさえ強いのが何やら更に新たなる力を得たのを相手に僅かなりとも苦戦させるのは、並大抵の事ではないのだ。

 どんな手を使ったのか床に臥せる前よりも強化しているアルテアは、最早聖剣がなくとも以前と同じ飛竜と戦ったとしても後れを取る事は無い。

 そして彼の飛竜はゼタニスの見立てでは金勇者五人に匹敵、と言う事は銅勇者であるなら百人が必要になる戦力だ。


 そんなこんなでタウルキアスは気分が良くなったところから段々と落ち着いて行き、やがて冷静に気付けるようになった。

 アルテア自身を賞揚する言葉と言うのを殆ど聞かない事に。



 勝って当然。

 強化して当然。

 人智を越えて当然。

 栄光を背負って当然。



 故に、その手で為された成果に対し極めて優れたものとして頼られ、驚かれ、参考にされる事はあっても()()()()()事はほぼない。

 誉れこそを貴族、騎士としての最大のモチベーションとしているタウルキアスにとっては、想像するだけで地獄である。

 聖剣の勇者と言うのも簡単な生き方ではないかもしれない、そう思うとアルテアに向ける視線が今までと変わっているのが自覚された。




~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~




「・・・今までの無礼、そしてゼタニス殿を侮辱した事、本当に済まなかった」


「いえ、私の事は良いのですがゼタニスへの謝罪は確かに受け取りました。本人に届ける手段が無いのが残念でなりませんが」



(やはり自分自身の名誉への頓着がいやに薄い)、それが王城で再び偶々会ったアルテアに謝罪したタウルキアスが改めて見た印象だった。

 確かに幼くして勇者の才覚を見せた彼ならば名誉など、その概念を認識した瞬間には腐るほどあってむしろ処分に困っているようなものなのかも知れない。

 一方人のそれが不当に貶められるのには決して鈍感ではないと言うのに。



「ああ言えば必ずアルテア殿は挑戦を受けると聞いていたのでな。勝てる可能性がある唯一のタイミングで挑まずにはいられなかったのだ。重ね重ね、申し訳ない」


「・・・()()()()()?それは誰からですか?」



 ゼタニスの評判は聖剣の勇者の座さえも下ろされるレベルで散々であるが、アルテアにとっては師であり、命の恩人であると言う極めて重い意味を持つ名前だ。

 だがアルテアの名誉を守る方向の謎の力学が働いた結果なのか、アルテア自身にさえもそれに関する沈黙を王命にて命じられていた。

 故に事実を知る者は極めて少ないはずだった。



「・・・そう言えば、誰だったかな?確かに人から聞いた話のはずなのだが・・・済まない、どうにもよく思い出せぬ」



 本気で頭を捻っていたタウルキアスの様子に、アルテアは「済みません、妙な事を聞いて」とそれを制した。

 王城の回廊であまり長い立ち話は出来ない。

 だが、タウルキアスにとっては深刻な問題であった。

 アルテアからの挑発返しで結果的に聖角魔法騎士団として挑む形にはなったが、元々は一対一で戦うつもりだったのだ。

 


 アルテアを仕留め得る取っておきの切り札は、一人でしか使えないからだ。



 なぜ「仕留める」などと言う発想が出たのか自身でも意味が分からなすぎる。

 今後のライフプランの中で最上なのはアルテアを実戦形式の訓練で一度下し、そのアルテアが後に魔王撃破と言う形なのであり、如何に面白くない相手とは言え命を奪うなどあり得ない。

 何故だ?

 確か、誰かに会ってからそんな考えに頭が支配され始めたような・・・。



「タウルキアス様、もう行きませんと」


「あ・・・ああ」



 側近の言葉で思考が現世に戻ってきたタウルキアスは、アルテアの背中を見送った。






「・・・・・・やれやれ、流石金勇者クラスだと効き目がいまいちですね。あの側近も思ったより目端が効いて厄介そうです。彼との仲もこれまでみたいですね」



 その様子を遠くから窺い、不穏な言葉を丁寧な口調で口走る人影には気付かずに。




~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~




「お招きに預かりました、アルテアです」


「フフ、そんなに肩に力を入れなくてもいいのですよ。呼び付けたのは私の方なのですから」



 神の力と精霊の満ちる世界に、数少ない人。

 それが聖女アーフィナにとっての世界だ。

 今日はアーフィナ自身が招いた客人のために、一帯の魔力が強く輝いている。


 なおアーフィナは、アルテア本人さえも(あずか)り知らぬ聖勇者の真実について知る数少ない一人であった。

 何より誰あろう、聖勇者の母がベルターナとなるという予言を最初に得た一人なのだ。



「それで、本日はどのようなお話なのでしょうか?」


「そうね・・・まずは、別に貴方の()()()()()を問い質したいわけじゃないのは安心して」


「は・・・はは・・・」



 療養の間にこっそり冒険者活動していたなどとバレたら流石に大事であるが、それは特に問題ないという認識をアーフィナは暗に示した。

 彼女は聖域から出る事は無いが、街道結界を通じて実に多くの事を識る事が出来るのだろうとアルテアは察した。


 屋敷の奥かの部屋から、控えていた女性神官戦士がトレーに乗せた封書を運んできた。



「本題を言いますね・・・貴方に直接頼みたい事があるのです」


「私に、ですか?」


「第二の魔族が現れると言う予言を得ました。場所は神聖王国の南端、私の故郷のあった地域です」


「魔族・・・!」



 魔族と言う言葉を聖女の口から聞き、アルテアの身には一瞬で闘気が満ちた。

 結局自分の手では倒せなかったイプロディカとの戦いで燻ぶっていた火種が、一瞬で爆発的に燃え上がったのだ。



「・・・それを倒せるとすれば、確かに聖剣の勇者である私でしょう。ですが同じく聖剣の勇者であるイオンズではなく私であるのに、何か理由はあるのですか?」


「彼は、いざと言う時に人を率いる能力がありますからね。防衛のために残るならば自分だろうと、本人から申し出があったのです」



 そう言えばイオンズは定期的にこの聖女アーフィナの聖域を訪ねるんだった、とアルテアは思い出した。

 この上品な屋敷に似つかわしくないごつごつした機械のメンテナンスを兼ねて聖女の話し相手になっているようなのだ。

 この妙な機械のお陰で聖女の街道結界が安定して強化され魔族との戦いでの犠牲も最小限で済んだのだから、アルテアにとっても脚を向けては眠れない。



「それと、この封書を持って行ってください」


「これは・・・?宛先もないようですが」


「誰か、ではなく未来の貴方宛の文書が入っています。時が来るまでは決して開く事も破る事も、また捨てる事出来ませんが、その時が来たなら自ら開きます」



 この聖女の聖域と言う、恐らくは人間界では王城にさえもない世界一安全な密室でも語れぬ内容とはどういう事なのだろうか。

 訝しみはしたが、アルテアはその封書を受け取り懐に入れた。

 あると分かっている魔族との戦いに備える事はいくらでもあるのだ。




 アルテアの去った後、アーフィナは一人思っていた。



(やはり・・・似ている)



 アーフィナの瑠璃色をした両の瞳は、肉体的な視力は全くない。

 しかし勇者の眼にも劣らぬ魔眼であり、大気中や大地の精霊や神の力、魔力、魂の姿までも克明に映し出されていた。

 そんな彼女の瞳から見て、アルテアはある人物と余りにも似すぎていた。

 赤の他人と言うには無理があり、同一人物と言うには少し違和感がある程度という近似度合いと言うのを、彼女は他に例を知らない。


 聖女の眼は、人には見えない多くの事が分かる。

 しかし彼女自身も含めて全知全能からは程遠く、分からないことは決して分からない。


 そして、これが何なのかを示す予言と言うのも未だ降りては来ていない。



「いずれにしろ・・・私が直接この≪破滅の予言≫に抗えるのはここまでですね。後は彼が為すべき事を為すのを静かに待つしかないようです」

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