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フェアリーブレイド ~旧き約定の剣と、新しき紲の剣~  作者: エキストリーム納豆
五. 魔族イプロディカ
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54. 妖精郷異変

 うっかりボイロ実況作ってて遅れました。

『―――ここは、妖精郷!?そんな!』



 精霊の光が収まると、ザアレは自分が妖精郷の女王の居城にいる事に気付いた。

 横に目を遣ると、フェアリー族としての正体を隠した旅姿の者が数人おり、物見として外に出ていた者達である事が窺えた。

 皆一様に突然の事に混乱や困惑している様子だ。


 ザアレ達≪フェアリー・コール≫で呼び出された者達の前には、中心には玉座に座る王女メニャーン、脇には数人の家来が固めていた。



『突然の呼び出しに驚いている事でしょう、愛しい子たち。この通り赦して下さい』


『そんな!女王様の呼び出しとあればいつでも馳せ参じます。しかし中ツ国に溶け込んで生きる任務の我々まで全員召喚するとはどういう事なのか、説明は頂きたいところです』



 物見の一人は戦士化したフェアリーで、彼は今の妖精郷で一体何が起こっているのか説明を求めた。

 女王メニャーンが何か言おうとするが、それを制し一人が前に出た。

 フェアリー族の中では例外的に大きな体躯の男、戦士長ヴギルだ。



『良く聞いてほしい。場合によっては、だが―――このまま中ツ国との間の径を閉ざす可能性があり、その前に全員呼び戻す必要があった』



 ホール内に戦慄が走った。


 最も衝撃を受けたザアレは全ての色や音が遠くなっていき、自分自身でも気づかぬままにその場にへたり込んでいた。



『そんな―――ガメオっ―――!』




~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~




 妖精郷の外れの一角には、花に覆われた眺めのいい丘がある。

 そこには現在、異様な光景が広がっていた。

 鬼族や動物型にアンデッド、分類不能な魔法生物類まで種類も強さも様々な魔物たちが犇めいていたのだ。

 ただし、妖精郷に迷い込んでしまった者特有の、それぞれに正気を失って呆けた状態なので手出しをしなければ危険はない。



『―――ザアレの様子は?』


『塞ぎこんでますよ。当たり前じゃねーッスか可愛そうに』



 ヴギルに問われランツェは答えた。

 ある意味仕方ない状況とは言え、無理矢理ガメオと引き離されてしまったのだ。

 なおランツェは当たり前と言っているが、基本的に移り気で気まぐれなフェアリー族がここまで特定の一人に拘って心を寄せる事自体があまり当たり前ではない。


 ヴギルは『そうか』と静かに返すしかなかったが、とにかくこの眼前の異状だ。

 (うろ)に至る小径のゴブリンどものように妖精郷生まれで無い限り、妖精郷に無理に進入して来た者は必ずああいう状態になる。

 この魔物たちが暴れたりどうにかなる可能性は低いが、それ以前に彼らが何の前触れもなくここに現れてしまった事自体が問題なのだ。


 突然発生した強大なエネルギーは女王のみならず、妖精郷のフェアリーたち全員が察知できるほどだった。

 そこに急行した戦士達が見つけたのがこの状況で、現在は見張りを交代で立てている状態だ。


 原因は全くの不明で魔法的な事故の可能性もあるが、兎に角定められた径を通る以外の方法で妖精郷にこんな大量の魔物が侵入を果たした。

 しかし仮に何かの偶然であろうと発生してしまったと言う事は、人為的に起こせる可能性もあると言う事でもある。



 世界樹の力を借り妖精郷の位相を現在よりもさらに中ツ国からずらす、という女王メニャーンの考えは至極当然のものと言えた。



 現状よりも位相をずらしたなら空間転移に必要なエネルギーは跳ね上がり、事故でも任意でも妖精郷に空間を飛び越えて現れるのは現状よりもさらに困難となる。

 しかしそれをすれば森の小径と花の門を通っての移動もまた出来なくなる。

 行き来可能なのが、最近になって強くゲートを結び直したエルフの里ぐらいしかなくなるのだ。


 現在の魔王復活を控えた中ツ国、そして妖精族―――中でもフェアリー族にとってはこの世で最も忌まわしい【それ】と距離を置くと言うのは、必ずしも間違いではない。

 妖精郷のほとんどは深い森だが、広さそのものは中ツ国と遜色ない広大さがある。

 それを同胞たちと共に護るのもまた、やらねばならぬ事なのだ。



『――ん?戦士長、魔物の中の――でかい猪、ですかね?動いてませんか?』


『―――ッ!総員構え!』



 それまで魔物の中に混じっていて動かなかったグレートボアあたりの強化体と思しき魔物が、不意に立ち上がって動き出した。

 ヴギルの号令に従い隊列を組んで武器を構えた妖精戦士達に向かってのそのそと、その巨体を歩ませていた。



『―――瘴気が、ない―――魔物ではないと言うのか?それに狂気に囚われた様子も見えぬ―――しかし魔物ではないのなら、何故―――以前(うろ)に現れたあの竜と()()()()を感じるのだ!?』



 丘の様な巨体はゆっくりとではあるが歩み続け、ブギルの前で足を止めた。

 巨大な猪は姿勢を宿した目でヴギルを見詰め、次の瞬間驚くべき事が起こった。



≪―――以前嗅いだのと似た匂いがする。話の通じそうな相手を待っていた甲斐があったか≫


『まさか―――思念で喋っているのか?』


≪話せるほどの力を得られたのはここがそういう場所だからだろうな。精霊の力が我の知る何処よりも強く満ちているのを感じる≫


『――!戦士長、コイツもしかして≪亜精霊≫じゃあ?』



 亜精霊。

 精霊の強い場所に生きる動植物が影響を受ける事により、妖精や精霊そのものに極めて近い存在になる事がある。

 また瘴気をその生命と不可分なレベルで身に宿した魔物が、瘴気が全て精霊に置換される事で変化する場合もあると言う。



≪我を分類する言葉があるのなら、きっと我はそれに当たるのだろうな。元は魔物に生まれた身だが、精霊の力の溢れる泉の水を永らく飲んでいたら気付けばこうなっていた≫


『では聞きたいが、お前は―――フム、何と呼んだらいい?』


≪名は無いが、以前出会った者の一人は化け猪(スプーボア)と呼んでいた。そこの大きい妖精と似た雰囲気を持つ娘だ≫



 つまりこいつが少し前にザアレが言っていた謎の大きな猪か、とヴギルは知識を整理した。



『では化け猪よ、この状況はお前がやったのか?』


「ソコカラ・先・ハ・私・ガ・話ソウ」



 急にどこからか妙に間延びした、甲高くて気の抜けるような声がした。

 この異常な事態にそぐうようなそうでないような不思議な声の主は化け猪の頭の上、体毛の中に隠れていたピンクで弾力のあるスライムだった。

 流石に突然の事に面食らった妖精戦士達を差し置き、落書きにしか見えない顔の口の部分を動かしてそのスライムは続けた。



「私・ハ・下ノ・猪ガ拾ッタ・卵・ヨリ生マレタ。アタタカナ・泉・ノ・水ニ浸ケテ・孵シタラ・生マレタ・ノガ・私ダッタ。ソノタメ・カ・私・ハ・生マレル前・ヨリ・コノ地ノコト・ヲ・知ッテイタ」



 ヴギルをはじめ、何人かの妖精戦士は重ねて驚愕させられていた。

 かつて妖精郷に侵入した幼竜に似た気配は、化け猪ではなく実際はこのスライムが放っていたものだったからだ。

 竜は卵より産まれるものだ。

 あの幼竜と同じ親より産まれた卵が、孵化する前に精霊の泉に浸かりこうなった、という事なのだろうか。



「彼等ハ・皆・狂イカケ・テ・イタ。理由・ハ・ワカラナイ・ガ・一所(ヒトトコロ)ニ・固マリ・イマニモ・災厄ヲ・撒キ散ラサン・ト・スル・トコロダッタ。ソコデ・急ニ・流レテ来タ・強イ魔力・ヲ・使イ・コノ場ヘト・転移サセタ。済マナイ、迷惑・ヲ・カケタ」



 このスライムが妖精郷の場所やその性質を生まれた時には知っていた、と言うのは妖精と関わる人族にも稀に同様の事が起こる現象なのでまあ問題はない。

 実際に眼前の魔物たちは目論見通り完全に無力化し、このまま精霊に還るか、また亜精霊に変化する可能性もある。

 大規模な転移を可能とする魔法を最初から使えた事も、まあそう言うものと納得は出来なくもない。

 だがこれだけ種々の多数の魔物、それも存在するだけで災害に匹敵する単眼巨人(サイクロプス)やキマイラまで混じっているのが集団で固まり狂いかけていた、と言うのはどういう事なのか?

 そして大規模転移を可能にさえする魔力が急に流れ込んできた、とは?



≪上手くは説明できぬ。我らに出来るのは、実際にあった事を可能な限り言葉に直す事のみだからな≫



 取り敢えず今ここでの問題はない、そこでヴギルは一つ考えた。



『―――ふむ、危険が無いのは確認した。ところで、うちの娘と会った事があるようだな?着いてきてはもらえないか』



 ピアルザら戦士たちが戦士長ヴギルの突然の提案に困惑を見せたが、ランツェだけは反対する姿勢を見せなかった。



≪よかろう。どこに行けばよい?≫

 説明セリフが多くなると文字数が膨れあがるなあ・・・。

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